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第48話:迷宮深層の業火と獣の祭典(大阪環状線・鶴橋焼肉)

「……帰ってきたぞ。西日本最大の結界都市(巨大ターミナル)、大阪へな」

 これまでに西は山口、東は滋賀、そして南は和歌山と、強大な特急魔導兵器を乗り継いで西日本一帯の辺境を制圧してきた私だが、いよいよこの第7部も佳境を迎えていた。

 だが、私が向かうのは、華やかなキタやミナミの表通りなどの一般的な安全地帯ではない。

 商人ギルド『JR西日本』が誇る、結界都市の心臓部をぐるりと囲い込む巨大な魔法円……『大阪環状線』へ乗り込み、私はある特別な『深層』を目指していた。

「プシューッ……」

 鉄獣の扉が開いた瞬間、私の鼻腔を、文字通り凄まじい匂いが殴りつけた。

「……ッ!! な、なんだこの駅は!? ホームに降り立った瞬間から、分厚いスモークスクリーンと、獣の肉が焼ける強烈な匂い(焦熱のオーラ)が充満しているではないかッ!」

 そこは『鶴橋つるはし』。

 駅の周辺一帯が、全て焼肉屋やキムチ専門店という密度の濃いギルド群で形成された、文字通りの『焼肉迷宮(肉と炎のダンジョン)』の入り口であった。


 薄暗い高架下から、細く入り組んだ路地(ダンジョンの通路)へと足を踏み入れると、そこは完全に『別の次元』だった。

「凄まじい魔力密度(煙の充満具合)だ。通りを歩いているだけで、衣服に一生消えない呪毒(焼肉の匂い)が完全に定着していくのがわかるぞ……」

 だが、その煙の奥底には、確実に腹の虫(闘争本能)を狂わせる極上の肉の香ばしさが潜んでいた。

 私は、軒を連ねる無数の店の中から、一際激しく業火(直火)を吹き上げ、男たちの怒号と笑い声が交錯する老舗の肉工房(焼肉店)を選び出し、強行突入を果たした。

「……フスッ。見ろ、各テーブルに鎮座するあの鉄の網(火あぶりの刑具)と、その下で赤々と燃え盛る魔導炉を」

 ここは、料理人が調理を済ませて配膳するレストラン(安全地帯)ではない。

 客自らが魔獣の肉を火に焚べ、最適なタイミング(HP減少)を見計らって一気に引きずり出し喰らうという、完全なる『実戦フィールド(セルフ調理式)』なのだ。


「ハラミ、ホルモン、カルビ……。この迷宮深層の凶悪なモンスター(肉)どもを、全て大盛りで持ってこいッ!」

 店員(練達の魔物ハンター)にオーダーを通すと、ほどなくして真っ赤な炎が煌々と燃えるロースターが眼の前に立ち上げられた。

 そして――ドンッ!

「……ほう! 見事なまでに切り刻まれた魔獣どもだ」

 銀のトレイに乗って現れたのは、美しくサシの入ったピンク色のカルビ、分厚く切り出されたハラミ、そしてプリプリと謎の生命力(白い脂)を放つテッチャン(ホルモン)。

 だが、何より私の目を引いたのは、それらの肉の上からもみ込むようにドロリとかけられた『秘伝のタレ(漆黒の暗黒ポーション)』である。

 醤油、ニンニク、ごま油、そして店秘伝の隠し味(秘術)が限界まで混ぜ込まれたそのタレは、焼く前からすでに強烈な魔力(食欲)を放っている。

「フハハハッ! 銀のトング(捕獲用の魔晄具)は私が握ろう。さあ、火祭り(バーベキュー)の開宴だ!」


「焼き尽くせッ、我が業火ロースターよ!!」

 私は、タレにまみれた分厚いハラミとカルビをトングで挟み、容赦なく真っ赤な網の上へと叩きつけた。

 ジジュウウウウゥゥゥッッ!!!

 肉が網に触れた瞬間、猛烈な悲鳴(脂が弾ける音)とともに、炎柱フレイムピラーがロースターから高く吹き上がった。

「……素晴らしい! 肉の脂(体力)が炎の魔力と接触し、極上のスモーク(燻煙効果)を生み出しているぞ!」

 網の上で、肉の表面のタレが焼け焦げ、甘く危険なキャラメリゼの香りが周囲を完全に支配する。

「今の私に必要なのは、魔導士としての冷静な判断力だ。焦がしすぎず(オーバーキル)、生焼け(毒属性の残存)も避ける。表面のタレがフツフツと泡立ち、肉汁が網の下へと滲み出たその『刹那クリティカル・ポイント』を狙い澄ますのだ!」

 よし、今だ!

 私は完全に焼き上がってテカテカと輝くハラミを、トングで乱暴にもぎ取った。


「だが、そのまま喰らうのは三流の戦士だ! 鶴橋の焼肉とは、この『追いタレ(二重の暗黒バフ)』につけて、米と一緒に喰らってこそ完成する!」

 私は、網から引き上げた熱々のハラミを、小皿に入った冷たいサラサラのつけダレの海にくぐらせ、ジュッと油の熱を鎮火させた。

 そして、そのタレの滴る肉片を、左手に構えた巨大な純白の台座(大盛りの白米)の上に、ドスンッ!と叩きつける(バウンド・バフ付与)。

「フハハハッ! 白米よ、肉の脂とタレの魔力をその身に深く刻み込めッ!」

 そして、肉とタレの染みた飯を同時に口内へと放り込む。

「〜〜〜ッッ!! ゴハァッ!!」

 美味い。あまりにも美味すぎる。

 直火で炙られた香ばしいもみダレの焦げと、肉の中からジュワッと溢れ出す獣の強烈な旨味。それが、つけダレの酸味と白米の絶対的な甘みと完全に融合し、私の脳髄(前頭葉)を一瞬にして粉砕した。

 肉、飯、肉、ホルモン、飯――。

 たまに合間に挟むキムチ(紅蓮の回復草)の強烈な酸味と辛味(ディスペル魔法)が、無限の食欲ループをさらに恐ろしい速度へと加速させる。


「フスッ……、ハァッ……ハァッ……!」

 トングを握る右手の握力が尽きるまで、私はひたすらに肉を焼き、白米をかっ込み、真っ赤なキムチで味覚をリセットする狂気の作業(ダンジョン周回)を繰り返した。

 カルビ、ハラミ、プリプリのホルモン……召喚した全ての魔獣は私の胃袋(完全な暗黒空間)へと跡形もなく消え去り、網の上にはただ静かに燃え尽きようとする炭火(魔導炉の残り火)だけが残されていた。

「……むう。さすがの大結界都市の迷宮深層(大阪鶴橋の焼肉)だ。これまでにないほどの圧倒的な物理カロリーと油分、そして炭水化物の暴力……。我が兵士としてのHPもMPも、完全に限界突破ステータス・カンストしてしまったぞ」

 全身から濃厚な焼肉の匂い(最強のオーラ)を誇らしげに放ちながら、私は店員に銀貨と金貨(数千円)を支払い、路地裏の煙る迷宮へと出た。

「大阪の裏側には、これほどまでに熱く、狂おしい夜の魔境が広がっていたとはな……」

 結界都市の夜風が、火照った私の身体を優しく撫でる。

 いよいよ、この果てしない特急を使った西日本制圧の旅にも、終わり(総括)の時が近づいていた。

 私は、胃袋の奥底で燃え盛る獣の闘志と旨味を感じながら、大阪のネオンの海へとゆっくりと消えていくのであった。

(第48話 了)


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