第72話 王都見物2、再会?
今日は朝から、俺とアスカとシャーリーの三人で王都見物をしている。先ほど劇を観終わったので、少し早いが昼食にしようと思う。
「アスカ、少し早いが昼にしよう。どこかお勧めはあるかい?」
「それでしたら、この先のカフェ・レストランがお勧めです。オープンテラスで食事もできますし、何より、その店のデザートが評判のようで魅力的です」
すでに、アスカの頭の中ではタウンマップが完成しているらしい。
「じゃあ、そこにしよう。シャーリーもいいよな」
「もちろんです。ご主人さま」
……。
ここかー。
アスカに連れられてやって来たのだが、店の様子を見ると入っている客は女だらけ。男子高校生の本音では嬉しいのだが、ハードルが高い。なぜか尻込みしてしまう、そういった店だ。
とはいえ、アスカはそんなことには関係ないので、店の人に案内もされないうちに勝手に庭園風のオープンテラスに入り込み、空いていた丸テーブルの四人席に座ってしまった。アスカを物理的にどうこうできる者はこの世にはいないだろうから構わないのだろう。店の人も何とも言ってこないし。
座って待っていると、店員の女の人がやって来たので、俺はサンドイッチと飲み物、アスカはパスタとサラダと飲み物、シャーリーはサンドイッチとパスタと飲み物。遠慮がちなシャーリーには外食では遠慮せず好きなものを頼みなさいと常々言い聞かせている。
アスカには言っていないが勝手に注文している。稼いでいるのが主にアスカなので何も言えない。言う気もないが。
俺とアスカは一心同体。アスカの物は俺の物。ここで、俺の物は俺の物とは思っていても敢て言うまい。
食事をほとんど食べ終えたところで、近くを通った店の人を呼び止め、俺はお茶だけ、アスカは何かのケーキを二つとお茶、シャーリーはクッキーとお茶を注文した。俺には食事をした後すぐにデザートというのは真似できない。アスカは問題ないのだろうが、シャーリーは太るぞ。最初のころのシャーリーは瘦せっぽちだったが、いまは普通の可愛い女の子だ。太れない体質というわけでもないようだ。
出て来たアスカのケーキは一つがいわゆるショートケーキ。白いクリームの上に赤いイチゴが乗っかったあれだ。スポンジの中にもクリームが挟まっていて、そのクリームの中に何かのフルーツが入っているようだ。もう一つのケーキはパイ生地と果物の薄切りを入れたクリームを交互に重ねたミルフィーユだった。
シャーリーの頼んだクッキーは、大振りな三枚のプレーンなクッキーに三種類のジャムが小瓶でついてきた。ジャムはそれぞれカシス色、オレンジ色、イチゴ色だった。それを付けて食べるらしい。
シャーリーがただのクッキーを頼むはずがないと思っていたら、やはり高カロリー食品だった。今の宿屋住まいだと、シャーリーの仕事がお茶を淹れるくらいしかないから、ほんとにこのままだとヤバイぞ。鬼のアスカ教官にシャーリーを鍛えさせてダイエットさせる必要があるな。ご主人さまはな、お前の将来のために鬼となるのだ。
そんなことをショウタが考えているともつゆ知らず、りすっ子シャーリーは幸せそうにクッキーを頬張っていた。
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こちらは、聖女と賢者の二人組。
「ダンジョンへ行く前にやっと王宮を抜け出せたんだから、今日は半日だけど思いっきり遊ぼ」
「そういえば、おっちょこちょいのヒカル、トリスタンのおじさんに連れられてどっか行っちゃったねー」
「あんなに自分勝手なことしてたらさすがに怒られちゃうんじゃない?」
「そうかもー。ハハハ」
「この店がモエの言ってたお店? けっこういい感じじゃん」
「でしょう。侍女の人に教えてもらったの。女性に結構人気のお店なんだって。特にこの店のスイーツが魅力的で少々お高くてもみんな二つは注文するんだって」
