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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
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90 常識外れ

 皆で朝食を食べた後、ダイキが家に来た。

 ここのところよく来るな。きっと暇なんだろう。


「ここに三つの選択肢がある。さあどれにする?」

「内容を教えてくれよ」


 そんでもって脈絡がない。


「一つ目、最近巷を騒がせている快楽殺人事件の調査。二つ目、夢のドラゴン討伐。三つ目、突撃、隣の神様」

「いろいろ言いたいが、三つ目は何」

「ディーロさんって居たじゃん? それとなく様子を見てくれると助かるってこの国の人に言われてて。ほら、国が絡むとどうなるか分からないから」

「ああ、そういう。それならディーロ先輩とは頻繁に会っているし、後で俺から言っておくよ」

「お、それは助かる。じゃあ三つ目は解決だな」


 なるほど、こいつは面倒事をわざわざ持ってきたわけか。


「二つ目は?」

「後ろから訊いてくるのな。いいけど。冒険者ランクのSランク昇格方法の一つに竜殺しドラゴンスレイヤーがあって、これを成し遂げれば他のランクを飛ばしてSランクになれるらしい。ドラゴンってやっぱロマンあるよな。でもこれは急ぎじゃないから優先度が低い」

「へえ、パーティでもいいんだ?」

「冒険者ってのはパーティを組むのが基本だからな。全員合わせてSランクパーティになる。でも別に一人でもSランクを名乗れるぞ」


 確かダイキはBランクだったな。俺はまだDランク。

 さては地道にAランクを目指すのが面倒になったな?


