第147話 勇者親善使節団、マリア王女帰還
場面が煩瑣に変わります。
予定していた最後の訪問国での日程を終えて、マリア王女たちの勇者親善使節団が帰国の途に就き一カ月。ようやく一行の前に、王都セントラルの西門が見えて来た。
使節団の王都への帰還は先ぶれによって数日前には王宮に知らされており、王宮からの迎えの者と警備隊員だけでなく、王宮警備隊からも人員が派遣されて勇者一行の帰還を待っていた。
王宮から西門に続く大通りは、一般の馬車の通行は現在禁止されており、勇者親善使節団の帰還の知らせを聞いた人たちが大勢道端に出て一行が通るのを待ち構えている。
西門の前で、勇者一行とマリア王女は、今まで乗っていた馬車を降り、王宮から運ばれたパレード用の天蓋のない馬車に乗換え王宮を目指すことになる。
道端で出迎える人たちに笑顔で手を振る勇者たち三人とマリア王女。勇者が笑顔で手を振るたびに道端から黄色い声援が上がる。
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勇者親善使節団のパレードが王宮前の大通りであるというので、ぜひ勇者を見てみたいというメイドのハート姉妹とイエロー四人娘を連れて大通りに来ている。ヨシュアも興味があるだろうと誘ったが、自分が表通りを歩くわけにはいかないと頑なに遠慮していたので強要するのも変な話なので置いていくことにした。
イエロー四人娘の訓練は、今日はお休みでいいだろう。アスカが止めるので四人娘はマスカレードイエローの変身はしていない。俺も智謀のマスカレードブルーになろうと思っていたが、多数の人前に現れると、マスカレード仮面の秘密が露見する可能性が高まるといって、これもアスカに止められてしまった。アスカのヤツ自分だけ変身を俺に勧められなかったのでスネたのだろうか?
そういえば最近、無敵のマスカレードレッドの姿を見てないな。
シャーリーはかわいそうに今日も学校だ。シローはお留守番だが、女性陣で一人屋敷に残ったヨシュアを相手に遊んでいるか、屋敷の中でボールを追いかけてプープー、バタバタやっているのだろう。
ゆっくりと勇者たちを乗せた馬車が近づいて来る。人垣が邪魔なので、俺たちは少し後ろに下がってそのパレードを見ているのだが、思った通り、パレード用の馬車に乗って手を振る勇者は俺を嵌めた勇者ではないし、勇者の脇に立つ二人の女性も、あの賢者でも聖女でもなかった。本物なのはマリア王女だけだった。
『アスカ、王女以外はみんな偽物だ。どう思う?』
『マスター、あの手を振っている三人は、キルンの冒険者ギルドの受付で新人登録の時、ランクが低すぎるとか言って騒いでいた連中ですよ』
『道理で、どっかで見たようなイケメンだと思った。それでそのイケメンが何で勇者をやってんだ?』
『マスターの話ですと、本物の勇者というのが人前に出せないくらいひどい勇者だからではないでしょうか。それで、こういったパレードや他国への親善のための代役を務めているのでしょう』
『確かに、あれは人前に出せないものな』
おっ、だいぶ近づいてきたな、俺も妙な仕事をさせられる君たちに同情するよ。
「頑張れー! 勇者さまー! 頑張れー。期待してるぞー! 賢者さまー! 聖女さまー! 頑張れー!」
俺が急に大きな声で勇者一行を声援し始めたので、ハート姉妹と四人娘は驚いていたが、すぐに一緒になって声援し始めた。まあ、若い女の子にはイケメンだよね。確かに俺から見てもあの連中には華がある。さすがはマリア王女、人選に狂いはなかったようだ。狂いがあったのは勇者召喚だけだ。
そのうち親善使節団一行が通り過ぎて行ったので、みんなを引き連れて屋敷に帰った。アスカと俺はこのあと王宮で開かれる使節団慰労会に招かれているので、例の礼服に着替えて、サージェントさんが操る箱馬車に乗って王宮に向かった。
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パレードを終え、王宮にたどり着いた勇者親善使節団は、その足で国王主催の慰労会に主役として会場に向かうことになる。マリア王女はいったん影武者勇者たちとは別れ、使節団副団長のネイピアとともに、父親でもある国王の元に無事帰還のあいさつと親善使節団の成功の報告を行っている。
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ここは、慰労会会場。
