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真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?  作者: 山口遊子


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第84話 蘇生


 箱馬車(はこばしゃ)には、もう一度車寄(くるまよ)せの先の駐車場で待ってもらうことにして、ミニマップで確認しながらアスカとともに王宮内の騒ぎの方に急いでいくと、リリアナ殿下付きの侍女、今回の実行犯と思われるヨシュア・ハルベールが(あお)い顔をして目を閉じたまま担架(たんか)で運び出されてきた。口元からわずかに赤い血が流れ出ている。首筋(くびすじ)や手足などの露出した部分は青黒く変色していた。


 警備隊と思われる人たちの中で指図している人がおそらく隊長なのだろうと目星(めぼし)をつけて、


「すみません、ちょっといいですか?」


「これは、コダマ閣下」


「死んでいなければ、まだ助けることができます、私にさせてくれませんか?」


 そう言うと、隊長さんの合図で担架を運んでいた警備隊員が担架をいったん廊下に降ろしてくれた。


 しゃがみこんでヨシュア・ハルベールの青黒く変色した首筋に手をやるとまだかすかに(みゃく)がある。生きているなら何とかなる。エリクシールはあと二本。一本ここで使ってしまっても後で俺が頑張(がんば)って作ればいいだけの話だ。横で(ひか)えるアスカの方を振りむくと、うなずいてくれた。


 力の抜けたヨシュア・ハルベールの首を持ち上げ、『収納庫』から取り出した白く輝くポーションの入った瓶の蓋をとり、エリクシールを彼女の口の中にゆっくりと流し込んだ。すぐに効果が現れたようで、蒼ざめた顔や青黒く変色していた手足や首の色が見る見る精気(せいき)を取り戻し肌色が戻って来た。停止していた呼吸も正常に戻ったようで軽い寝息が聞こえ始めた。


 一連の俺の行動を眺めていた周りの人たちからどよめきが起こった。


「あれが奇跡の薬『エリクシール』」、「輝いていた」、「『エリクシール』を惜しげもなく」


 そんな言葉が聞こえてきたが、『エリクシール』とて所詮しょせんは薬だ。薬は使うべき時に使ってこその薬なのだ。


「これでもうこの人は大丈夫(だいじょうぶ)だと思います。このまま目が覚めるまで寝かせてやってください」


 それだけを言い残して、引き留める警備隊の隊長さんをおいて立ち去ることにした。ヨシュア・ハルベールがどういった経緯(けいい)で死にかけていたのかはだいたいの想像はつく。俺に人の善悪を判断できるような能力があるわけではないが、彼女の目は決して悪人のそれではなかったと思う。今回、一命を取り留めたことで彼女はこれからつらい目に遭うことが予想できるが、逆に言えば罪をつぐなう機会を得ることができたのだ。


 この国の法律でどのように彼女が(さば)かれるのかはわからないが一度助けた命だ、極刑(きょくけい)になるような裁きが出されるようなら減刑の嘆願(たんがん)くらいしてやろうじゃないか。



 その後、待たせていた箱馬車にアスカと乗り込み、『ナイツオブダイヤモンド』に帰った。



「お帰りなさいませ、ご主人さま。お帰りなさい、アスカさん」


「ただいま、シャーリー」「ただいま」


「お疲れでしょうから、すぐにお茶の用意をしますので、居間(いま)の方でお二人とも(くつろ)いでいてください」


「ありがとう、シャーリー」「ありがとう」



 シャーリーが淹れてくれたお茶を飲み終え、


「まだ時間があるから、商業ギルドであの部屋を借りてエリクシールを補充(ほじゅう)してくるか?」


「マスター。エリクシールの錬金作業はあまり場所を取りませんから、ここの簡易台所で十分ではないでしょうか」


「それもそうだな」


 確認してみるとスイートの簡易(かんい)台所でもエリクシールを作るには十分な広さがあったので、商業ギルドにお世話になるまでもなく、その後、アスカと一緒に一時間かけてエリクシールを一本作った。残った一本だけだと心配だからね。もちろん、シャーリーは飽きもせず、俺たちの作業を見つめていた。そこまで面白いコンテンツとは思えないのだが、どうもシャーリーにとっては楽しいらしい。



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