「それで、最後のは?」

「殺人事件、これは言ったままだな。人々の安全を守ってこその勇者だろ? 解決に向けて調査しようぜ」

「まあ、これは俺にも心当たりがあるし、一つ目の選択肢を選ぶよ」

「心当たりってなんだ?」

「最近よく、殺人現場を見るんだ」


 毎夜やってるスキルの熟練度上げの際に【瞳の魔眼】で町を見るんだけど、何故だかよく見つけた。

 流石に気になっていたからちょうどいい。


「よく見るって……実は犯人がお前でしたってオチはないよな?」

「そんなわけないだろ。俺の視野が広いだけだって」

「視野って、ああ、魔眼か。納得した」

「それで、なんか情報はあるの? 持ちかけてきたくらいだし」

「連続殺人の噂が本当みたいだからこれから調査しようぜって誘いに来たんだが。そっちこそ、自慢の魔眼で何か見てないのか?」

「現場を見てるからそれなりには知ってるけど、これといって特別なことはなかったかな」

「なら取り敢えず、情報を整理しておくか」


 紙とペンを用意して情報を並べていく。

 ある程度箇条書きにしたら分かりやすいように絵を入れたりもした。


「は? 犯人見てんの?」

「一応ね」

「じゃあもう、そいつ捜して解決だな。早く終わりそうで何より」

「いや、犯人、一人じゃないんだよ。全部見れたわけじゃないから分かんないけど、単独犯ではない」


 今のところ死体が発見されているのは7件。俺はそのうち6件の死体を確認して、3件は犯人の顔まで見ている。3件とも、別人による犯行だった。

 どの殺人も凶器は刃物。全ての死体が全身を切り刻まれて血塗れになっていたようだ。


「ここまで同じなら普通、同一犯だろ」

「不思議だよな」

「そんな思考を放棄した言葉で纏めるなよ。もっと推理的なことしようぜ」

「迷宮入りだな」

「諦めんの早いって。考えろよ」

「そうだなぁ……まあ、示し合わせでもしてたんじゃないか?」


 そうじゃないと説明付かないしな。

 二人目以降が前の模倣犯だったとしても、それが何度も起こるのは変だし。


「楽しそうな話をしてるわね」

「どこが?」


 俺の部屋にフィールが現れた。……扉、開いてないんだけど。


「えっと……死神ちゃん?」

「…………」

「ごめんなさい死神様。命だけは」

「……フィールよ」

「フィール様!」


 ダイキ、ビビりすぎだろ。


「フィールは何か知らないか?」

「さあ?」

「やっぱり? じゃあ、出てっていいよ」

「むっ……」


 今、友達同士で話してるところだから。

 長居されるとダイキも困るだろうから、多少ぞんざいに追い払おうとした。


 だけど、機嫌を損ねただけでは済まなかったようで、ツカツカと距離を詰められ、頭を両手でがっちり押さえられた。

 ……あ、やば。


「っ!? ――んんっ?! ん――!?」


 犯された。

 気付いたときにはもう遅く、キスされた。濃いやつ。


「んっ、この、やめっ――」

「めっちゃ気まずい」


 そんなこと言ってないで助けろ!

 一瞬唇が離れた隙に間に手を差し込んだ。


「……ぺろ、れろ」

「~~!?」


 手のひらを舐められたっ!

 あ、感情が冷えていく。【状態魔法】のセーフティーが掛かってしまったようだ。


「はあ、はあ……い、いきなり、何するんだ」

「ふふっ、冷たくするから、スキンシップが足りないのかと思って」

「ユユといい、フィールといい、俺にどうなってほしいんだよ。そんなに気軽にするもんじゃないだろ?」

「まあ、そうなんだけど、アカリくんなら構わないよ」

「おかしいだろ。だって、それは」

「それとね、ユユちゃんからいろいろ言われてるみたいだけど、常識とずれてるのはアカリくんの方だからね」

「は?」


 ずれてるって何が。


「キスって、どうしてすると思う?」

「結婚するときの儀式。あと、夫婦の親愛の印」

「どう思う?」


 感想を、フィールはダイキに振った。

 予想外のタイミングで話を振られたダイキはビビりながらも、即座に答える。


「重い。恋人同士でもするだろ」

「恋人って婚約者と同じでしょ? 結婚が決まってるわけだし」

「いや、それも重いわ。恋人ってそこまで重くないぜ?」

「え?」

「いや……」

「アカリくんは、学校あんまり行ってなかったし、ユユちゃんしか話し相手が居なかったから気付けなかったのよ。ユユちゃんの言ってることがおかしいって」


 ユユの言葉がオカシイ?

 いや、俺だって本を読んだりテレビを見たりしてたし、そういう話も中にはあったぞ。


「結ばれるときにキスをして、その後は幸せに過ごしましたと。特に違和感もないけど」

「アカリ……お前、そこまで純情な健全少年だったのか……」

「アカリくんはもう少し、ちゃんと知っておくべきだと思うのよ。キスの先とか」

「一応知ってる。あれ。舌を入れるやつ」


 たった今されたやつ。


「それもまだキス止まりね」

「それよりも……?」

「結婚したなら子供を持たないと」

「ああ、そういう」

「分かってないでしょ」

「何を」

「子供がどうやって出来るのか。具体的に」

「……」


 具体的に?

 あれだろ、夫婦が寝食を共にすれば勝手に。……勝手に、何が、どうなって?


「お前まさか、知らないのか!?」


 え、そんな常識なの?


「知らないのって、まずい?」

「まあ、お前の歳で知らないのはおかしい、かな」

「そもそも学校である程度教わるのよ? だって常識だもの」

「……確かに、結構入院とかしてたから、知識に穴があった。かも」


 ダイキまでフィールに合わせるとは思えないし、間違ってたのは、俺か。

 間違っていた? どこを、どのように。


「大丈夫よ、今まで知らなかっただけだから。私がちゃんと教えてあげる」

「あ、ああ。そう、だな」

「それじゃあ早い方がいいわね。あなたは悪いけど、今日はもう帰ってくれる?」

「ああ、はい」


 ダイキは言われたとおりに席を立ち、俺の部屋から出て行く。

 扉を開けて、閉めるときに一度目が合って、逸れた。

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