EP 11
専属契約と『ソラト・エクスプレス』の誕生〜次なる舞台は大陸全土〜
カグラの圧倒的な一撃によって、エリート幹部サイラスの野望は完全に打ち砕かれた。
地下帝国ドンガンの広場は、解放の喜びに沸き立っている。
「さて、ルクス。この『返品伝票』と一緒に、不良在庫をゴルド商会の本部へ送り返してやれ」
「かしこまりました。……ふふ、着払いにしておきましょうか」
ルクスが燕尾服の袖を優雅に翻す。彼は気絶したサイラスを粗末な木箱に詰め込むと、ルナに目配せをした。
「ルナ殿、地上にある彼らの前線基地まで、この荷物の『デリバリー』をお願いできますか?」
「お任せあれ! マッハで届けてくるね!」
箱を抱えたルナがピュンッ!と音を置き去りにして消える。数秒後には「お届け完了!」と涼しい顔で戻ってきた。あのサイラスが本部でどんな処罰を受けるのか……想像するだけで最高の『ざまぁ』である。
「ソラト社長……いや、ドンガンの救世主よ」
ドワーフ王が、親方衆を引き連れて俺の前に深く頭を下げた。
「ゴルド商会の支配からワシらを救ってくれたこと、そして何より、ドワーフの魂を揺さぶる極上の『飯』と『酒』を振る舞ってくれたこと……心より感謝する」
「気にすんな。俺は適正な物流を回しただけだ。……で、本題の『商談』に入ろうか」
俺がニヤリと笑うと、ドワーフ王もまた、豪快な笑みを浮かべた。
「ガハハハ! 言うまでもない! 今日この瞬間をもって、我ら地下帝国ドンガンはゴルド商会との一切の取引を打ち切る! 今後の武器、防具、魔導鋼鉄の輸出……ならびに食料の輸入は、すべて『ソラト物流』との専属独占契約とする!」
広場のドワーフたちが「ウオオオォォッ!」と賛同の雄叫びを上げる。
これで、大陸最高の生産拠点が完全に俺の物流網に組み込まれた。ゴルド商会にとって、これは致命傷に近い大打撃となるはずだ。
「そして社長! 私の初仕事、終わったよ!」
ガーネットが鼻の頭に油汚れをつけながら、広場の奥を指差した。
そこにあったのは、上空の移動要塞と空間を繋いでいた『ポータル』……の向こう側に停泊している、俺たちの船の姿だ。
「【神の蔵】の自動加工と、私たちドワーフの『魔導鍛冶技術』をフル稼働させて、社長の船を魔改造しちゃった!」
空間の穴を抜けて上空の船へと移動した俺たちは、その姿を見て息を呑んだ。
木造ベースだった『ソラト号』は、ドワーフ製の魔導鋼鉄によって完全な流線型の装甲艦へと生まれ変わっていたのだ。
「牽引動力だった12頭の雷撃ワイバーンは、船体の内部に新設した『魔導増幅炉』に組み込んで、直接出力をプロペラと推進器に変換するシステムにしたよ! これで天候にも左右されないし、スピードは前の3倍! 装甲はサイラスのパワードスーツに使われてた『絶対防御障壁』の改良版を搭載してる!」
ガーネットが誇らしげに胸を張る。
「名付けて、超高速魔導・輸送船『ソラト・エクスプレス』だよ!」
「……完璧だ。これなら大量の荷物も、仲間も、安全かつ最速で大陸中へ運べる」
俺はピカピカの甲板を踏みしめ、満足げに頷いた。
「ガーネット。最高の船だ。改めて、ソラト物流へようこそ」
「えへへ、よろしくね社長! 私、社長が作る美味しいご飯のためなら、毎日徹夜でメンテしちゃうから!」
ガーネットが俺の手を両手で握ってぶんぶんと振る。
これで、パーティーの陣容も完璧に整った。
社長(物流チート):ソラト
専属執事(暗殺・護衛):ルクス
特装配達員(神速・索敵):ルナ
清掃担当(超火力・殲滅):カグラ
専属技師(武具・船体強化):ガーネット
「ご主人様。どうやら、ゴルド商会の独占は、私たちが思っているよりも早く『破滅』を迎えそうですね」
「……ええ。お掃除の対象が増えるのは、喜ばしいことです。プリンの数も増えますから」
「社長! 私、大陸中の困ってる人に、美味しいご飯をお届けしたいです!」
ルクス、カグラ、ルナも、それぞれの『仕事』へのモチベーションを最高潮に高めていた。
「よし、全員揃ったな」
俺は『ソラト・エクスプレス』の真新しい艦長席(社長席)に腰を下ろし、眼下に広がる広大なマンルシア大陸を見下ろした。
「ゴルド商会は間違いなく、帝国の本軍や、さらなるエリート幹部を差し向けて俺たちを潰しに来る。だが、俺たちの『物流』はもう誰にも止められない」
俺は魔法ポーチ(神の蔵)を軽く叩き、全速前進の指示を出した。
「さあ、行くぞ! 大陸全土の胃袋と市場を、俺たちのメシで完全制圧する!」
『アイアイサー!!』
仲間たちの力強い返事と共に、ソラト・エクスプレスは雷鳴のような推進音を響かせ、西の空から大陸の中央へ向けて飛び立った。
既存の権益を破壊し、全てを『適正価格』と『極上の飯』で塗り替える。元・社畜の物流管理者が挑む、規格外の異世界企業無双。
その本当の戦いは、今、始まったばかりである。




