第7話 勇者 ヒカル
俺の名前は金田光。 私立△△高校の2年だ。
中学の時の後輩のサヤカと、サヤカのダチのモエと、三人でつるんで学校ふけてカラオケでも行こうと歩いてたら、いきなり真っ黒いワゴン車が俺たちに突っ込んできた。
それから先は、まあ、異世界召喚? そんなやつよ。
目の前に突っ立ってるお嬢さま? 後で分かったが、王女さまだった。その王女さまが、俺たちを召喚したとかなんとか。話はよくわからなかったが、どうやら俺は勇者になったらしい。どうよ。サヤカが賢者。モエが聖女だと。
これからは俺たちの時代だぜ。
そういや、もう一人召喚された野郎がいたな。収納士? お掃除屋さんかよ。プップー。眼鏡をかけたひょろっとした男だ。着ている制服は、俺でも知ってる進学校のものだ。頑張って勉強して入学したんだろうに。気の毒なこった。何でもモエとおんなじ小学校だと。そのころからの優等生だってか? まあ、お片付け頑張ってくれ。
俺たちのいるところは、何とか宮っていう宮殿だそうだ。メイドも一人一人について、至れり尽くせりだ。そういやメイドじゃなくて侍女っていうらしい。みんな貴族の出身だとか言ってた。貴族がどんだけ偉いのかは知んねーけどな。メシもウメー! 召喚サイコー。
何だー? 座学ってのは、じじいばっか出てきてわけわからんことをぶつぶつと。隣のサヤカ見てみろ。爪の掃除ばっかしてるよ。夜寝るのが早いから、眠くなんないのが逆に苦痛だよ。その点モエは偉いよ。髪の毛の先をくるくる回しながらでも、一応はじじいの方を向いてるかんな。
われらが収納士さまは、眼鏡を外したのか? お前なんかが、眼鏡を着けてようがいまいが、もてやしねーよ。
イミフの座学だが、魔法が使えるようになってちょっとうれしくなったぜ。最初、指先から大きな炎が燃え上がった時にはさすがにびっくりした。眉毛を剃ってなかったら、眉毛が燃えて大変なことになるところだった。三人揃って天井を焦がしたけど、まあ、ご愛敬だわな。それにしても、この片付け屋、全く魔法が使えないのか? なさけねー! あ、チョロっと指先から火が出た。タバコ吸うのに便利かも?
騎士のおっさんたちとの、チャンバラもたるい。こいつら偉そうにしてるくせに、てんで弱くて相手にならん。騎士団長のおっさんくらいだな。まともなのは。
ちゃんと素振りをしろだと? そんなたるいことしなくても俺は十分強いだろ! 俺に勝ってから言えってんだ。
武器がまっすぐ振れるようになるまでは、ハンマーとかメイスを使え? 何言ってるんだ、そんなの使っちゃカッコ悪いだろ。俺は勇者さまなんだぞ。勇者さまは大剣しか用はないんだよ。
明日からダンジョンで実戦訓練だ。ワクワクが止まらない。どんなヤツが出てくるか、騎士団長のおっさんがなんか言ってたけど、出てきた端からブッタ切ればいいんだろ。やってやるぜー。
片付け屋の野郎、馬車の中で寝たふりで俺たちをシカトかよ。ま、どうでもいいか。俺もかまってやるほど暇じゃないしな。
この野郎、昼からは寝たふりやめて、起きてると思ったら、今度は窓の外を見てたそがれてるよ。辛気臭せー。
よーし、今日はダンジョンだ。暴れてやるぜ。
ここが入り口か? 真っ黒い渦が巻いてるけど、ここに入っていって大丈夫なのか?
ん? サヤカとモエ、二人とも落ち着いてんな。まっ、何があっても俺が助けてくれるからって安心してるんだろうな。
ダンジョン1層。
洞窟が続く。鍾乳洞? そんな感じ。ただ、明かりをともさなくても、なんの加減かある程度の明るさがある。
賢者の魔法で討ち漏らしたゴブリンの相手しろだと? 俺に指図するんじゃねー。わーったよ。あいつらブッタ切りゃいいんだろ。あいつら臭いから嫌なんだけどな。
なんだ? この剣、安物か? もう折れちまった。おい、収納屋、予備の剣! ああ、それだ。おい、もうちょっときびきび急げよ!
あー、たるい。いつまでこんなザコ相手にしてるんだよ。
モエー、『スタミナ』頼む。……、サンキュー
ダンジョン2層。
1層とそう代り映えしない。モンスターに大グモが増えたくらいで楽勝。
サヤカとモエはクモが苦手なのか。良いこと知ったぜ。
ダンジョン3層。
ここも大したことない。ザコ相手じゃつまらん。
おや、あそこの崩れた壁のところ、なんかあるんじゃないか? ん? 隠し部屋?
おー! 宝箱があるじゃないか。見るからに豪華だ。後から来た騎士のおっさんたちも入り口あたりで騒いでる。
サヤカ、宝箱の鑑定は?
「罠はテレポーター。どこへ飛ばされるのかわかんない」
中身は?
「アーティファクト、『青き稲妻の大剣』だって。完全電撃耐性? 速さ+20」
アーティファクトってのは、すごいってことだよな。じゃあ、何としても手に入れないとな。
「おい、収納屋。突っ立ってないでこっちへ来い。急げよ。お前、運だけはこん中で一番いいんだよな。あの宝箱、お前が開けてみろ。運が高けりゃ、良いもんが出てくるかもしんないからな。さっきサヤカが鑑定したら、罠はないみたいだから安心しろ」
モエが目を見開いて俺の方を見る。右手の人差し指を立てて少し開けた口の前に。なーに、有効活用、余りものの有効活用。どっかに飛んでいくだけなら大したことないだろ。
収納屋が前に出て、宝箱の上蓋を引き上げた。その瞬間、収納屋は空中に吸い込まれるように俺たちの目の前からいなくなって、蓋の開いた宝箱だけが残った。
中には、青黒くつやのある「大剣」が入っていた。これが、『青き稲妻の大剣』か。
収納屋が消えてしまって、騎士のおっさんたちは騒いでいたが俺は知らん。
さっそく、中に入っていた大剣を両手で握りしめると、すごく手に馴染む。これこそ俺の剣だ。大事にするからな、俺の相棒。
目の前の宝箱は、豪華だったんで持って帰りたかったが、ダンジョンオブジェクトとか何とかで、動かすことができないらしい。今までの剣?はもういらんから、収納屋に持たせようと思ったら、いないんだった。俺のアイテムバッグには大きすぎて入んなかった。仕方ないから、宝箱の中に突っ込んでやったら、騎士のおっさんが、俺の捨てた大剣をあわてて回収してた。それなりに高い剣だったんだと。
さー、この『青き稲妻の大剣』で、ビシバシ行くぞー。