リリアナ王女が、姉のマリアを待っている。元気になった姿を早く見せようとパーティーの始まる前から会場にやってきて見回すがまだ主賓の勇者一行もマリア王女も当然会場に現れていない。
これまで病弱だったためこのパーティーがリリアナにとって初めてのパーティーだ。リリアナはダンスなど全くできないので、近づいてくる男性を排除するため、侍女が二人ほど付き添っている。
今日は、ショウタとアスカに招待状が届いているはずなので、リリアナは久しぶりに二人に会うのも楽しみにしている。
もしもショウタが自分のところにやって来てダンスを誘ってくれたら侍女に邪魔をしないよう言い含めている。リリアナはダンスはできないが、ショウタなら自分をうまくリードしてくれて自分もなんとか踊れるのではないかと妙な期待と信頼を寄せているのだ。
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アスカと俺は、案内された使節団慰労会会場に来ている。
「ほう、ここが会場か」
王宮で招待状を見せ、係の人に案内されてやってきた慰労会の会場は、王宮の中庭に面した天井の高い大広間で、シャンデリアが何個もきらめき天井には天井画が描かれている。こういう世界もあるんだな。
百人や二百人ではきかない人が既に会場に集まっていた。
「随分広い場所ですね。マスター、おいしそうな料理が並んでますよ」
「料理もいいが、最初にだれか偉い人があいさつかなんかするんじゃないか? 食事に手を出すのは普通その後だろう」
「貴族になった時は、かなり緊張していたマスターが今回はリラックスしていますね」
「そりゃあ、今回の俺は群衆の中の一人だからな。全然違うよ」
「全然違うのなら大丈夫です。冷めないうちにおいしそうなものから食べてしまいましょう」
それでいいのかよ。おまえをガチで止めれるやつはこの世にいないもんな。最初は食べ物の味も知らなかったアスカが進歩したものだ。
アスカはさっさと料理が並ぶテーブルに突撃し、取り皿に山盛りにして料理を食べ始めてしまった。ここは他人の振りか?
「みなさま、わが国との親善を深めるため北方諸国を歴訪していただいていた勇者さま一行が王都に帰還されました。本日はご案内のようにその労をねぎらうための慰労会でございます。まもなく勇者さま一行が会場にお見えになりますので、盛大な拍手でお迎えください」
勇者一行が会場に現れて、大きな拍手が会場にあふれた。一行は奥の方の一段高くなったステージの方に歩いてゆく。
これじゃまるで、結婚式みたいだ。今まで一度も出たことないけど。
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サヤカとモエの二人は自分たちの代役がいることも察していたし、今日王宮の大広間でそういったパーティーが開かれることも知っていた。それについて特に含むこともなく、面倒ごとを引き受けてくれた代役のおかげで王宮で何不自由なく生活できて助かったと思っていた。
「ねえ、サヤカ。あたしたちの代役がどんな人だか見てみない?」
「うーん。あんまり興味ないかな。人は人、自分は自分。こっちにいてもおいしいものも食べられるし別にどうでもいいんじゃん?」
「そういえばそうかも知れないけど、ほんとに気にならない?」
「モエ、そんなに興味があるなら、見にいってくれば?」
「そう。それじゃあ、今から着がえて見にいってくる」
「モエが行くなら、やっぱりあたしも行く」
あまりフラフラ王宮内を出歩いていると、係の侍女がうるさいので、ここぞという時以外おとなしくしている賢者と聖女だったが、今がここぞという時だ。
与えられた王宮の一角からこっそり忍び出て、パーティーが開かれている大広間にやってきた。聖女に祝福された賢者による隠蔽魔法を駆使しての行動である。この二人は、スペックが高い上にちゃんと訓練もこなしているため、今では大抵のことが人並み以上にこなせるようになっている。
柱の陰からのぞいてみると、ちょうど勇者の代役があいさつしているところだった。
「モエ、あたしに目が良く見えるようになる祝福してちょうだい」
「了解。私も自分に」
「「うそ! なに、あの人カッコいいじゃない」」
自分たちも代理勇者一行のパーティーに入りたくなった本物の賢者と聖女だった。




