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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
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93 最終日

 家に戻り、解散してそれぞれ部屋に帰ってから少しして、リティが部屋に来た。


「今、いい?」

「うん、大丈夫。ここ座って」

「? 機嫌良さそう」


 おっと、顔に出ていたか。

 リティは沈んだ表情だし、今日のことを謝りに来たのかもしれない。にやにやしていたら失礼だ。


 顔を引き締めて、真面目な雰囲気を心掛ける。


「それで、どうしたの?」

「怪我、もう平気?」

「そんなに心配しなくても、俺の治療に後遺症は残らないよ」

「うん。でも、わたしがやった、から」


 やっぱりそのことか。


「……あのときの言葉、どこまでが本心だったの?」

「あのときは、頭がぼんやりして、その、アカリをナイフで切ることが、凄く良いことのように思えて……本当は、アカリに死んでほしくない」

「大切だとか、大事だからとか、あれも違う?」

「それは、本当。でも、大事だから、死んでほしくない」

「そう……」


 そうか。

 今回の件で気が狂ったのは三人。あの男女とリティ。

 原因は恐らくナイフで切られたこと。更に俺は、加害者になる原因だけではなく、被害者になる原因もあると考えた。


 被害者にも共通点がある。

 加害者から好意を向けられていることだ。

 最初に襲った男性は襲われた女性の恋人だったようだし、俺を襲った女性は治療して助けようとしていた俺にある程度好意を向けていた。リティも俺のことを大事だと言ってくれている。


