四、言伝
林晨、徐媛、勇敢は一言も話さず重い空気が漂っていた。
徐媛が深く息を吐いてついに話しはじめた。
「勇敢は私たちが小蘭の本当の親でないことはなんとなくわかっていたでしょ?」
勇敢は無言で頷いた。
「小蘭はね・・・本当の親の元に帰ったの。実はね、小蘭の本当の名は劉雪華といってね。この国の将軍の娘だったの」
「将軍の娘?」
想像を上回る事実に勇敢はただただ驚くしかなかった。
「本当に小蘭の親だったのか?証拠か何かあったのか?」
徐媛は目をつむり何かを思い出しているようだった。何を思い出したのだろうか。その目には一筋の涙が流れていた。
「小蘭の母親ね。小蘭と同じ顔で、同じ瞳の色で・・・同じ白髪だったの。一目で小蘭の母親だとわかったわ。最初に将軍の娘だと聞いた時、何かの間違いであってほしいと思ったわ。でも、本当だったの。」
徐媛は小蘭のことを思い出し、上を見上げ、涙をこらえようとしていた。
「勇敢、安心しろ。本当の家族と会ったけど、親も兄弟たちも小蘭を大事にしていた。小蘭も本当の家族に会えてうれしそうだった。もうこの町に帰ってくることはないが・・・」
林晨がそう言った時、勇敢の表情がみるみる恐ろしくなっていった。
「この町に帰らない?俺に何も言わずに?何で・・・」
勇敢は絶望していた。
「勇敢、小蘭から勇敢に言伝があるの」
「言伝?」
徐媛は劉家を出発する前の日の夜、雪華が託した勇敢への思いをそのまま伝えた。
「母上、伝えてほしいことがあるの。勇敢に伝えてほしいことがあるの」
徐媛は雪華の手を握って、笑顔で頷いた。
「勇敢には感謝している。不愛想で友人もできない私をいつも気にかけてくれた。勇敢との日々は忘れない。今だから言えるけど、十八になったら嫁ぐって話、私はそれでもいいと思っていた。勇敢への気持ちがなんなのかはわからないけど、勇敢ならいいかなと思ってた。でもこれからは、将軍の娘として生きていくことになるの。勇敢とは一緒にいれなくなる。勇敢には幸せになってほしい。一緒に野菜を育ててくれるお嫁さんを見つけてね。今まで一緒にいてくれて、いつも手をつないでくれて、秘密を守ってくれて、本当にありがとう」
勇敢は小蘭の名前を呼びながら両手で床を叩き、泣きわめいていた。
林晨と徐媛は見ているだけで辛かった。
「何があっても小蘭を守るって決めたんだ。ずっとそばにいるって心に誓ったんだ」
勇敢は何かを決意したように立ち上がり、小蘭のところまで何日かかると聞いてきた。
徐媛が馬車で二日と答えるとわかったと言って生気を吸い取られたかのようにふらふらしながら帰って行った。
勇敢は跡継ぎの長男である。男は勇敢と四歳の弟の二人であとは三人の妹たちである。
勇敢の両親は勇敢がすぐに跡を継げるよう全てを教えていた。あとは時間の問題だった。
「勇敢、大丈夫かしら・・・まさか・・・ね」
徐媛は嫌な予感がした。その嫌な予感が的中することとなる。




