4-16. 重なり合う金属籠手と騎士剣
約3,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
ジュイオの振るう大剣を躱したリッドとオティアンは、まずリッドを先に立たせる陣形を取る。
「いくぞ! 閃掌底!」
ジュイオが大剣を振り終わるまでに、彼の懐へ飛び込んだリッドが最速の一手を放つも、互いの金属籠手がぶつかり合うように払われて不発に終わった。
しかし、打ち損ねたと見るや、リッドはすぐさま後ろへ回り込むように回避行動を取り、続けざまにオティアンが間合いを詰めずに魔法剣を伸長して斬り上げる。
「ずえええええいっ!」
「無駄だ!」
既に切り返しざまに薙ぎ払いへと変えたジュイオの剣筋がオティアンの魔法剣を弾いた。
その直後にジュイオの薙ぎ払いが回転斬りへと変貌してリッドに襲い掛かるが、間髪のところでリッドが倒れるように床へと転げ回ってやり過ごす。
「土龍突脚!」
ジュイオとリッドの目が合った瞬間に、リッドは両腕でぐっと床を押して起き上がる勢いのまま蹴りを繰り出した。
しかし、ジュイオもまた大きく腿を上げたかと思えば、そのまま足を落としてリッドを踏みつける。
「でやあああああっ!」
リッドの分が悪いと即時に判断したオティアンが、ジュイオの頭部を目掛けて突き攻撃を放つ。
魔法剣は虚空を突いただけに終わったものの、ジュイオのバランスを崩させてリッドへの攻撃を中断することに成功した。
リッドは再びぐっと腕に力を込めて起き上がり、数度跳ねてからジュイオの脇腹目掛けて足刀を繰り出す。
「はあっ!」
リッドの足刀は脇腹を確実に捉えたが、既に体勢を立て直して踏ん張るジュイオの身体を吹き飛ばすことが叶わずに動きが止まってしまう。
「やあああああっ!」
オティアンが注意を引くために大上段から振り下ろすと、ジュイオがそれに反応して大剣を振って魔法剣を弾く。
「狼牙掌!」
再び空いたジュイオの脇腹に、リッドがオティアンの鎧をひしゃげさせたほどの威力の狼牙掌を勢いよく打ち込んだ。
しかし、ジュイオの鎧は相当固く、リッドの狼牙掌であっても少し歪む程度に終わる。
ジュイオがフッと笑い、リッドとオティアンは表情を険しくした。
「とおおおおおっ!」
「うおおおおおっ!」
鬼気迫る2人の咆哮にビクともしないジュイオ。
3人の激しい攻防の中、蚊帳の外になっているクレアが呆然としている。
「すごい……即席の連携だなんて思えない……」
「お互いの位置取りを意識しているから、もう一歩足りないわね。はっ! そうよ、ウィノーさま!」
クレアの感嘆混じりの呟きに、イライドが苛立ち混じりの酷評を口から漏らした後、助けたクレアに向いていた冷静な意識がウィノーを思い出して慌てて駆け出していく。
「あ、イライドさん! えっと……じゃあ、私はハトオロさんを」
クレアはジュイオと対峙してから静かなエミハマスを気に掛けつつ、いまだに起き上がることのないハトオロの方へと走り出す。
「……ん……ニャ? イライド?」
イライドがウィノーを強く抱きしめると、ウィノーはゆっくりと目を覚ました。
「ウィノーさま! よかった……あ! おケガは!? ……大きな損傷はないようですね……よかった……」
イライドの目から涙が数滴零れる。
「あぁ……すまないニャ、心配かけちまったニャ」
「今のお身体でもう無茶はしないでください。今、少しだけ魔力をお渡ししますから自己回復にお使いください」
「悪い……助かるニャ……これでオレもまだ……」
最初は気絶したためか、ウィノーが状況を上手く呑み込めていなかったが、少し離れた所で繰り広げられている激戦を目にして、ようやく本覚醒した。
イライドは空っぽになりかけているウィノーの魔力量に気付いて、おでこどうしをくっつけて魔力を分配し始める。
次第にウィノーの全身に魔力が満ちていき、瞳に戦いへの意欲が宿されていく。
「ハトオロさん!」
「クレアさん、先ほどの攻撃は大丈夫ですか?」
