第204話 アスカ造船
ここから、適当な話を挟みつつクラフト編(造船)になります。
アトレアに発つ前、何となくいい雰囲気で残ったみんなとお別れをしたラッティーだったが、一日で王都の屋敷に舞い戻ってきて、本人だけ少し気まずい思いをしたようだ。もちろんうちの連中がそんなことを気に留める訳もなく彼女を再度温かく迎えてくれた。
今回アトレアでラッティーの余所いき姿を見せてもらったので、シャーリーにも余所行き姿をみせてもらおうと、頼んでみたら、すぐに自室に戻って着替えてきてくれた。
ラッティーは緑色の余所いきだったが、シャーリーは赤のベルベット生地で上下を作ったようだ。上は、長そでのジャケットで、左右の脇の下から裾まで黒い生地で太めのラインが入っていた。白い絹のブラウスの上にラッティーとは色違いの緑と黒のチェック柄のベスト。下はジャケットと同じ生地でやや広がった膝丈のスカート。裾には白いレースが縫い付けられている。服そのものの見た目はラッティーの緑を基調とした余所いきの色違いに近いが、やはりシャーリーが着ればやや派手目の赤い服でもシャーリーなりの落ち着いた雰囲気が出ている。
「シャーリー、普段と違った雰囲気で何だか大人っぽくなったなあ。ありがとう」
「ショウタさんありがとうございます」
顔を赤くしてシャーリーが部屋に戻って行った。
こんなに似合うんなら、もっと早く余所いきを作っておけばよかったな。これから季節も変わるから、ちょくちょく作ってやろう。
あと、問題という訳ではないが、ラッティーをアスカの養子にした件で、すでに王宮に届を出し終わっており、受理されていたようだ。
従って、ラッティーは、ラッティー・エンダーとリリム・アトレアの名前を持つことになった。そこらへんは追々調整していけば何とかなるだろう。
そんな感じで、暇な俺の暇な日常が戻って来てしまった。
今は、ガラス張りの温室の中に置いた椅子の上に座ってアスカと話をしている。
日中のこの部屋は、ポカポカとしていい陽気だ。
知らないうちに、すこしずつ鉢植えなどが増えてきているようで、ちらほらつぼみの大きくなってきているようなものも見受けられる。最終的に温室が花でいっぱいになればいいなあ、とは思うがまだまだ先だな。夏を過ごしてどのくらい温室内が暑くなるのか確認してからでないと難しいだろう。
シャーリーは学校に行っているので、シローは俺の膝の上でおとなしく首のあたりを俺になでられて目を細め、垂らした尻尾をゆっくり振っている。
シローをなでつつ、ぼうーと、かなり短く剪定された薔薇の鉢植えを見ながら、
「なあ、アスカ。暇なんだけど」
「それなら、たまにはラッティーの勉強を見てみますか?」
「だって今日の分はもう終わったんだろ? これ以上勉強させたらかわいそうじゃないか」
「困りましたね。そういえば、お正月に船を買おうかなというような話がありましたが、どうします?」
「そうだな。まだ寒い日が続くからそこまで急いで船を買うつもりはないけど、注文するなら早い方が良いよな。それで、船はどこに行けば買えるんだ? その話を振ってきたということはアスカはそこらへんはもう調べてるんだろ?」
「申し訳ありません。まだ具体的には調査していません」
「いや、気にしなくていいよ。そしたら、俺たちの考えるすごい船っていうのを考えて造ってもらえばいいんじゃないか? いま、ボルツさんは忙しくしてるから頼めないのが痛いな」
「それでしたら、いっそのこと二人で造ってしまいますか。砂虫の皮はいくらでもありますから船体を作るのは簡単です。あとは帆を立てればいい線いくんじゃないでしょうか?」
「そんなに簡単にできるかは分からないが、やってみてもよさそうだな。そうだ! まだ家具屋さんでもらった木材がそこそこあるから、アスカ、試しに船の模型を作ってみないか? それを元に、修正しながら実物を作ったらどうだろう?」
「それは、良さそうですね。風呂にでも浮かべて、ちゃんと波に耐えることとか確認すればいい船ができそうです」
「それは、本格的だな。面白くなりそうだ」
……
それから一週間、ああでもないこうでもないと言いながら何種類かの船の模型をアスカが作った。最初のうちは、できた模型を風呂に浮かべたとたんひっくり返ったりした。
自分たちの素人考えだけでは限界があると悟り、王立セントラル大学付属図書館で船の構造・操作法などについて調べてきた。それからのアスカの作った模型は、風呂場で少々の波を当てても安定するようになった。
何度か模型を作り直し、最終的に船の大きさや形を決めた。最初は外洋ヨットのような帆船を考えていたのだが、操帆できる人間がアスカ一人しかいないので、帆船は断念し、飛空艇で使っている魔導加速器で進む動力船とすることにした。
それで、船の概要は、
全長:20メートル
最大幅:5メートル
主機:魔導(空気)加速器Mk3×2
補助:小型魔導加速器Mk3×4(1基はポンプ用、1基はポンプ予備)
使用動力源:レベル2以上のモンスターの魔石×12+
最高速度:時速55キロ(30ノット弱)
魔導加速器の改良が進みMk3となった、これまで、レベル3以上の魔石が必要だったものが複数のレベル2の魔石で稼働できるようになった。『ボルツン・ワン』で採用された改良型魔導空気加速器(Mk2)で採用されていた高出力化のための加熱機構は付属していない。
排水装置の他、重心を下げるためのバラストなどを入れる船底部を除き三層構造。
最終形としてアスカの作った50分の1の模型が、水を張った湯舟に浮いている。模型に向かって手で、前から横あいからいろいろな方向から波をあててやっても転覆することもなくしっかりと浮いている。
「よし、これならいけるな」
「あとは、これを組み立てていくための枠組みと足場が必要ですね」
「そうだな、それだったら、フォレスタルさんに頼もうか?」
「そうですね。フォレスタルさんでしたらしっかりしたものを作ってくれるでしょう。私は今度の船の大まかな図面を描きますからそれを元にフォレスタルさんに枠組みや足場を作ってもらいましょう。あと、多目に木材を買っておけば、造船にも、船内の内装にも使えますから、そちらもフォレスタルさんに頼んでしまいましょう」
「それでいけそうだな。魔導空気加速器はボルツさんを通じて注文すればいいだろうしな」
「フォレスタルさんが仕事にかかれば間を置かず、枠組みや足場はできるでしょうから、魔導空気加速器を先に注文しておいた方が良いかもしれませんね」
そのあと、俺とアスカはボルツさんの工房にお邪魔して、魔導空気加速器を業者に発注してもらうよう頼んでおいた。仕様などはアスカが紙に書いていたものを渡している。おそらく2週間、かかかっても3週間ほどで、俺たちの屋敷に届けてくれるだろうという話だった。代金はその時払えばいいらしい。
つぎに、商業ギルドにまわって、フォレスタルさんに一度うちに来てもらうよう言づけてもらった。




