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19 (肥えた豚)

 その日の深夜…エアドームの空には綺麗な星空が投影されている。

 そしてハルミを除く、生身の人達は 深い眠りについていた。


 堀の中に水が波紋が浮かび、ぞろぞろと影が城壁に取り付く…。

 石造り風のタイルで構成せれた城壁の内側には 炭素繊維の複合装甲になっている。

 軽くて強度が高く、DLの装甲にも使われる素材だ。

 男達は ARウィンドウを表示し、王城に提出している設計図を確認しながら進んでいく。

 が、一箇所だけ装甲がトンネル状に くり抜かれていてタイルでカモフラージュされている場所がある。

 当然設計図では装甲がある事になっている。

(全く…城壁の建築を俺達に任せるなんて…セキュリティホールを作られるとは考えていないのか?)

 俺達『パラベラム部隊』は タイルを丁寧(ていねい)に外し、人が1人通れるかどうかのトンネルを通り抜ける。

 城内に進入し武装を確認して各部隊が走り各配置に向かう。

 武装はグロック(ハンドガン)に、AK(アサルトライフル)、コンバットナイフだ。

 総勢48名…プラス指揮官が2名の4個中隊だ。


 旧式のレトロな物理キー…ハッキング対策には 効果的だが、逆に物理的なピッキングは容易に開けられる。

 ガチャ…。

 ゆっくりと男がドアを開け、別の男がドアにハンドガンを向ける。

 侵入した2人はお互いの死角を補うように部屋を捜索し、ハンドサインで残り4人の仲間を呼び寄せる。

 2人を入り口の見張りに残し、残りは2階に行く。

 2階に上がり 2階の見張りに2人待機させ、残りの2人で寝室のドアをゆっくりと開ける…。

 鍵は掛かっていない。

 ベットに眠っている肥えた豚のような体型の男をやせ型で身体の細い2人は見下げる。

 完璧な栄養バランスのソイフードを食べて ここまで太る人はいない。

(天然物の高級肉をたらふく食べている豚が!!)

 2人はそれぞれサプレッサー付きのハンドガンを豚男(ぶおとこ)の顔に向けて、1発ずつの発砲…。

 真っ暗だった部屋に一瞬光が走り、パスッ…パスッと言う小さな音がした。

 男達はすぐさま家を出て、次の家に向かう…。


 城下町ではあちこちの家で一瞬部屋が光り、男達が静かに出てくる。

 害虫達は一切気づかず、永遠の眠りにつく。

(自殺した友人に詫びてこい。)

 友人は会社のコスト削減の為、安全を蔑(ないがし)ろにされ、事故を起こした…。

 会社側は 事故は友人の過失であり 会社側に一切責任は無いとし、労災も降りなかった。

 肉体が資本な生活で、怪我により生活が出来なくなった友人は 作業場の倉庫の正面玄関前で銃で頭を拭き飛ばし、派手に死んだ。

 マスコミが騒いで 会社側が労働環境を改善する事を願ったのだろう…。

 だが 実際の所、会社側は『会社のブランドが傷ついた』として遺族に損害賠償を求める民事裁判行う始末…。

 そして、マスコミが会社側に加担(かたん)し、遺族を自殺に追い込んだ。

 会社の労働者と遺族の自殺より、ブランドの方が大事らしい。

 そんなトップはいらない…パスッ


(これは過労死した弟の分だ。)

 弟は優しかった…。

 15分前行動をする善意を社員全員に強制させ、更に15分前行動の善意を要求する。

 当然その間の金額は 支払われないので毎日30分無償で働いていた。

 会社の為、休日など無く…夜勤だろうが日勤だろうが電話一本で代わりに現場に行ってくれる実に都合の良い労働者…。

 そんな善意(ぜんい)の強制が蔓延(まんえん)し 1日20時間労働が1ヵ月間続き、弟はとうとう倒れ、働いていた全額が医療費に飛び、それでも会社の為に働き続けた。

 そして、その原因を作ったのは 工期を通常の3分の1まで短縮して工費を浮かせ、残りを自分の金にしようとしたコイツだ。

 パスッ


(緊急医療が必要だと言うのに3時間も待たせて、死なせた妻とお腹の子供の分だ。)

 妻は人工授精が普通で自然出産なんて珍しいこの世の中で、あえて自然のまま子供を産みたいと言っていた…それが自然な事なのだと…。

 妻は予定日を大幅に前倒しで帝王切開が必要な状態になり、母子共に危険な状態だった。

 だが、病院の待合室で一切の処置をせず3時間苦しんだ後、母子共々死んだ。

 原因は 患者が少ないと医者、看護師、ベットなどの固定費が無駄になる為『無駄を無くし、余裕を無くした』ギリギリの状態で医者を酷使(こくし)し、通常の患者は 一週間以上前に予約を取らないと診察が受けられない状態だったからだ。

