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第1話 村の崩壊と都市への旅立ち

挿絵(By みてみん)



“ (ペルキエース)が生まれ世界を包む時。(ルミナ)は、生きる者たちの心より立ち上がる ”





村の周りは森で囲まれていた。

というより、広大な森の中に、村が遠くぽつりぽつりと存在している。




シンはそんな、小さな村に住んでいた。


彼は小さい時から、弓で獲物を狩って生きてきた。





それはいつもの一日だった。



シンは狩りで獲物を仕留めた。


獲物の前でしゃがみ、胸元で手を合わせた。



「許してほしい。


 お前の命は、私の家族の命を支える。

その恵みに感謝する。


魂が安らかに森へ還りますように」


彼は祈りを捧げた。





腰に差した短刀で手早く獲物を捌く。


近くには青々としたシダの葉が生えていた。


肉の傷みを遅らせるその葉で肉を包んで、肩から下げていた猟袋にしまった。





「もう昼を過ぎているのか……」


暗い森でふと顔を上げたとき------








突然、空が黒く染まった。



暫くして、かすかに遠くから人の悲鳴が聞こえた。


村のほうからだった。


全力で走った。





村の光景はまるで、この世の終わりのようであった。

いたるところで、既にこと切れた村の人々が倒れている。


家屋に人の気配はない。



「母さん…父さんは無事か?」 


シンは家に向かい駆け出した。




そのとき、子どもを見つけた。 


たしか、名前はミカ…… 医者の娘だった。



彼女は涙を流しながら、倒れている男性に手を当てていた。


男性はミカの父で、もう亡くなっていて……


ミカはそれを受け入れられていないようだった。





シンは叫んでいた。


「おい! お前の父さんはもう……」と。


「くそっ」と自分に対して呟く。


「逃げるぞ!」茫然としているミカの手を引き、走り出した。






ミカと2人で、シンの家まで走った。



家の入口でシンは足を止める。


無意識に握った拳の内側に爪は食い込み、歯はきしんでいた。




(父さん.……母さん……。


……ミカに家の中を見せるな)



「行こう」


ミカに言った。






その時、闇の中から黒いものが現れた。




狼のような姿をしているが……この世のものではない。

そう本能が告げていた。身体からは黒い瘴気が漏れている。



二体は唸り、低く身を沈め、 こちらに近づいてくる。


(ミカがいる。 逃げなければ)


そう頭に流れた刹那、異形は飛びかかってきた!



挿絵(By みてみん)



弓を使う距離では無い。


まず距離をとらなければ。

しかし、この場を離れることはできない。

ミカが背後にいる。



飛びかかってくる牙。

腰に携えていた二振りの短刀を抜き、何とか受け流した。


それは「草を切り分け、仕留めた獲物を解体するため」の道具。

戦闘用の武器ではない。




異形の牙と爪は間髪を容れず繰り出される。

その疾さは山で会う野犬のそれではない。


シンは防ぐだけで精一杯だった。 


…後退はできない…




爪で削られるなか、少しずつ、感覚が芽生えてきた。

…予備動作、重心、そして次の行動。


少しずつ。 シンは異形と同調し始めていた。


それは、普段、狩りをしているときの感覚と似ていた。




極限のなか。

異形の「噛みつく」という思念に、

シンの意識は同調シンクロした。



異形が動き始めるわずか前にシンは動いていた。


動き始めた、異形の首筋を切った。




……..しかし。

戦いは独りで行う、いつもの「狩り」ではなかった。


守らなければならない者が、背後にいた。


「まずい...!」


もう一帯の異形の牙がミカに届く.....その時だった。







「きゃぁぁぁぁぁ」


叫び声と共に、一つの影が飛び込んできて、

ミカを襲う異形の頭をはたきつぶした。


それは村の孤児院で子供の世話をする「カレン」だった。




「…あいつは……カレン? …なにを…持っている?」


シンが口にした瞬間。






「嫌ぁぁぁ」


カレンは叫びながら、シンに向かって走り出した。





「ちょ...! 待てよ!」


言った次の瞬間.....


意識が無くなった。





挿絵(By みてみん)





……どれくらい時間がたったのか、シンは目を覚ました。


心配そうなミカとカレンの顔が見えた。





シンが首を切って倒した異形が背後で立ち上がり、


彼を狙っていたところをカレンに助けられた……らしい。



村の被害はひどいものだった。





古からの預言にはこうあった。


「闇が生まれ世界を包む時。


光は、生きる者たちの心より立ち上がるであろう。


光は闇に奪われしものを、再び地上へと還す」





奪われしものを、再び地上へと還すなら、失われた家族も蘇るのか……?


……死んだ者は大地に還る。


それが理だ。



それでも――心のどこかで。 わずかな希望が胸に灯る。


そして、村を襲った災いの正体を明手がかりを求めて、都市を目指す。



三人は森へ踏み出した。


闇に覆われた世界の中で、かすかな光を探すために。



挿絵(By みてみん)

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