第68話 エリクシール4、『ナイツオブダイヤモンド』
「マスター、もう一本出来そうですか?」
「今時間は?」
「午後0時十五分です」
「もう一本いっとくか」
俺のMPは自然回復を含めて、現在千五百。四千弱から三千MPを消費し、今千五百ということは、一時間で五百回復か。三千を超えるにはあと三時間。作業時間一時間を考慮すれば二時間の休憩でエリクシール一本分、MP三千が賄える勘定だ。
「いや、MPが足りない。今日はここまでにして、明日もう一度ここに来て頑張って二本作ろう。二時間休憩すれば三千MP賄える計算だ。それじゃあ後片付けして昼にしよう」
「アンジェラさん、シャーリー、外に出て昼にしよう」
依然、呆けていた二人を起動させる。アスカが器具を洗浄していく端から俺が収納するのですぐに片付いた。
迷うこともなく、玄関ホールに帰り着き、受付の女性に帰る旨を伝える。
「今日はありがとうございました。明日一日、今日の部屋をお願いします」
「承りました。ところで皆さまはどちらにお泊りですか?」
「王都に来たばかりなもので、まだ決めていません」
「それでしたら、ギルド長のリストより預かったものですがこれをお受け取り下さい。当ギルドで所有しております宿屋の宿泊券です」
そう言って封筒を渡された。
「ありがとうございます。助かります」
礼を言って封筒を受け取り王都商業ギルド本部の建物を後にした。
「ショウタ、さっき貰った宿泊券見せてくれる?」
さっきの封筒をアンジェラさんに手渡すと、アンジェラさんは封筒から取り出した黒い紙きれを見て、
「これ『ナイツオブダイヤモンド』の宿泊券よ! 王都最高級の宿屋よ。☆五つなのよ! しかも、この券、ブラックチケットよ!」
あるんだ☆評価。
「何ですか? ブラックチケットって?」
なにそのクレジットカードの親玉みたいな名前のチケット。
「ブラックチケットは最上級ルームに無料で宿泊できるチケットのことよ。もちろん宿泊中の飲食代なんかも全部無料なの! 期間はここに書いてあるわ。なんと十日間もよ!」
「そんなすごい宿泊券を貰っていいのかな?」
「いいの、いいの。商業ギルドのハインリッヒには貸しが一杯あるから」
「そういうことなら。アスカ、その『ナイツオブダイヤモンド』の場所分かるか?」
「目の前の建物がそうです」
目の前の建物には『ナイツオブダイヤモンド』と大きな文字で書かれてました。ここもまた、石造りの立派な建物だ。後ろの商業ギルド本部に感じが似ている。
「さ、行きましょう。お昼は宿屋の中のレストランで摂ればいいわ」
宿泊券を握りしめたアンジェラさんの後を追う形でホテルの中へ。
『ナイツオブダイヤモンド』のエントランスには、日中だというのにシャンデリアが輝いていた。アンジェラさんがロビーでブラックチケットを差し出すと、奥から支配人さんが現れ、丁寧にあいさつされた上、その人に最上階である六階に案内された。
かなり大きな建物だったので階段ではシャーリーにはきついのではと心配したが、なんと、エレベーターがあった。もちろん電気で動いているわけではなく、エレベーターを操作する人が中にいて、何やら機械を操作し、指定の階に行くものらしい。アンジェラさんが目を輝かせてその操作に見入っていた。
俺たちが案内されたのは、ベッドルームが三つ、ゆったりしたリビング、風呂が二つ、トイレ、簡単な料理用の道具類と食器棚の付いた台所、会議室、それに控室の付いたスイートだった。
「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さい。なにか御用があれば、このベルをお鳴らし下さい」
そう言って支配人さんは部屋を出て行った。すごいよ、ここ。各自の着替えなどを俺の収納庫から出してやって、その後スイートの中を探検して回った。一通り探検し終わったところで。
「そろそろ下のレストランに行って食事にしましょう」
昼食は、夕方のディナーを堪能するため、軽めに注文した。シャーリーには中途半端に少なかったようなので、部屋に帰って収納庫の中に入っていた串焼きを一本渡しておいた。
時間もあるし、他に何もすることもないので、先に風呂に入った。何カ月ぶりかの真面なお湯の張られた風呂である。
「フー」
日本にいるときは、日本人は風呂好きという意見に懐疑的だった俺だが、意見を変えねばなるまい。確かにこれは良い。身も心も洗われるというのを実感した。バスタオル姿の美女が『お背中お流します』といったイベントはなかったが、さっぱりして風呂を出る。
シャーリーは初めてお湯の入ったお風呂に入るというのでアンジェラさんと一緒に入った。アスカは俺の後に入った。アスカも風呂は初めてかもしれないが、アスカなら風呂の入り方くらい知っているだろう。
風呂から出た俺は少し疲れが出たみたいでベッドに横になり、うつらうつらしていたら結構時間が経っていたらしい。
「マスター、そろそろ夕食の時間です」
着替えてリビングに出ると、あとの二人も着替えて待っていたので、すぐに下のレストランに行きディナーを堪能した。美味しかったとだけ。
ただ飯は最高のスパイスである。いや、本当に美味しかったよ。




