第27話 ゴブリンの耳
さてと、だいぶゴブリンの死骸が貯まってしまった。冒険者ギルドのオスカーさんは、ゴブリンの死骸は受けとってくれないのでどうしよう?
とりあえず、討伐報酬のために右耳でも切っておくか。
家の台所には、包丁はあるけど、ゴブリンの耳を切ったのがばれたら、ヒギンスさんに叱られるだろうな。洗えば何とかなるんじゃね。とは思うが、冒険はやめておこう。
なんか収納庫に適当な刃物はないか?
おっ! これなんかどうだ、
『盗賊のダガー』
どっかで聞いたような名前だな。まさか、使ったら妙な力が解放されて忍者に変身するってことはないよな。鞘が暗い緑色。黒より濃緑の方が、夜間は目立ちにくいと昔何かで読んだな。やはり実戦用はこなれているな。
鞘から抜くと、墨を塗って乾かしたような刀身が現れた。切れ味が良さそうにはとても見えないが、大丈夫か?
使う前に鑑定くらいはしとくか。何々?
名称:盗賊のダガー
アーティファクト
速さ+20 巧みさ+20。
特殊:自己修復。
変な機能はなかったしアーティファクトだった。結構な優れもんだ。もったいないけど、今のところゴブリンとコボルドの耳切り専用だな。サッシュっぽい帯に差したらカッコ良いんじゃないか? ああー、俺には収納があるから腰につける必要ないや。
ということで、裏庭の井戸の脇、適当な石の上に腰かけて、ゴブリンを収納から取り出して右耳を切り取って持ってきた麻袋に投げ込み、ゴブリンを収納。臭いのでタオルで顔の下半分を覆ってみたけど効果はなかった。
時間経過しない俺の収納庫の中に入っていた死体は取れたて同様のほかほかだから耳を切り取ると血が結構出る。それに臭い。なんかいい魔法でもないかね。
「一つ切っては父のため。二つ切っては母のため、三つ切っては、はて? 何のため?」
父さんたち、俺のこと心配してるんだろーなー。
三十分ほどかかって、切り取り作業が終わった。全部で、ゴブリンが百二十匹、ジェネラルが二匹。ジェネラル二匹? 知らないうちにジェネラルをもう一匹斃していたらしい。
十五秒で一匹、かなりのハイペースだったな。さすがはアーティファクト。耳の付け根に置くだけで、すっと耳が切り取れる。切れ味が良さそうには見えなかったがすごいもんだ。
作業が終わったので、今度はお片付け。何度も井戸から汲んだ水でそこらの血を流し、きれいにする。
フガフガ。クンクン。少しだけゴブリン特有の嫌な臭いが残っている。人は三十秒で大抵の臭いに順応するらしいんだが、この臭い相当だな。
前の世界の北欧には、シュー何とかいう、危険物扱いを受けるほどのすごい缶詰があるらしい。もしかしたら、ゴブリンの肉も加工したらいけるんじゃないか? 危険物として。
そういえば、以前読んだラノベで、ゴブリンの死骸を何とかして肥料にしていたけど、これが肥料になるかねー? ダメもとで、オスカーさんに言ってみるか。
いまさらだけど、よくラノベの主人公って最初に生き物を殺したりすると、精神的ショックで吐いてみたり、落ち込んだりしてたけど、俺はなんともなかったな。もともとスプラッター系の映画なんかも結構平気だったし、医者志望だし。
考えたら俺、その前に主人公じゃなかったわ。ワッハッハッハ。
なかなか、ヒギンスさんたち帰ってこないな。まだ、一時間も経ってないから当たり前か。
「おーい、アスカ、お茶でも飲むか?」
「はい。マスター、ご用意します」
「頼むー」
「そういえば、アスカ。ゴブリンの死骸が俺の収納庫に貯まって、鬱陶しいんだけど、何とか処分できないかな?」
「それでしたら、血煙になるまで細分して、下水に流すのはどうでしょうか? 私が処理すれば、一瞬ですが?」
こえーよ。アスカさん。スプラッター超えてるよ。
「いや、それはまずいだろ。下水も詰まるかも知れんし」
「マスターの収納庫を圧迫していないんでしたら、とりあえず収納したままで良いのではないでしょうか? マスターが収納したものは生きが良いままですからモンスターをおびき寄せる餌にもできるでしょうし」
「それもそうだな。アスカ、さすがだ」
安定のサスアスだ。
「マスター、表に誰か来たようです」
「二人が戻って来たか?」
「いえ、ヒギンスさんたちではないようです」
「俺の方のミニマップでも、黄色だからちがうようだな。誰だろう?」




