02 (目覚めたら身体が変わってました)
ガバッ……ドスッ
夢から目覚めたナオは起き上がろうとするも、手足がゴムバンドでベッドに拘束されていて起きる事が出来ず、ガタガタとベットが反動で揺れる。
しばらくガタガタして無意味と悟り、状況確認の為、唯一動かせる首を回してあたりを見渡す。
ここは病院のベットの上だ。
窓側から光が差し込み、オレを照らしている…。
が、よく見ると窓ではなく、壁紙型の極薄ディスレイの映像だ。
ディスプレイには草原の映像が映し出されているが、まさか病院の外が草原と言う事もないだろう。
ベットの隣には机があり、空中に浮かぶ 青い仮想ウィンドウと その下に仮想キーボードがあり、白衣姿の女性が カタカタとキーボードを打っている…。
「おや…目覚めたかね」
女性はキーボードの操作をやめて椅子をこちらに向け、それが彼女の癖なのかまた足を組む。
「転生おめでとう ナオト君」
そこにいたのは、夢の中に出ていたカレンだった。
姿は夢と変わらないが、今回は巫女姿では無く医者が着る白衣をまとっている。
「こ…こ…は?」
声に出してみるが、頭でイメージした音が出せなく雑音めいた音が出て来るが、それでも どうにかして ゆっくりと言葉をつむぐ。
「こ…こ…は、ど、こ…だ?」
「ここは砦学園都市 中央病院。
君に危険はないから、まずは落ち着きな」
病院?学園都市?
「その声帯は 少し癖があってね。
今、学習させているから、すぐに慣れると思うよ」
そう言うと、彼女は仮想キーボードを操作し始める。
「キミの話をしよう…。
ここは君のいた時代から580年後になる。
今は 西暦2600年…I.A500年だ。
君は2020年に何者かに射殺されたが、幸い脳は無事でね…。
両親が巨額を はたいて君の脳を冷凍保存して、技術が発展して 君を復活できる時を待っていたそうだ…良い親御さんじゃないか…。」
「良い親ね…。」
親の記憶が曖昧だが 何故か その言葉に違和感を感じるのか…。
「だけど 冷凍保存された君の脳を管理している会社が、その年の世界恐慌で経営破綻してね…。
その後どういう訳か 別の会社が引き継ぎ、君の脳は南極の永久凍土に埋められたんだ。
まぁ あそこなら維持費も掛からない だろうしね…。
君の他にも いくつか脳があったんだが、他の脳は保存状態が悪くてね…比較的保存状態がよかった君の脳を回収して身体を作って入れてみた訳さ」
「サイボーグか?」
拘束された体を見渡すが 機械特融のメカメカしさはなく、生身と見分けがつかないレベルだ。
「おおむね正解。
人の 生体機能を 完全に再現しつつ システマチックに再設計した身体だ。
アタシは複合義体と呼んでいる。」
カレンは、仮想ウィンドウから鏡を実体化させ オレに向ける。
そこに写るのは 20歳のオレでは無く 13歳位のまだ幼さが残る顔だった。
身長も150cm位か…。
170cmだったオレからすると かなり小さい。
「で、オレはどうすれば?
別に善意で助けた訳じゃないんだろ」
オレがカレンの方向に首を向ける。
カレンは鏡を仮想ウィンドウに放り込んで 緑色の粒子になって消え、ストレージ内に戻す。
「まっその通りだ。
今言った通り その身体は特別製でね…この都市では 君が最初になる。
正直どんな危険が存在しているかわからないし、民間におろすには圧倒的にデータが足りない状態なんだ…どんな形でさえ人体実験は必要だからね。
そこで 君に頼みたいのは そのデータ集めに協力してもらう事…。
なぁに定期的に健康診断を受ける位の簡単な事さ、何か違和感があるなら最優先で直せるしな」
そういいながら、白衣のカレンは オレの拘束バンドを外しにかかり、代わりに右腕にリストバンドを付ける。
「そのバンドは 外さないでくれよ。
君の位置を追跡させる信号とバイタル情報を常に送信し続けている。
君はまだヒトと認められていないし、社会保障番号もない。
今日中に申請しておくから明日まで病院から出ないでくれ。
まーお疲れさん今日はゆっくり休むんだな…明日また来よう。」
そう言ってカレンは病室を後にした。
(脳だけのコールドスリープか…。)
オレは起き上がり、身体を動かし始める…。
身体は まだ…まともに言う事を聞か無い。
それでもどうにか起き上がり、立ち上がる。
姿勢が保てずバランスを崩し、派手に地面に倒れる…。
(こりゃ リハビリが キツく なりそうだな…。
世の異世界転生者も、こんな感じだったのか?)
そして1週間程リハビリと学校のテスト勉強を行い、各種手続きを済ませて正式に高校学校に通う事となるのだった。