一、雪華、劉家への帰還
劉翰、雪華、林晨、徐媛は劉家の屋敷の門の前に着いた。
門の前には二人の護衛が槍を持って立っていた。
外から見てもとんでもない広さであることがわかる。
あまりのすごさに林晨と徐媛はあっけにとられていた。
「父上と母上が首を長くして待ってますよ。さぁ、入りましょう」
門をくぐると中では何人もの護衛や侍女たちが行き来していた。
初めて見る光景に三人は場違いなところにいるような感覚だった。
案内された部屋は林家の家の半分の広さもあった。町の中では林家は比較的広い方だったが比べ物にならなかった。
部屋の中には数人が椅子に座っていた。
雪華が部屋に入った瞬間、椅子に座っていた者たちは皆驚愕した。
赤子の時にさらわれた娘が、十五年の時を経て、美しい少女へと成長していた。
雪華を見るなり、一人の男が泣きながら抱きついてきた。
「雪華・・・雪華、よかった、無事でよかった・・・」
男は顔をよく見せてくれと言って、雪華の両頬に手を触れ、顔を近づけ、泣いているのか笑っているのかわからないような顔をしながら、琳琅にそっくりだともう一度抱きしめた。
「あなた、雪華が苦しそうよ」
そう言った女の人の顔は雪華と同じ顔、同じ瞳、同じ白髪であった。雪華は二十年後の自分を見ているようだった。一目で母であることがわかった。
雪華はやっと男の腕から解放された。
それを見ていた林晨は男に申し訳なかったと深々と頭を下げた。本当の家族と再会した雪華の様子を見て複雑な思いでいた。
「雪華が生きててくれた。それだけで十分です。大切に育ててくれたそうですね。あなた方には感謝してます」
男はそう言って、林晨の左肩を軽く叩いた。
林晨と徐媛は皇帝への謁見で疲れ切っていた。劉翰は二人に部屋で休むように促し、侍女に案内させた。
「おかえり、雪華。いきなり抱きしめてびっくりしただろう。すまない。私は劉家豪。お前の父だ」
家豪は再び雪華を抱きしめた。
「雪華。私は琳琅。あなたの母よ。あなたがこんなにも私にそっくりになっているとは。本当にびっくりしたわ。ずっと・・・ずっとこの日を待っていたわ」
次は琳琅が雪華を抱きしめた。家豪より優しく、雪華は心地よく感じていた。
「雪華。私は長兄の毅だ。こっちは私の妻の逸美だ。ずっとこの日を待ってた。本当に・・・本当に・・・」
毅は目を抑えながら泣いていた。隣で微笑みながら逸美が慰めていた。
「改めまして。私は次兄の翰です」
では私も、と言って抱きつこうとしていたが雪華はなぜか翰の頭を手で押さえて抵抗した。
毅は笑いながら、
「雪華、覚悟してたがいいぞ。翰は雪華が生まれた時からずっと溺愛していたからな」
「兄上、何を言っているのですか。兄は妹を可愛がるものです。雪華は特別美しく、かつ、可愛いのですよ」
毅は呆れた顔をしながら、そんなんだから、誰も嫁に来ないんだよと翰には聞こえない声でつぶやいていた。
雪華は翰の妹への異常な溺愛に今後も振り回されるのであった。
(あれ?翰兄様は確かもう一人兄上がいると言っていたような)
皆がそれぞれ雪華との再会を喜んでいた時、父上と叫びながら走ってくる音が聞こえてきた。
「父上、雪華が帰ってきたって本当ですか!」
そこには十三、四に見える少年が息を切らしていた。背の高さは雪華と変わらないくらいで声変わりのしてない子供のような声だった。
(えっ?もしかして私には弟もいたのか?)
「兄上、私には弟もいたのでしょうか?」
毅と翰は顔を見合わせ大声を出して笑い出した。
「僕は劉忠、君の兄、兄上!毅兄も翰兄もひどいよ」
しばらくの間、毅と翰は笑い続けていた。




