第138話 コダマ・エンダー邸
新しく雇った面々が集まる前に、あらかじめ購入していたベッドと寝具を各部屋に置いて回り、受け入れの準備は整った。箪笥などは各人の好みで後で買ってもらえばいいだろう。もちろん費用はこちら持ちだ。
昼前までに、みんな集合したので、簡単なあいさつの後、各自に部屋を割り当てて行った。全員が持参した荷物を自室に置いて出てきたところで、
「今日からここで皆さんと一緒に生活することになります。仕事の細かな割り振りは、ハウゼンさんにお任せしますのでよろしくお願いします」
ハウゼンさんがここで一礼した。
「あと、当面の費用としてこれをハウゼンさんに渡しておきますから、食材やら、足りないものがあれば遠慮なく使ってください」
当面の費用として大金貨五十枚の入った袋を渡しておいた。それと、鍵束と魔道具の取説も後で渡しておいた。アスカは取説を手渡した端から目を通して読破してしまいもう不要なのだそうだ。
その後、台所に行って今日の昼みんなと一緒に食べようと思って『ナイツオブダイヤモンド』のレストランで作ってもらった料理と飲み物を収納から取り出し、ハート姉妹に食堂に運んでもらってみんなで昼食をとった。料理人のゴーメイさんがしきりにうなずきながら味を確かめるように食事をしていたのが興味深い。
後で、ゴーメイさんとハート姉妹に棚に片付けてもらうため、キルンで使っていた物と追加で買っておいた料理用具や食器などを台所に取り出し積み上げておく。
食事の後は、さっそくハウゼンさんに割り振られた仕事を各自が始めた。料理人のゴーメイさんはハートの姉妹の姉のミラと台所を片付け、その後足りないものや食材を買い出しに行くそうだ。ハート姉妹の妹のソフィアは残って、家じゅうの拭き掃除をするようだ。
俺たちはシルバーとウーマを連れ戻すため、御者兼馬係のサージェントさんを連れて、西門まで行くことにした。アスカと俺だけなら駆けて行けばすぐだが、サージェントさんがいるので、乗合馬車で西門の先の駅まで行くことになった。
近くの駅で乗合場所を待っていたら、ちょうどやって来た乗合馬車が西門の駅舎行きだったのですぐに乗り込み、四十分ほどで目的地の西門駅に到着した。
三人で馬の預かり所にいき、シルバーとウーマを呼んでもらった。
軽く首を撫でてやり、リンゴを一個ずつ食べさせてやったらしっぽを振っている。馬も犬と同じで、うれしいとしっぽを振るらしい。こっちの方が振り方はゆったりとしてるけどね。
手続きを終え、シルバーとウーマを引き渡されたのだが、騎乗するための馬具がない。あったとしても俺は乗れないけど、アスカとサージェントさんなら乗れただろう。そしたら、俺は歩きで付いて行くのか? 馬曳きの子爵さま。なんか童話にでもなりそうな感じじゃないか。
二頭を歩いて曳いて帰るとだいぶ時間がかかりそうなので、収納していた幌馬車を取り出し二頭をそれにつなぐことにした。長年御者をやっていたサージェントさんがテキパキと二頭を馬車につないで御者席に座り、俺たちは荷台に乗って屋敷に戻ることになった。
途中、サージェントさんに馬車屋に寄ってもらい、四人乗りの新品の箱馬車を購入した。普段はシャーリーの送り迎え用だ。それに二頭をつなぎ替えて、幌馬車は収納した。
サージェントさんは俺が馬車を収納に出し入れするのに最初は驚いていたがすぐに慣れたようだ。
いい時間になってしまったので、アスカと俺は、サージェントさんたちを先に屋敷に帰し、『ナイツオブダイヤモンド』に学校から帰ってくるシャーリーを迎えに行くことにした。
『ナイツオブダイヤモンド』では、俺たちの使っていたスイートに戻り私物を収納していき、最後にシローを抱いて一階のエントランスでシャーリーを待つことにした。シャーリーが帰ってくるのを待つ間、俺は今日でスイートを引き払う旨を支配人さんに伝えて鍵を返したところ、いつでも皆さんで食事に来てくださいと言われた。皆さんがどこまでを指すのか知らないが、必ず来ますと言っておいた。
四時前になって、シャーリーを乗せた馬車が、『ナイツオブダイヤモンド』の車寄せに帰って来たので、いつもの御者の人に事情を話し、俺たち二人と一匹がシャーリーの乗る馬車に同乗して、新しい屋敷に向かってもらった。
屋敷に着いて、御者の人に今日でシャーリーの送り迎えは終ることを伝え、シャーリーともども、今までありがとうございました。といって頭を下げたら恐縮されてしまった。
屋敷の玄関に入ると、新しくうちに雇い入れていた五名が並んで待っており、あいさつの後、ひととおりの自己紹介をして、各自、自分の仕事に戻って行った。
シルバーとウーマは既に厩舎で休んでいるそうで、サージェントさんは二頭にブラシを掛けたりひづめの手入れをしてくるそうだ。
シローは新しいうちが面白いのか、尻尾をブンブン振りながら、シャーリーを引き連れて走り回っている。 そのうち、シャーリーにおねだりしたのか、いつかの魔道具屋で買ったプープー音の鳴るボールを出してもらったらしく、プープー、プープーそこらへんで音を鳴らしていた。
初日の夕食は、ゴーメイさんの力の入った料理で『ナイツオブダイヤモンド』のレストランの味に優るとも劣らないもので非常においしかった。当コダマ、エンダー子爵家では、分け隔てなく、みんなで一緒に食事をとると言っている。
そういうことで、食事の開始は「いただきます」、食べ終われば「ごちそうさま」ということになる。