「そうなの? そういうじょうほうしゅうしゅうはモエはとくいよね。そろそろ昼だから、軽く昼食をとって、デザートたのも」
「まあね。そのためにこの王都に来たようなもんだから。食べ終ったら、お土産にケーキを買って、その後、サヤカのお店を探しましょ」
「サンキュ。モエ」
「任せて。サヤカ、あっちの方だとお庭で食事できるみたいよ。せっかくだから行って見ましょ」
「いいんじゃん」
「ここが空いてるよ。モエここでいいじゃん」
すぐに、テーブルの上にあったメニューを各々広げ覗き込む二人。
「そうね。何頼む? 軽いものでいいから、私はサンドイッチとフルーツサラダとオレンジジュース。サヤカは?」
「モエ、それじゃけっこう重いよ。あたしはサンドイッチとお茶かな」
◇◇◇◇◇◇◇
俺たちが食後のお茶を楽しんでいると、二人組の女の子の客がやって来て、近くのテーブル席に座った。ここいらでは珍しいミニスカートをはいている。椅子に座った片側の女の子のメニューを持つ指先の爪に派手なネイルアート。少し欠けたところがある。
はて? 残念ながら、二人とも両開きのメニューで隠れて顔は見えない。一人はこちらを向いて座っているので、つい絶対領域に視線が行ってしまう。男子高校生の性は異世界でもいかんともしがたい。
「マスター、どうしました?」
「別に」
「マスターは、私がマスターのミニマップを視覚共有していることはご存じですよね」
「ああ、知ってる」
「実は、視野も共有してるんです。マスターが見ているものを私も同時に見ているということです」
ナッ、ナンダッテー?!
「アスカさん、キミは何が言いたいのかな?」
「何でもありません。今のは冗談です。忘れてください」
ホントデスカ? 確かめようのない事柄は、それの存在を前提とした行動を強いられる。見事な孔明の罠だった。
アスカのヤツ自分だけ働かされてること根に持ってるのかな? そもそもアスカは俺の所有物だったはずだがどうなってんの?
……ん? モエ? サヤカ? どっかで聞いたような名前が先ほどのミニスカ二人組から聞こえてくる。なんだか声に聞き覚えがあるかも? あれれー、あいつらやっぱり賢者と聖女だよ。
こいつら、俺を罠にはめた主犯ではないにせよ、立派な共犯者だ。俺が怖そうな眼をして近くの客をにらんでるのに気づいたシャーリーが何事かと、クッキーを頬張る手を止めた。
「あの二人がマスターが違和感を持ったという賢者と聖女ですか?」
アスカも俺の異常を察したらしい。
「いや違う。あいつらは俺の知ってる賢者と聖女だ。どう見てもお淑やかに見えないだろ?」
「そのようですね。マスターはあの二人に対しあまりよくない感情をお持ちのようですが、私が処理しましょうか? 煙になるまで細かく刻めば後腐れありませんよ。二秒下さい」
またあぶない発言を。冗談か本気か知らんが、アスカは本当にできることしか言わんからな。
「止めておけ」
「はい。マスター」
あいつらのおかげで、アスカに会えたわけだから感謝する? できるわけがない。だからと言って殺ちゃうわけにはいかんわな。まだ俺に気づいていないようだから今のうちに退散しよう。
「出るか」
「はい、マスター」「はい、ご主人さま」
二人を連れて俺は逃げるように退散した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「サヤカ、さっきそこに座ってた三人連れ見た?」
「見た。女の人は美人だし女の子は可愛かったけど、なにあのダッサい坊主頭。知ってる? 指に何個も指輪はめてんの」
「ほんとー、何ソレ。どっかで見たことあるような気がしたんだけど、この世界にもいるのね、あんなダサい男」
「ダサダサ。チョーウケルー。アハハハ」「アハハハ」
ショウタは二人に全く気付いてもらえなかったようである。ある意味お互いにラッキーだったようだ。