クレアが寝転んだままのハトオロに声を掛けると、ハトオロはクレアを気にした言葉を掛ける。
「あ、はい。イライドさんのおかげで。それよりもハトオロさんこそ、大丈夫ですか!?」
「えぇ、だいぶ良くなってきました。そろそろ、英雄譚の準備をしないといけませんね」
徐々にリッドの仲間は体制を立て直していき、総力戦も見えてきた。
それは敵に齎された奇跡を覆す脚本になっていく。
「閃掌底!」
「何度やっても同じことだ!」
リッドが低姿勢から再び閃掌底を抉るような角度で放ち、ジュイオがほくそ笑む。
だが、笑っているのはジュイオだけではなかった。
「それはどうかな、燕旋翼!」
「うおおおおおっ!」
ジュイオの振り上げようとした大剣の横っ腹を、リッドが燕旋翼で真横へ蹴り飛ばす。
次いで、隙のできたジュイオの胸元を目掛けて、オティアンの魔法剣が貫こうと延伸する。
ジュイオは咄嗟に身体を捻って避けきり、苦虫を嚙み潰したように口を小さく開く。
「ちいいいいいっ! なぜこの力量差で拮抗できる!」
魔力を十二分に吸収し、他者を圧倒できる力を手に入れた。
事実、序盤はリッドもオティアンも歯が立たなかった。
しかし、今やその2人はジュイオの動きに追従し対応できるどころか、喰らえば一撃で沈んでしまうジュイオの強力な攻撃を躱し、流し、止め、無効化して、徐々に押し始めている。
やがて、ジュイオに今までにないほどの隙が生じたとき、リッドは一気に懐へ潜り込んだ。
「巨虎爪牙閃撃!」
正拳突きや足刀、回し蹴り、掌底などの初歩的な攻撃を、状況に合わせて無数の組合せをつくって、リッドは流れるように次々とジュイオの鎧に打ち込んでいく。
強固に主を守っていた鎧が所々ひしゃげていき、逆に動きを制限する拘束具へと変質していく。
最後におまけとばかりに、リッドがジュイオの脇腹を目掛けて、鋭いフックを打ち抜いた。
「ぐうううううっ!?」
さすがのジュイオも後退り、脇腹を片手で押さえながら、大剣を杖代わりにして膝を屈しないように立っている。
「らあああああっ!」
すかさず、横側に回り込んでいたオティアンは魔法剣を振り下ろし、ジュイオが防御のために脊髄反射的で掲げた腕を容赦なく断ち切った。
「ぐうううううっ! こんな、こんなはずでは!」
ジュイオは苦悶に満ちた表情を浮かべて、さらに後退る。
部屋の真ん中、四方をリッドたちに囲まれた状態で彼は全員を順番に睨みつけた。
「……はあ……はあっ……どうだ」
「……はあ……はあっ……どうじゃ」
息切れを起こすリッドとオティアンが誇らしげに小さな笑みを浮かべている。
「まだだ……まだだあああああっ! こうなれば、使うしかあるまい!」
ジュイオが体内に温存していた魔力を噴き出させて全身に纏い始めた。
魔力は黒く変色して顔をも覆い尽くし、鎧を禍々しいものへと作り変え、さらに辺りに落ちていた数十本もの騎士剣を浮かせて操ろうとする。
少し身体が元のサイズに近付いたが、魔物としては最終形態へと移行した。
「くっ……はあっ……なんじゃと……ふぅっ……まだやると言うのか……」
オティアンは再び構えつつも、息を切らしたまま冷や汗を額に滲ませる。
「しぶといな……だが、もうクライマックスだ……その姿は燃費が悪いのか、魔力がバカみたいに漏れ出ているぞ、ジュイオ……引導を渡してやる……」
リッドも構え始めると、今までになかった魔力の流れができあがる。
そう、ジュイオから溢れ出た魔力がリッドへと流れ込んでいたのだ。
「リッド殿、何を……?」
その様子のおかしいリッドを見て、オティアンは恐る恐る問いただした。
「……俺も燃費を悪くするのさ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! 【乾坤一擲】!」
リッドが【乾坤一擲】と叫び、ジュイオから溢れ出し、虚空へ霧散せんとする黒い魔力を一気に搔っ攫っていった。
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