二十三、華へとつながる者たちの死
家豪は合流した何恩と共に宴の場に戻ってきていた。
軍部の者たちはすでに出来上がっており、家豪を見るなり、また戻ってきてくれたのですかと言って、絡んでくるのであった。何恩が何とかおさえて、家豪は陸宰相にたどり着いた。
陸宰相、と家豪が声をかけると、陸宰相は、あの不敵な笑みで家豪を見上げた。
「劉将軍、そんなに慌てて何かあったのですか」
陸宰相は明らかに何か知ってそうな顔をしていた。
「陸宰相、実は私の屋敷に盗人が入りましてね。大事なものが盗まれました。犯人の一人を捕らえたのですが、その者が陸振に指示されたと申しておりまして」
家豪は屈んで、陸宰相に顔を近づけて
「陸振はあなたの血縁ですよね。家が潰された陸振にとって頼れるのあなただけです」
そして家豪は怒りがこもった低い声色で
「雪華をなぜさらった」
それを聞いた陸宰相は大笑いしたと思ったら、急に目つきが変わり
「私には何のことだか、存じ上げません」
家豪がさらに問い詰めようとした時だった。
一本の矢が陸宰相を目がけて飛んできた。その矢は陸宰相の心臓を貫き、口から血を吐き出した。
家豪は矢が飛んできた方向を見たが、あまりにも暗すぎたため何も見つけることができなかった。
衝撃的な出来事を前にお酒を飲んでいた軍部の者たちも一気に酔いが醒めた。
「何恩、周りに待機させている軍部の者を何人か引き連れて、矢の飛んできた方向を捜索しろ。残りの者たちはこの近辺に不審な者がいないか確認しろと伝えろ」
何恩は御意と言って走って行った。
家豪は陸宰相を見ると何か話そうとして口を必死に動かしていた。
「陸宰相、あなたは誰の指示で動いているのですか。なぜ雪華をさらったのですか」
陸宰相は最後の力を振り絞るかのように言葉を発した。
「あの・・・女は・・・白・・・この国を・・・」
そう言い残して陸宰相は事切れた。
家豪は何度も陸宰相の名を呼び続けたが再び息を吹き返すことはなかった。
「くそっ!」
家豪は悔しそうな表情をしながら、陸宰相が最後に残した言葉の意味を考えていた。
(あの女?やはり生きているのか。白とは何だ?雪華と何の関係があるのだ)
近辺に不審な者がいないか警戒していた軍部の一人がやってきた。
「劉将軍、この近くで男の死体を発見しました」
「何?」
家豪は近くにいた軍部の者に陸宰相を任せ、男の死体の元へと急いだ。
死体となった男は首元を斬り裂かれ、周りには血の海ができていた。
(血が乾ききっていない。殺されてあまり時間が経ってないな)
家豪は死体となっている男の顔を確認したが見覚えがなかった。
(どことなく陸宰相に似ている。もしや・・・)
家豪は男の死体を劉家に運ぶよう指示した。
その頃白狼たちは逃げた二人の男を捕らえていた。しかし、長身の男の背中にはあるはずのものがなかった。
白狼は男たちを問い詰めるが何も知らないの一点張りで何も聞き出すことができなかった。身長が低く、鈍足男は腹立たしい態度をとっていたが、長身男の方は、下を向いて険しい表情をしたまま、何も語らなかった。
その時遠くから兄上と叫ぶ声が聞こえた。ようやく白竜が合流した。
白竜は雪華の誘拐事件について白狼に話した。
白狼は二人の男をにらみつけ、雪華お嬢様はどうしたと声を荒げた。
白竜は同じように二人の男をにらみつけた。
(あれ?この長身の男どこかで見たことあるぞ)
白竜の視線を感じた長身男は白竜に向かって、何も言うなと言っているかのように首を横に振った。
(思い出した。同じ門下生だったあの人だ)
白竜は長身男の正体に気付いたが、何か理由があるのだろうと思い黙っていた。
森の中に光がさしてきて、夜が明けようとしていた。
その時だった。
長身男と鈍足男目がけて矢が飛んできた。
長身男は素早くよけたが、鈍足男は頭を射抜かれていた。
白狼は矢の方向に何人か向かわせようとしたが、長身男がやめたほうがいい、どうせ、追いつけはしないと言った。
(もう少しでたどり着けたというのに・・・しかし、雪華お嬢様が無事ならそれでよい)
長身男の言葉に白狼は今にも斬りかかりそうだったが、白竜が止めた。
「竜、なぜ止める」
「兄上、この方は私たちの味方だと思います」
白狼は長身男と白竜の顔を見て、どういうことだ説明しろと長身男の首元に刀をあてるのであった。




