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第79話:大地を穿つ木属性の槍(嵯峨野線・京たけのこと若竹煮)

 丹波の地で猛獣と菌糸の王(猪と松茸)を討伐し、強烈な大地のマナを体内に取り込んだ私。

 次なる山の幸(深緑のギルド食材)を求めて乗り込んだのは、京都駅から西へと力強く伸びる緑色の魔導路線……『嵯峨野線(山陰本線)』である。

「フスッ……。美しい嵐山の風景を抜けた直後、列車は突如として切り立った渓谷(保津峡)のダンジョンへと突入したぞ。眼下には荒れ狂う水流、そして周囲は無限に続く青木(竹林)の結界だ」

 私が目指すのは、この古都・京都の深い竹林の地中深くで、まさに今、爆発的な生命力を持って急成長しようとしている『恐るべき木属性の魔獣(植物)』である。

「商人ギルドの古文書によれば、その植物は『大地を穿うがつ木属性の槍』と呼ばれ、放置すればわずか数十日で天を突くほどの巨大な大樹(竹)へと変貌を遂げるという」


 亀岡へと抜ける盆地の入り口付近で列車を降りた私は、事前にコンタクトを取っていた熟練の農夫ギルド(竹林農家)のもとを訪ねた。

「ここだ。足元を見てみろ、勇者よ。大地がわずかに隆起して、ひび割れているだろう?」

「……ッ! 本当だ。ここから、あの強大な木属性のタケノコが地上に向かって突き出してこようとしているのか!」

 老練なる農夫ギルドマスターは、特殊な形状をした鉄の魔女のホリを使い、地表に一切姿を見せていないその槍の根元を、神業のようなスピードで見事な一撃と共に掘り起こした。

「太陽の光(光属性魔法)を浴びた瞬間、この魔獣は皮(装甲)を硬質化させ、強烈なエグみ(毒素のデバフ)を発生させる。だから、こうして夜明け前の完全に地中に埋まっている段階で討ち取らねばならないのだ」

「フハハハッ! 完全なる暗殺行動(朝掘り)! なんというシビアで鮮やかな討伐条件だ!」


 その日の昼。私は討ち取ったばかりの『京たけのこ』を自らの胃袋へと封印するべく、地元のギルド酒場(おばんざい屋)に陣取っていた。

 目の前に召喚されたのは、黄金色に輝く透明な聖水(極上の出汁)の中で煮込まれた、分厚い半月状の物体……『若竹煮わかたけに』であった。

「……見事だ。あんなにも泥だらけで何枚もの硬い皮(強化装甲)で覆われていた木属性の槍が、すべて脱がされ、これほどまでに美しい象牙色アイボリーの裸体となるなんて!」

 器の中では、山の精霊である『タケノコ』と、海の魔獣が残した緑の薄絹……『ワカメ』が見事に共演を果たしていた。

「海の幸と山の幸による、異属性の強力なフュージョン(融合)魔法! これこそが、京都の料理人ギルドが誇る『出会いもの』という究極の陣形か!」


 私は魔術スティック(箸)を用い、まずは槍の先端部分(穂先)を静かに摘み上げ、口内へと運び込んだ。

「……ンンッ!! 溶けたッ!?」

 植物の茎を噛んだというのに、不快な繊維質による物理的な抵抗は一切なかった。歯が触れただけでホロリと崩のようれ落ちる圧倒的な『柔らかさ(軟装甲)』。

 そして次の瞬間、大地の深い甘みと、春の息吹を感じさせる爽やかな生命力マナが、京出汁の上品な旨味と共にジュワァァァッと口いっぱいに溢れ出したのだ。

「バカな……! 太陽の光を浴びさせていないというだけで、植物がこれほどまでにエグみ(毒素)を完全に抑え込み、純粋な甘みだけを増幅させているというのか!」

 驚愕した私は、すぐさま槍の根本(根元に近い部分)にも激しく噛み付いた。

「……シャキッ! サク、サクッ!」

「おおおっ!! 今度は見事な物理カウンター(小気味よい歯ごたえ)が返ってきたぞ!」


 穂先の『究極の柔らかさ』と、根元の『完璧なクリティカルヒット(歯ごたえ)』。

 一本の木属性のタケノコの中に、これほどまでに多彩な物理ギミックが隠されているとは。

「フハハハッ! しかもそこに、ワカメからの海属性ドロップ(ミネラルの旨味)が合わさり、私に無限の回復力(食欲増進バフ)を与えてくる!」

 若竹煮の魔法陣形をあっという間に粉砕した私のもとへ、次なる強敵……『タケノコの天ぷら』が熱い油のオーラを纏って登場した。

「油という黄金の防壁(衣)によって、タケノコ自体の持つ繊細なマナ(瑞々しさ)がその内部に完全に閉じ込められている!」

 塩(岩塩の魔力粉)を軽く振りかけ、火傷も辞さずに熱々の天ぷらを一気に噛み割る。

 パリッ!という衣の乾いた音の後、口の中でホクホクとした大地の甘みが大爆発を起こした。


「美味い……! 出汁に漬け込まれた若竹煮とはまた違い、油と熱魔法で純粋なタケノコのステータス(甘さ)を物理限界まで引き出しているッ!」

 私は次々と天ぷらを胃袋へと強制転送し、春の息吹(山のマナ)を全身の細胞に無駄なく染み渡らせた。

 大皿を完全に空にし、緑茶(回復のハーブティー)を飲み干した私の全身は、今まさに土の中から芽吹かんとするタケノコのような、強烈な活気と生命力に満ち溢れていた。

「……ふぅっ。見事な生命力(春の訪れ)であった」

 大地を穿つ強烈なパワーを持つ木属性のタケノコは、私の胃袋の中で見事に解呪され、圧倒的なレベルアップ(ステータス・バフ)を果たしてくれた。

「山の幸……やはり海とは一味も二味も違う底知れなさがあるな! さあ、次はさらに深い山奥へと踏み込み、過酷な雪解けの魔法薬草を回収ハントしに行くぞ!」

 私は充実感と共に嵯峨野線の魔導列車へと再び乗り込み、輝く春の陽光の下を力強く歩みだすのであった。


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