第316話 フーの運んだ幸運?
ヒナたちについては女性陣に任せるほかないようだ。代償行為ではないが、俺は久しぶりにシローと遊ぶことにした。
「おーい、シロー! 魔石をやるぞー!」
収納から空魔石を一つ取り出して、玄関からシローを呼んだのだが、いつも『魔石』の言葉に反応して飛んでやってくるシローが、今回はやってくる気配がない。
シローのヤツどこに行ったのかな?
仕方がないので、風呂に入る前に、ベッドで体を伸ばして一休みしていようと思って自室に帰ってみると、真っ白なシローがしきりに黒鎧のフーに臭い付けをしていた。新しいものがあるとすぐにおい付けをしたがるのだが、シローは本来ならモンスター。モンスターのくせに犬と同じ行動をとるところが不思議だ。
ベッドで横になってしばらくしたら、十分臭いづけに満足したようで、俺のところにやって来て、足元辺りで丸くなっておとなしくなってしまった。フーもシローにまで認められてしまったようだ。
その日の夕食時、シャーリーに今回のルマーニ往復での出来事を話して聞かせてやった。
「エメルダさんのおばあさんも元気になったようで良かったですね。でも、グリフォンのヒナといい、黒い鎧のフーといい、いろいろなことがショウタさんには起こるんですね。あとで私にもフーを見せてください」
「見せるのはいいけど、シャーリーがフーに憑かれないか心配だなー」
「ショウタさんじゃないので、そんなことはありませんよ」
俺だとフツーにいろいろなことが起こるような言い草だな。
「マスター、フーもこうなってしまえば家族の一員ですから」
フーが家族の一員ねー。
食事のあとシャーリーやら四人娘やらがフーを一目見ようと俺の部屋にやってきた。そうしたら、ラッティーまでやってきて、フーは実は幸運の鎧なのだと喧伝し始めてしまった。
『そんなわけないだろ』
と、心の中で叫ぶだけにしておいた。
翌朝、目覚めれば、当たり前だが、ちゃんとフーが部屋の隅に立っていた。アスカの言うようにもはや諦めるしかなさそうだ。
支度をして、日課のランニング。その後、ブラッキーとホワイティーの二羽にエサをやり、それから朝食。いつものようにアスカと居間に移動してまったりしていたら、ハウゼンさんがやって来た。
「ショウタさま、アスカさま、王宮より使者の方が参られまして、これを」
小さなトレイの上には手紙が三通。封蝋の上から、アデレード王国の国旗らしき『盾の前で交差する2本の剣』の押し印。俺宛に一通、アスカ宛に一通、俺とアスカ宛に一通だった。
ご大層な手紙をいただいてしまった。
一緒に置いてあったペーパーナイフで開いてみると、
最初の立派な紙に、
『ショウタ・コダマ子爵殿
この度、騎士団への「飛空艇」の納入ならびに、これまでの王国への貢献に対して、伯爵への陞爵をもって、褒賞とする』
次の紙には日時などが書かれていた。
まさかこれがフーのご利益ってことはないよな。陞爵については先日フレデリカ姉さんも言っていたから前から決まっていたことだろうし。とはいえ、飛空艇はまだ納入はおろか完成もしていないし、半年すこしでの陞爵は異例かもしれない。
アスカへの王宮からの手紙は、俺の陞爵式への招待状のようだった。それを見ると、ちゃんとその日ボルツさんも男爵に叙爵するようだった。
最後の俺とアスカ宛の手紙には、コダマ・エンダー家の家紋が認められ登録された知らせだった。少し時間がかかったようだが、名前上二つの貴族家が一緒というところで時間をとったのかもしれない。そういったことは手紙には書いてなかったがリーシュ宰相辺りが対応してくれた可能性もある。屋敷の要所などにうちの家紋を入れておくようハウゼンさんにあとで頼んでおこう。
式は来週なので、エメルダさんを迎えに行くには支障はない。もしもダブってしまったら先にルマーニまで週末いけないことをことわりに行かなくちゃいけないし、そうしたらエメルダさんも気兼ねしてそのまま帰ってくる可能性もあるから、それは可哀いそうだ。これもラッキーだった。
? あれ? ラッキー? まさか、フーのおかげ? まさかな。
俺はこの国やこの世界のことについていまだに詳しくはないので良くは知らないのだが、この世界にも『宝くじ』のようなものはないのだろうか? もしもあれば、フーの幸運を確認することができるかも知れない。もしそういったものがなかったら、自分で作って大々的に売り出せば大儲けできるハズ。こういったことを思いついたこと自体が幸運なのか? 運とは実につかみどころがないだけに判断が難しい。
さて、とりあえずサージェントさんがシャーリーを送って帰ってくるまでヒナたちの様子をみて、久しぶりに、ペラのところに行ってみるとするか。
そろそろ、ダンジョンに入っての実習を初めてもいいころだしな。
「アスカ、もう少ししたらペラのところに行ってみるか。生徒たちの様子も見てみたいしな」
「分かりました。夕食の仕込みの始まる前にドラゴンの肉を厨房に届けておけば、今日の夕食に出せるでしょうから、ペラも喜ぶでしょう」
「そうだな。それじゃあ、先にヒナの様子を見てからだけど、そろそろ行くか」
ハウゼンさんに、冒険者学校に行くむねを伝えて玄関を出て、ヒナたちのいる馬小屋にやって来た。二羽は巣の中で丸くなって寝ていた。
エサは朝方やっているので、次は夕方でいいだろう。敷き藁も水もちゃんと取り換えられているので問題ない。やはり、本職のサージェントさんに面倒を見てもらうよう頼んでおいて正解だった。
「アスカ、この子たちの面倒を見始めて、まだ二、三日しかたってないんだけれども、なんだか大きくなっていないか?」
「マスターの世界に『男子三日会わざれば刮目して見よ』とかの言葉もありますし、こんなものでしょう」
なんだか、意味合いが全然違うような気もするが、こんなのでいいんだろうか?
「小さくなっていくより大きくなっていく方が自然ですから問題ありません」
それはそうだけど。
そうやって、アスカと訳の分からない会話をしながらヒナたちを眺めていたら、シャーリーを付属校に送り届けたサージェントさんが戻って来た。俺たちはこれから出かけるので、ヒナのことをよろしくと頼んでアスカと冒険者学校に駆けて行った。




