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第64話:異国魔導士が創りし巨大幻影結界(ゆめ咲線・USJとターキーレッグ)

 これまでの伝承食を巡る深く静かな討伐旅を終えた私が、今回新たに足を踏み入れたのは、少し趣向を変えた『祝祭と喧騒の空間』である。

「フスッ……。美味なる魔獣(歴史あるご当地グルメ)を腰を据えて静かに狩るのも良いが、たまには商人ギルド『JR西日本』が誇る、巨大な催事イベントやテーマパークの数々を視察し、その非日常のオーラを全身で浴びるのも悪くない」

 私がやってきたのは、西の魔導王都・大阪。そこからオレンジ色の特別装甲特急(大阪環状線)を経由し、ゆめ咲線へとスムーズに乗り継いだ先にある『ユニバーサルシティ駅』だ。

「……見えてきたな。あれが、はるか海の向こうの異国からやってきたという超一流の錬金術師たち(ハリウッドの魔法使いやクリエイター)が築き上げた、無敵の巨大幻影都市かッ!」

 改札を抜けた瞬間に押し寄せる、色鮮やかなネオンと底抜けに陽気な音楽。行き交う人々は顔に極彩色の呪紋ペイントやシールを施し、頭には謎の魔獣たち(キャラクターの耳や帽子)の被り物を堂々と装備している。


 この巨大幻影結界(世界屈指のテーマパーク)の名は、『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』。

 入口で回転する巨大な地球儀(ワールドマップの立体投影アーティファクト)を横目に、私はメインゲートを堂々とくぐり抜けた。

「……むう! なんという異常なマナの密度だ!」

 一歩足を踏み入れれば、そこはアメリカの古い街並み(異界の建造物群)が完璧なスケールで再現されており、さらに奥へ進めば本物の魔法使いが杖を振るう城や、凶悪な古代竜(恐竜)が暴れ回る危険地帯が平然と繋がって存在している。

「フハハハッ! ただの幻影(作り物のアトラクション)だと侮っていたが、これほどまでに強固な物理結界と圧倒的な視覚操作を敷き詰め、具現化しているとは! この空間にいるだけで、常人の精神力ならばパニック(魅了や極度の興奮バフ)に陥って正気を失うぞ!」

 私は、周囲から絶え間なく押し寄せる熱狂的なオーラに当てられ、入場開始わずか数十分にして激しい体力の消耗(MPの不可逆的減少)を感じていた。


「……くッ。なんという過酷なダンジョン(広大すぎる超人気テーマパーク)だ。ただ歩いているだけなのに、空間の魔法密度(尋常ではない人混みと熱気)が私のHPをガリガリといとも簡単に削り取っていく」

 魔法学校の城の威容を眺め、古代竜のすさまじい咆哮を浴び、絶叫とともに落ちていく鉄のトロッコ(ジェットコースター)を見上げた私は、完全にステータスが赤点滅(空腹と脚の疲労)に陥っていた。

「休まねば……いや、何か強力な物理ブースト(肉系の回復アイテム)を腹の奥に詰め込まねば、この無慈悲な幻影結界の深部を踏破することは不可能だ!」

 そう直感した私の鼻腔を、不意に猛烈な『焦げた獣の匂い(スモーク臭)』が突き抜けた。

「……なんだ? この強烈に食欲をそそる匂いは……!」

 匂いの元を辿ると、路地の片隅にある小さな売店(補給用のテント木箱のようなフードカート)の前に、無数の腹を空かせた冒険者たちが列をなして並んでいる。

 そして皆、一様に『巨大な骨付きの肉塊』を片手に持ち、野生のオーク(獣)のように無心で喰らいついているではないか。


「……ほう! これほどの驚異的で高度な魔法文明都市の中にありながら、小腹を満たすためにはあえて原始的で暴力的な回復アイテム(極太の骨付き肉)を提供しているのか!」

 私は銀貨を数枚支払い、その熱く巨大な肉塊……遊園地名物『スモーク・ターキーレッグ』を素早く召喚した。

「フスッ、フハハハッ! 見事なサイズ感だ! これは明らかに、そこら辺の軟弱な野鳥ではない。獰猛に発達した巨大な怪鳥(コカトリスの超強化亜種)の脚の肉ッ!」

 箸やフォーク(貴族の軟弱な魔術具)など一切付属していない。ただ極太の骨の端を無骨な紙(火傷防止の呪符)で掴み、そのまま口の中へと直接噛みちぎれという、極めて野蛮なスタイル。

「上等だ! この人間の理性を狂わせる幻影空間テーマパークを無事に生き抜くには、この最も原始的な物理バフこそが最適解だ!」

 私は、周囲の煌びやかな景色に背を向け、飢えた獣のようにターキーレッグへと力強く喰らいついた。


「……ガアァッ!! ブチブチッ、ムギュッ!」

 太い骨から分厚い肉を力任せに引き剥がすたびに、強力な燻製の香り(スモーク還元魔法)と、ギッシリと凝縮された怪鳥のダイレクトな旨味(ワイルドな塩分と脂)が口の中にドカンと爆発する。

「たまらんッ! 繊細な和食(湯豆腐や料亭のおばんざい)のように静かに染み渡る回復効果ではないッ。これは物理的に殴られた箇所に直接肉の塊を押し当てて無理やり治癒させるような、強引で圧倒的な極大HPブーストだ!」

 歩きながら肉を噛み裂き、嚥下し、また次の一口を大きく齧り取る。

「私の内なる闘争本能(古のオークの血脈)が、いま完全に目覚めていく! 魔法使いの杖や恐竜の鋭い牙など恐るるに足らん! 今の私は、この強大な怪鳥の肉を喰らった完全なる野性の狂戦士バーサーカーだッ!」

 私は手からポタポタと滴る肉汁(マナの熱き残滓)も気にせず、ただひたすらに巨大な骨付き肉を骨の髄までしゃぶり尽くした。


「……ふぅっ、ハァッ! 完全なる討伐(文句なしの完食)であった」

 太い巨大な骨だけが残された紙包みをゴミ箱(ギルドの指定回収箱)へと乱暴に放り込み、私はパンパンに張った胃袋をさすりながら大きく伸びをした。

 空腹と疲労に蝕まれていた私のステータスは一瞬にして完全にカンストし、目からはギラギラとした危険な闘気が溢れ出している。

「商人ギルド『JR西日本』と異国の超一流錬金術師たちが手を組んで生み出した、この極彩色の魔境……USJ。これほどの巨大な規模の非日常(祝祭エンターテインメント)を体験させるとはな」

 私は、自らの足で次なる別のアトラクション(絶叫系試練の迷宮)へと向けて、力強く足を踏み出した。

「フハハハッ! 地味にご当地グルメを探すだけが旅ではない。たまにはこうして、狂ったような祝祭の空間そのものを全身で楽しみ尽くすことこそが、番外編の真の目的だ!」

 私は怪鳥の脂がテカテカと残る口元を乱暴に拭いながら、さらに続く西日本のイベント魔境へと熱い想いを馳せるのであった。


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