第136話 屋敷完成1
来週に、屋敷が完成し引き渡しできると、フォレスタルさんから連絡があった。
遅くなってしまったが、屋敷で働いてもらう人の手配をしなくてはならない。こういったことは商業ギルドのリストギルド長に頼めば何とかなると思い、向かいの商業ギルドにやって来た。
「おはようございます、ショウタさま。おはようございます、アスカさま。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「おはようございます。リストギルド長さんにお願いがありまして、お会いできませんでしょうか?」
「リストに伝えて参りますので、こちらで少々お待ちください」
いつものように二階の応接室に通され、リストさんの来るのをソファーの上で出されたお茶を飲みながら待っていると、それほど待つことなく扉が開いてリストさんが入ってきた。
「おはようございます、ショウタさま。おはようございます、アスカさま」
「おはようございます。リストさん」「おはよう」
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「はい、実はそろそろフォレスタルさんに建ててもらってる屋敷が完成するのですが、屋敷を切り盛りしていく人がいないもので、リストさんにそういった伝手でもあれば、紹介していただきたいんです」
「そうですか。フォレスタルさんから、工事の進捗については、聞いていましたから、そろそろかなと思っていました。あまりでしゃばるのはいけないと思いお知らせしていませんでしたが、こちらでもお二人がお困りになるかもしれないと思いまして、ある程度の人選を行っています。明日の朝にでもこちらにお越しいただければ、お屋敷での働き手の候補をお引き合わせできると思います」
「そうでしたか。いつもありがとうございます。それでは明日うかがわせていただきます」
翌日。
商業ギルドを訪れ、応接室で俺たちの屋敷で働いてもらう人の面接をしている。リストさんが集めてくれたのは六名だが、今日この部屋にいるのは五名。あと一名候補がいるが、事情があり今日ここには来ていないそうで、屋敷の完成後に改めてリストさんが紹介してくれるそうだ。
5名は順に、家令候補のスタン・ハウゼンさん。料理人候補、ハリス・ゴーメイさん、御者兼馬係としてクリス・サージェントさん、そして、メイドにミラ・ハート、ソフィア・ハートの姉妹。
俺としては、自分に人を見る目があるとは思っていないし、信用しているリストさんの勧める人に否はないので、よほど相性が合わないような人ならともかく、普通の人であれば最初から雇うことに決めていた。
家令候補のスタン・ハウゼンさんは、髪に白いものの混ざる初老のおじさんで、今は隠居中。モノクルが似合いそうな渋い人。以前はとある屋敷で家令をしていたそうだ。けっして昔プロレスラーをやっていたわけではないと思う。
料理人候補のハリス・ゴーメイさん、壮年のガタイのいいおじさん。以前は王都のとあるレストランで副料理長をしていたが料理長と料理の味のことでもめて飛び出し、今はこの商業ギルドの食堂で働いているそうだ。
御者兼馬係のクリス・サージェントさん。人の良さそうなおじさん。乗合馬車の御者を長年しているそうだ。
最後にメイド候補のミラ・ハート、ソフィア・ハートの姉妹、姉のミラさんは十八歳、妹のソフィアさんは十五歳。今はとある屋敷でメイドをしているそうだ。
家令候補のスタン・ハウゼンさん以外、現在職に就いているが、もしうちで採用するなら、今の職を辞めてうちに来るそうだ。今の雇い主に対しては、既にリストさんの方から話が通っているので、いつでもうちの方に移っても良いと内諾を得ているらしい。
それじゃあこの人たち一人でもこちらで雇うのを断ったら大ごとだよね。そんなことはしないけど。
うちがそんなに魅力的なのかと聞いたところ、全員にその通りだと言われてしまいびっくりした。曰く、
「エリクシールを作ることのできるこの国随一の錬金術師の二人」
「リリアナ王女殿下をお救いした」
「その若さでAランク冒険者」
「近々陞爵もありうる」
云々。
とにかくアスカと俺は、いま最も王都民の注目を集める存在なんだそうだ。確かにアスカと俺が走っていると注目されてるのが実感できるがそれは多分違う意味だと思うけど。
そういうことなので、全員の採用をその場で決め、屋敷の引き渡しの日の昼頃、その日から住み込みで働く準備をして屋敷の玄関前に集合してもらうことにした。支度金は、給料の三カ月分が相場と言われたので今月分と合わせて四カ月分を俺のギルドにある口座からそれぞれの口座に振り込んでもらうことにした。
来月以降は、前月末日を給料日とし、一カ月分の給料を払い込むことになる。これを忘れるといけないので、商業ギルドにお願いした。普通は手数料がかかるらしいが、うちからは取れないと言って無料サービスとなった。
各人の給料はリストさんのアドバイス通りとした。
人材のあてもでき、一安心して『ナイツオブダイヤモンド』に帰って居間でくつろいでいたら、俺のところに第3騎士団から人が訪ねて来てエントランスにいるそうなので、下りてみたところ、前回の北の砦に行く前、商業ギルドの倉庫で挨拶した第3騎士団の人だった。
なんでも、北の砦をサンドリザードから救ったということで褒賞が出たらしい。すでに商業ギルドの俺の口座に振り込まれているそうだ。
よく聞くと、この人は第3騎士団の団長さんで名前はアルビン・レスターさんというそうだ。
わざわざ団長さんがやって来て教えるようなことでもないだろうにと思って聞いてみたら、騎士団総長のギリガンさんが、下の者に任せず必ず団長自身で行ってくるようにと念を押されたそうだ。
どういうことだかわからないが、最近出費もかさんでいるのでありがたい。報奨金は大金貨で百枚だった。この金額もギリガン総長の強い意志が働いたそうで、破格の金額だったらしい。ラッキー!
ギリガン総長は俺たちにずいぶん気を使ってくれているようだけど何かあるのかな?




