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第99話:商人ギルドで煮込まれた魔牛の泥沼(大阪環状線・どて焼き丼)

 京都にて肉を一切使わない美しい草食の結界(衣笠丼)を討伐し、白き防壁(ご飯)の持つ無限の包容力を確信した私は、再び商人ギルド『JR西日本』の最大拠点である迷宮都市・大阪へと戻ってきていた。

「フスッ……。同じ大阪でも、キタ(梅田)やミナミ(難波)とはまた違う、さらに深く混沌とした魔力が渦巻く地下層……『新世界』エリアか」

 大阪環状線(新今宮駅周辺)から広がるこのディープな区画には、労働者(冒険者)たちの疲れを強引に癒やすための、安価で極めて強力なバフ魔法が密集している。

「むっ……! どこからともなく、甘く、そして獣の脂が焦げたような信じられないほど濃厚な魔力臭が漂ってくるぞ!」


 匂いの発生源(小さな立ち飲みギルド)へと顔を出すと、店先には巨大な鉄の鍋(魔導炉)が鎮座しており、その中でドロドロとした白褐色の泥沼が『ボコッ、ボコッ』と不気味な産声を上げていた。

「おおおっ……! これは、魔獣(牛)の筋繊維とコンニャクを、大量の白味噌(大豆の呪術液)で限界まで煮込んでいるのか!」

 これこそが、大阪の誇る最強のB級酒場魔法……『どて焼き』である。

 私は錬金術師(店主)に向かって、銀貨(少額のコイン)を差し出しながら叫んだ。

「オーダーだ! その煮えたぎる魔牛の泥沼を、真っ白なご飯(大地の防壁)の上に直接ぶちまけた、究極の汚染結界……『どて焼き丼』にして私に供せよッ!」


「へいよっ、どて丼一丁!」

 私の目の前に召喚された小さな箱庭には、すでに凄惨な『魔法領域の汚染』が広がっていた。

「フハハハッ! 見ろ、この圧倒的な侵食スピードを! 白味噌の超濃厚なソースが、下に敷かれた純白のご飯の防壁を一瞬にしてドロドロの茶褐色へと染め上げているぞ!」

 ラーメンのスープとは違い、どて焼きの汁は極限まで煮詰まった『ペースト状のスライム』に近い。

 それが熱々のご飯と絡み合うことで、単なるどんぶりが『牛の旨味を吸い切った重厚な泥沼』へと変異を遂げていた。

「いざ、実食ッ!」

 私は魔術スティック(箸)で、ご飯ごと泥沼を大きく抉り取り、そのまま口へと放り込んだ。


「……ンンンッ!! ガァァァァッ!!!」

「あ、甘いッ! そして尋常じゃないほどのコク(重魔力)だ!」

 白味噌特有の甘さと、牛スジから溶け出した圧倒的な動物性のゼラチン質(コラーゲンによる回復魔法)が、ご飯という完璧なキャンバスの上で大爆発を起こしている。

「そしてこの魔牛のアキレス! 本来ならば強靭な物理装甲(筋繊維)であるはずなのに、長時間煮込まれたことで防御力が完全にゼロの『プルプルのゼリー』へと成り下がっているぞ!」

 噛む必要すらない。

 牛スジは舌に触れた瞬間にトロリと溶け出し、濃厚な白味噌の甘みと共に、ご飯のひと粒ひと粒を完璧にコーティングしていく。


「トロトロの魔筋肉(牛スジ)と泥沼(白味噌)の中で、唯一の『物理的な抵抗レジスト』を見せるのが、この四角い壁……『コンニャク(岩スライム)』だな!」

 ムギュッ! グニィッ!

 溶けきった具材の中で、全く歯ごたえを失わないコンニャクの弾力が、単調になりがちな甘い泥沼の攻略に強烈なアクセントを与えてくる。

「さらにここに……七味唐辛子(炎属性の追加バフ)を振りかけるッ!」

 甘い白味噌の世界に、ピリッとした赤い炎の粒子が舞い散る。

「フスッ……! 完璧だ。火属性の刺激によって、さらに白飯の防壁の消費スピードが倍増したぞ。これはもはや、食事という名の『飲む回復魔法』だ!」


 私は完全に理性を失い、茶色く染まったご飯と牛のゼラチン質を、ただひたすらに喉の奥へと流し込み続けた。

「……ふぅっ、ハァッ。恐ろしい泥沼の結界であった」

 空っぽになった丼を見つめながら、私は額に浮かんだ玉の汗(デトックス効果)を拭い去った。

「これほど暴力的な甘さと旨味を直接受け止め、自らの身を汚染させながらも全てをまとめ上げる……。やはり『ご飯』という土台の下敷きがあってこその、箱庭宇宙どんぶりだな!」

 新世界のディープなマナを全身に浴びてHPを全回復させた私は、次なる箱庭結界を求めて、再び西の貿易港……神戸の地を目指して歩み始めるのであった。


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