 好意が襲う対象選びにどれだけ影響があるのかは分からない。そもそも俺の考えは間違っていて、偶々近くにいた相手を襲っただけかもしれない。

 でも、リティは最初に俺を選んだ。


 リティは感情をあまり表に出さない。だから、こういう形でも好意が見えると嬉しかったりする。


「俺もリティが大切だよ」

「……うん」

「そういえば、久し振りに二人きりだね。この機会にリティに話しておきたいことがあるんだ」


 ずっと先送りにしてきたこと。秘密、隠し事、そして嘘。

 思えば俺は、リティと出会ったときから嘘を吐いていた。別に嘘は許せないとか言うつもりはないけど、リティには出来る限り打ち明けておきたいと考えていた。

 出会ったときからの種明かしを一つ一つ、話していく。


 盗賊に浚われたなんて嘘で。

 ダイキが興味を持ったのは転生者だから。

 ユユやフィールとの関係と、二人の正体について。


 他にも細かい嘘があったと思うけど、大まかなところはこれくらいだろう。

 リティは俺の話を黙った聞いていた。


「アカリは、故郷の話をしないから、何かあったと思ってた。すごい、遠いところ」

「うん、もう帰れない。今の俺の帰る場所は、此処しかないんだ」

「あと、アカリ、まだ赤ちゃんだね」

「前世では今くらいの年頃だったからね?」


 それから暫くの間俺の身の上話が続いて、夜遅くなったところで解散した。

 ……ユユ達が神様だと聞いても動じていなかったのは流石だと思う。



=====



 目が覚めると柔らかい感触がして、布団をめくると中にはフィールが潜り込んでいた。


「朝絡んでくるのはやめてくれよ……眠い」

「まだ寝ててもいいよ?」

「何されるか怖くて寝れないんだって……」


 と、言いつつも既に瞼が下がってきている。

 いけない、せめてフィールを追い出してからじゃないと……。


 …………。


 ……………………。


 はっ……今寝てた。

 しかも気が付いたら、フィールを抱き枕のように腕に抱いている。


「抱きつく癖でもあるの?」

「……さあ」


 あるかもしれない。

 ユユと寝ていたときは逆に抱きつかれていたんだけどな。でもユユって、俺と似ているところ多いからもしかしたら……。


「じゃなくて、出てってよ。まだ寝たいんだから」

「アカリくんがぎゅってしてきたから出られなかったんですぅ」

「もう離したでしょ」

「アカリくんに抱きしめられると、あの時のことを思い出して……またやる?」

「やっ、やらない」


 くそ、寝るのは諦めて起きるか……。

 怠い身体をのっそりと起こして、引きずるように動いてベッドから出る。その後スリッパを履いて歩き始めたところで、足を滑らせて転倒した。


「痛い」

「低血圧なのに起きてすぐ動くから」


 確かにその通りだ。動き出すのはもう少し目が覚めてからにしよう。

 近くにあった椅子に深く腰掛け、負担を掛けずに何とか横にならないようにする。

 何分かそのままでいると、だんだん座っていることすら怠くなっていく。横になりたい。柔らかいベッドで。ああ、眠い。


 眠気で半開きになった眼でベッドを見ると、フィールが掛け布団を捲ってみせて誘惑してくる。

 数歩先に行けば天国だ。数歩先を見るのも辛くなってきて目を閉じそうになり、すぐそこにベッドがあるのに椅子で寝ることもないんじゃないかと考えた。

 椅子は長時間寝るのに向いていない。数歩の努力を惜しまずに立ち上がり、両手を広げてウェルカムしてくるフィールのもとまで進む。少しでも身体を動かしたら意識が覚醒してきそうなものだけど、眠気は余計に増してきた。


 ベッドに倒れ込んで、フィールが受け止めきれなくて押し倒す恰好になって、横になった俺は眠りについた。



=====



「もう夕方か……」


 寝過ごしたな。

 それと、まだフィールが居たことには驚いた。流石に俺の下からは脱出したようだが、もしかして一日中俺の添い寝でもしていたのか?


 フィールと共に顔を洗いに下の階へ降りると、ちょうどダイキが家にやってきた。

 出迎えてから洗面所へ向かい、さっぱりしたところでキッチンを見に行く。今日はまだ誰も夕食を作っていないようだから、本日のシェフは俺だな。最近はディーロ先輩のお陰でレシピを知っている料理ならある程度作れるようになったんだよね。


 本日のメニューは……親子丼かなぁ。材料が簡単で楽だし。いつの間にか我が家には米もちゃんとあるしね。


「…………」

「…………」


 フィールがさっきからずっと後ろを付いてきている。背後霊のように、無言で。まあ無言なのは俺もだけど。


「今日はずっとアカリくんを見ていたからね。折角だから一日中続けようと思って」


 疑問が顔に出ていたのか、フィールは理由を口にした。

 なんて無駄な一日の過ごし方だろう。さすが、悠久を生きる神様は時間の使い方が違うな。


 ちょっと味が濃くなったけど、大きな失敗もなく料理を完成させ、皆を呼びに行く。と言っても、ダイキは食べてきたらしいから呼ぶのはユユとリティだけ。

 リティはいつも通り工房かな?


 工房に向かい扉を開けると、リティがばったりと倒れ伏していた。


「リティ!?」

「……アカリ…………お腹、減った…………」


 なんだ、脅かすなよ……。

 立ち上がるのを手伝って、そのままリビングに搬送。その後何故か機嫌の悪そうだったユユも呼んできて、四人で食事を始める。


「それで、リティは何であんなことになってたの?」

「……眠れなくて、徹夜して、今日もずっと工房に居たら……ご飯忘れてた」

「うん、これ食べたら早く寝た方がいいよ」


 元気のない顔をしていらっしゃる。

 今日は何も食べてなかったのか。それは俺も同じだけど、寝ていただけだからエネルギーの消費量が違うんだろうな。


「あれ、ユユとフィールは何か食べた?」

「……お菓子」

「なんにも」


 フィールは俺と一緒に居たから仕方ないとして、そっか……ユユもご飯無かったのか。いつまで経っても食事が用意されなかったら不機嫌にもなるよね。

 みんな、空腹だ。


「こんな生活じゃ身体に悪いよね。起きる努力でもしようかなぁ」

「大丈夫」


 リティが少しだけ元気の戻った声で言った。


「明日から、学園があるから」


 長い夏休みも、気付いたら終わっていたようだ。

 完全に忘れてた。

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