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第50話:瑠璃色の夜行竜と終わらない夜の宴(WEST EXPRESS 銀河)

 商人ギルド『JR西日本』が展開する超広域の移動魔法網(路線網)。

 これまでに特急というスピードに特化した兵器群を乗り継ぎ、数々の辺境グルメを討ち果たしてきた私だが、いよいよこの第8部から『全く新しい次元の戦い』へと足を踏み入れることとなった。

「フスッ……。ただ目的地へ向かうためだけの『輸送魔法』ではない。乗車中の時間そのものを最大の『バフ(ステータス向上)』に変換するという、特異クラスの魔導車両(観光列車・ジョイフルトレイン)の群れかッ!」

 私がやってきたのは、夜のとばりが完全に降りた古の王都……『京都』の大結界ターミナルである。

 ホームの端で静かに待つ私の眼前に、闇夜を滑るようにして、一際異彩を放つ長大な鉄の獣が音もなく近づいてきた。

「……ほう! なんと美しい装甲だ。深い瑠璃るり色に輝くボディライン……これこそが、夜を統べる伝説の竜『WEST EXPRESS 銀河』か!」

 この夜行特急は、単なる寝台列車ではない。

 特別な乗客(選ばれし勇者たち)のみに乗車を許された、完全なる『移動式・超回復の結界モバイル・サンクチュアリ』なのだ。


「プシューッ……」

 瑠璃色の竜の体側ドアが開き、私は恭しく内部へと招き入れられた。

「……なんと。ここは本当に列車の中なのか?」

 車内に足を踏み入れた瞬間、私は目を見開いた。

 通路を彩る優雅な間接照明、温かみのある幾何学模様の装飾、そして個室や広々としたクシェット(簡易寝台)という名の豪華な天幕(休眠テント)の数々。

 だが、私が最も戦慄したのは、編成の中心部にいくつも鎮座する『フリースペース(遊星や明星と呼ばれる広大なラウンジ車)』の存在だった。

「バカな……! 走行中の装甲車内に、これほど広大でゆったりとした『ギルド酒場バー・ラウンジ』が存在するだと!? これでは移動手段ではなく、ただの巨大な宴会場ではないか!」

 そう、WEST EXPRESS 銀河は、乗客全員がただ寝静まるだけの単調な夜行儀式ではない。

 夜通し酒を酌み交わし、車窓を眺め、沿線の特産品(魔力結晶)を消費し続けるための、終わらない星空のナイト・パーティー会場なのだ。


 京都駅を出発した瑠璃色の夜行竜は、闇夜の山陰方面へと向けて静かに動き出した。

「さて。この超回復・移動結界(銀河)の真骨頂は、ここから先の『専属の魔法提供(深夜の配給バフ)』にある」

 深夜特急とはいえ、私の腹の虫(闘争本能)は静まることを知らない。

 私がフリースペース『遊星』の広大なテーブル陣地に陣取ると、ほどなくして沿線の有力ギルドから特別に積み込まれた魅惑のポーションボックス(特製弁当など)が展開された。

「……見事だ。これまで討伐してきた、猛烈な脂と炭水化物による物理的な暴力(B級グルメ)とは、明らかにオーラ(品格)が違う!」

 それは、色彩豊かに盛り付けられた沿線の特産品、出汁の効いた繊細な煮物から極上の肉料理までが詰め込まれた、王族・貴族階級専用の特級エリクサー(特別和洋弁当)であった。

 激しい直火の火力ではなく、時間をかけて繊細に行われる抽出魔法(マナの煮出し)が、その小さな箱の中に満ち溢れている。


 私は魔術スティック(割り箸)を手に取り、漆塗りのような輝きを放つ箱の中の極上アイテム(特製おばんざいや肉の旨煮)を一つ、ゆっくりと口へと運んだ。

「……ンンッ! 美味い……! なんだこの深みのある優雅な味はッ!」

 舌の上でふわりと弾けるのは、ガツンとくる痛覚のような塩分や激しい油の直撃ダメージではない。

 じわり、じわりと全身の血管(魔力回路)のすみずみまで、静かにそして確実に浸透していく『上位の継続回復魔法(高度なリジェネ)』だ。

 車体のわずかな揺れ(夜行竜の心地よい呼吸)に合わせて、極上の和出汁の香りが鼻腔をくすぐり抜けていく。

「フハハハッ! これは良い。闘争本能を無理にぶち上げるのではなく、精神の奥底から一切の疲労を取り除く完全な浄化の味だ」

 私は、窓の外の漆黒の闇夜(未知のフィールド)を眺めながら、ただひたすらに心地よく、そして貪欲に、貴族の弁当(高級バフ・アイテム)を口へと運び続けた。


 極上のバフ・エリクサー(特製弁当)で腹を満たした私の次なる狙いは、同じくラウンジ内に用意された(持ち込んだ)沿線の霊薬……すなわち『地酒』だ。

「……フスッ、フススッ。やはりこの移動する酒場ラウンジで、他の古参冒険者(乗客たち)が静かにグラスを傾けている空間そのものが、最強の付与魔法ロケーション・バフだな」

 私は、沿線地域の希少なマナから醸造されたという純米大吟醸(最上位の青きポーション)の小瓶を開け、小さな魔導杯(猪口)へとトクトクと注ぎ込んだ。

 そして、それを一気に口内へと流し込む。

「……カァァァッ! 五臓六腑の奥の奥まで完全に染み渡るッ!」

 日本酒の華やかな青リンゴのような香りと、夜行列車の不規則なジョイント音が奏でる最高のBGM。

 この瑠璃色の竜の体内では、通常の時間経過タイムリミットという概念が完全に曖昧になり、どこまでも永遠に贅沢な宴(まったりとした夜汽車旅)が続くような絶対的な安心感に包まれていた。


「……ふぅっ。素晴らしき魔の夜だった」

 夜通し続いた特急車内の大人の宴と、極上のクシェット(豪華な天幕)で得られた深い眠り(超・睡眠バフ)を経て。

 列車が朝靄あさもやの向こうに雄大な山陰の海(新たなる強大なフィールド)を映し出した頃。

 私は、完全にHPとMP(体力と気力)をカンストレベルまで限界突破させ、まばゆい朝日を浴びていた。

「フハハハッ! 商人ギルド『JR西日本』よ。この観光列車という『乗ること自体が目的の特殊な結界』……これほどまでに深い沼(底なしの最高のおもてなし)だったとはな!」

 胃袋には極上の地酒と食事の余韻が心地よく残り、肉体には長旅特有の疲労感など一切存在しない。

 移動そのものを超高火力の回復魔法へと転換してしまう、恐るべき設計思想だ。

「この強力無比な回復結界が存在する限り、私の討伐の旅(グルメ遠征)はどこまでも永遠に続けられるというわけだ!」

 清々しい朝の光の中、私は次なる強大な宴(観光列車の群れ)が待つという未知なる魔境へ向け、意気揚々と瑠璃色の竜の背中を降りるのであった。

(第50話 了)


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