十七、怪しい動き
劉家には珍しい人物が訪れていた。
「お久しぶりです、旦那様。なかなか顔を見せに来れず、申し訳ありません」
「久しぶりだな。白狼、白竜。お互いに年取ったな」
三人は久しぶりの再会に喜んでいた。
雪華の誘拐事件以降、静宜、白狼、白竜の三人は劉家を出た。
本来ならば将軍の娘の誘拐に関与した静宜には重い罰が待ち受けていたが、家豪の取り計らいにより待逃れた。しかし、何も罰せられない訳にもいかず、白狼と白竜は母の罪を共に受けることを決意し、静宜と共に北の戦地へ赴くことになった。
三人は応接間で昔話に花を咲かせていた。
「静宜は元気か?」
「はい、ただ最近は・・・その・・・」
歯切れの悪い言い方に、
「何か良くない事でも起こったのか」
白狼と白竜は顔を見合って頷き、
「実は最近、北で続いてた争いが急に落ち着いてきたのです。おかしいと思い私たち二人で調べていたのですが、私たちは聞いてしまったのです。とんでもない事実を。それを旦那様に伝えるためにもこちらへ参りました」
白狼と白竜はその時の出来事を話しはじめた。
白狼と白竜は羅の国と黎の国の境の町で警備兵として過ごしていた。
この町はあちこちで暴動が起きており、それを止める役割を担っていた。
暴動の原因は主に物流問題で、物の流通が滞り、それにより物の値段が高騰することで起こっていた。
しかし、そのたびにこの町に派遣されている、第一皇子の趙俊智が暴動を抑えてきた。
町の民からは俊智は崇拝に近いほど崇められていた。
白狼と白竜は不審に思い何か裏があると思い調べていた。
白狼と白竜は不審な動きをする男を見つけ、後をつけていた。
その男は薄暗い地下に入っていき、たどり着いた先には、俊智と全身黒を身にまとっている者たちがいた。
「殿下、このぐらいで十分かと。民は殿下を崇めています。華姫様が後宮に戻るようにと。例の娘が見つかったそうです。その者を娶れば華姫様は、再び日の光を浴びることができます。殿下もこの国全てを手に入れることができます。しかし、その娘は四殿下の許嫁になっています。私たちが援護しますので、殿下は指示通りに行動していただければよいかと」
俊智は声に出さずに笑いはじめ、堪え切れず、声が響き渡るほど大笑いした。
「やっとこの時が来た。私は待っていた。十五年前、娘がいなくなった時はどうしようかと思っていたよ。母上に役立たずの者は全員殺してもらったし。まさか十歳の私が・・・ね。何のため女にも手を出さずにここまでやってきたと。月亮から奪い取るよ。よし、後宮に戻る。睦、父上に文を送っておけ」
白竜はあることに気付いた。全身黒を身にまとっている者たちの左手首には黒薔薇の入れ墨が見えていた。
(黒薔薇の入れ墨・・・母上が言っていた者か)
白狼と白竜は気付かれないように、地下から出た。
「これは旦那様に報告せねば。雪華お嬢様が危ない。竜、劉家に行くぞ」
白竜は白狼を一旦引き留めて、
「母上に確認したいことがあります。兄上、先に母上のところに」
二人は静宜のところへ走り出した。
静宜に黒薔薇の入れ墨について確認したら、やはりそうだった。
「狼、竜、気をつけなさい。旦那様にも伝えて。あの者たちの動きは人じゃないわ。油断したら終わりよ」
静宜は過去の過ちを思い出したのか、その目には涙が流れていた。
「母上ありがとう。雪華お嬢様をあいつに渡したりはしない。旦那様のところへ行ってくるよ」
静宜は二人の手を握りながら、
「必ず今度は助けなさい。雪華お嬢様を守りなさい」
白狼と白竜は、必ずと言って静宜の元を去った。
(狼、竜。必ず守るのよ。高瑾様のようにはことには絶対・・・。あなたたちも無事に戻ってきて)
静宜は両手を合わせ、祈っていた。