 そして 病院の利益の為に人員を削減し、患者を数字でしか見ず、多くの助かる命を死なせた元凶がこのバカだ。

 パスッ、パスッ、パスッ

「おい気持ちは分かるが無駄弾使うな…」

 扉の前を見張っていた男に止められ、オレは コンバットナイフで顔面を思いっきり刺し、そのまま退出した。


 平和な都市を管理し、都市民から搾取(さくしゅ)した金を貪(むさぼ)る肥えた豚が始末されていく。

 豚は この都市の企業の重役…だが、部下に無理難題と責任を押し付け、会社の利益と自分の懐(ふところ)の為に動く、殆(ほとん)ど何もしない不労所得者だ。

 『働かざる者食うべからず』と奴らはよく言うが、その奴らには適用されないらしい。

 ここが平和だと信じ疑わず、危険から目を背け、戦う力を都市民から奪う。

(さぁ お得意の平和交渉で この銃弾を止めて見ろ!)

 ぬるま湯に浸かり危険意識が欠如(けつじょ)した上級市民は、大好きな交渉をする暇も無く、たった10UMの粗悪な1発の9mmパラベラム弾(圧倒的武力)により死ぬ。

 『平和を望むならば戦い(パラベラム)に備えよ』…武力の無い平和など無いのだ…。


 パスッ

 最後の1人を撃ち殺す。

 これで働かない豚は処理され、残ったのは働く管理者だ。

 彼らには 低所得者の要望を全面に聞き入れ、この都市を再建して貰う必要がある。

 ガタッ…。

 物音の方向に素早く銃を向けると そこにいたのは、包丁を構えた少年だ。

 少年の顔は涙目で、持っている包丁で男(オレ)に襲い掛かる…。

 手が震え、太刀筋も未熟…。

 オレは コンバットナイフで包丁を受け止め、少年の腹を思いっきり蹴り飛ばした。

「かはっ」

 少年は包丁を落とし腹を抱えうずくまる…。

「それでいい…オマエの父親が死んだのは オマエの腕が未熟だったからだ…。

 まずは力を身に付けろ…平和を唱えるのも、交渉するのも力を付けてからだ。」

 オレは じっとこちらを見る殺意が宿った少年の目を見て後ろを向き立ち去った。


 企業経営をしていた女を2人程射殺したが…基本、女子供は放置だ。

 やらかしか責任は親にあり、子供達には関係ない。

 未来の経営者になるであろう あの子達には、親ブタの死を教訓とし子ブタから卒業して貰わなければならない。


 ここまで負傷者0…目立った騒ぎも無く王城に侵入する。

 要人の部屋の位置は既に割れている。

 住み込みのメイドなどもだ。

『1-1配置に付きました。』

『1-2こちらも』

『3-2配置完了』

 次々と配置が完了する。

「よし、隠密作戦は ここまでだ…手早くやれ。」

「ハッ…突入!!突入!!突入!!」

 指揮官が無線で突入を指示し、各階が騒がしくなる。


 1小隊に1人いるショットガン持ちがドアの前でショットガンを構える。

 何処(どこ)のドアだろうが錠前(じょうまえ)を撃ち抜き、破壊して開けられる このショットガンは『マスターキー』とも呼ばれている。

 ショットガン(マスターキー)が発砲…錠前(じょうまえ)を破壊してドアを蹴り飛ばし、ハンドガン持ちが部屋の中に侵入…。

「大人しくしろ…チッ起きろ!」

 マスターキーを使い、ドアを蹴り飛ばしても起きない要人に男は苛立(いらだ)ち、ベットをひっくり返そうとするが、脂肪の塊の要人が乗るベッドは1人では上がらず、腰を痛め 2人で如何(どう)にかひっくり返し、寝ていたパジャマ姿の要人を落とし、ドスンと床を揺らす。

「ひぇぇ」

「腕を後ろで組め…早くしろ…。」

 男は 要人の頭に銃を突きつける。

 要人は言うがままに手を後ろにやろうとするが、贅肉が邪魔をしていて、中々後ろに組めない…。

 痺(しび)れを切らした男は無理やり手を後ろに まわし親指を結束バンドで縛られる。

「うぐっ…。

 何が目的だ…今がどう言う時なのか理解しているのか?」

 要人は男を睨みつけ言う。

「ええ、知ってますとも…。

 今が有事なのに戦力を一切出さず、他国の支援を妨害し、あまつさえ、あなたのちっぽけなプライドの為に大切な都市民を犠牲にしようとしている。

 さぁ我々と来てもらいましょうか…ピ(・)ー(・)ス(・)ク(・)ラ(・)フ(・)ト(・)都(・)市(・)長(・)。」

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