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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
92/112

89 関係

 フェルクと別れ、フィールと共に帰宅した。

 急いでユユの部屋に向かい、部屋をノックするが――返事がない。


 鍵は掛かっていなく、中を確認したが不在だった。


 まさか、俺を探しに家を飛び出したか……? 待っているようには言ったのだけど。

 他の部屋を見て回るが、やはり居ない。念話をしようと試みるも返事がない。


 探しに行くか。

 一度自室に戻り、男に戻って動きやすい服装に着替えることにする。


「――あっ」


 自室に入り、数歩進んだところでベッドに眠るユユに気付いた。

 よかった、此処に居たのか。


 起こすかどうか悩んで、取り敢えず着替えることにした。

 ユユを起こさないよう静かに服を脱ぎ、状態変化で男に戻ったら服を着る。


 その後はベッドに腰掛け、ユユの様子を見る。

 ……気持ちよさそうに寝ている。思ったより時間が掛かったから焦って帰ったのに、ほんと、ユユと居ると気が抜けるな。


 なんだか安心したら、こっちまで眠くなってきた。

 午前中から眠気を堪えて活動して、午後になったら激しい運動をしたからな。それに、かなり魔力を消耗した。【結晶術】や【空間魔法】を魔力量を気にせずガンガン使ったし。

 【状態魔法】で肉体的疲労は抜けるけど、魔力はそうも行かない。


 よし、俺も寝よう。

 ユユの隣にお邪魔して、夕食までの時間昼寝をすることにした。



=====



「ねえアカリ、私は今、とっても不満だらけなの」

「はい」

「アカリはね、すぐに帰るって言ったの」

「言ったね」

「それから結構待ってたんだよっ! でも全然帰ってこないしっ! それで気付いたら寝ちゃってて、起きたらアカリは暢気に隣で寝てるし!」


 うん、ごめんなさい。

 寝て起きても、ユユの怒りは引いていなかった。というか、ユユが起きたときに俺が寝ていたせいで余計に怒ってしまったようだ。

 そして今の俺は眠い。寝起きが悪いせいで、頭がぼんやりとしたままだった。


「悪かったよユユ。ほら、仲直りして一緒に二度寝しよ?」

「それアカリが寝たいだけでしょっ!? それに、喧嘩とかしたわけじゃないよ……」


 それもそうか。

 俺がユユを置いてお見合いに行ったことをユユは怒っている。俺はそんなにユユがお見合いに反応するなんて思ってなかったけど……。


「どうしてユユは、俺のお見合いを嫌がったんだ? 別に、断るだけなのに」

「うう、だってなんだか、不安になったんだもん……」


 不安になって、焦って念話してきたということか?

 完全に感情で動いたわけか。それなら、今はもう大丈夫だと思うけど。


「ちゃんと縁談は断ってきたからさ、安心してよ」

「うん……」


 暫く話すことでユユが落ち着いて、納得してくれたところで……二度寝しますか。

 ベッドの上で身体を横にして、布団に包まれる。さっき一緒に二度寝しようと言ったからか、ユユも同じベッドに潜り込んできた。

 まあいい。前世でも何度かあったし、今更気にすることもない。

 そんなことよりも眠気が勝り、すぐに意識は落ちていった。



=====



 目が覚めたら朝になっていた。

 昼寝をして、二度寝をしたら次の日の朝。どう考えても寝過ぎたな。


「んん……あかりぃ……」


 ユユはまだ寝ている。俺も大概だけど、ユユもよくこんなに眠れるよな。やっぱり神様は時間感覚が違うのかな?

 ユユがぎゅうぎゅうと抱き締めてくる。もしかしたら、これのせいで目が覚めたのではないだろうか。


 そこへ扉をノックする音が聞こえてきて、返事をするとリティが入ってきた。


「アカリ、起きた、の……?」


 俺とユユが横になっているのを見て、リティは足を止めた。

 ……変な場面を見られた。でも、こんな時間にリティが来るなんて珍しい。何かあったかな?


「リティ、こんな時間にどうかした?」

「昨日はアカリ、ずっと寝てたから」


 様子を見に来たのか。

 そういえば晩御飯も食べずに寝ていた。

 お陰で今は寝起きなのに眠気が少ない。


「今起きるよ」


 起きるために身体を拘束しているユユの腕をそっと解こうとして、その途中でユユが起きた。


「あ、その、おはようアカリ……」


 照れくさそうに俺を解放したユユは、先にベッドから立ち上がった。俺もそれに続く。


「ご飯、すぐできるから」

「分かった。少ししたら向かうよ」


 朝食はリティ担当。俺が朝抜くことが多いからだけど。

 リティが部屋を出たら着替えて、寝癖を撫でつける。


「……アカリさ、女の子の前で堂々と着替えないでよね」


 そういえばユユがいた。


「でもユユっていつでも俺を見れたんだよね? 今更じゃない?」

「き、着替えとかお風呂は見ないようにしてたからっ!」

「じゃあ、今も見ないようにすれば大丈夫だって」

「そういう問題じゃないのっ!!」


 反論したら怒られた。まあ、俺が悪いんだろうな。

 あんまり怒らせてばかりいると愛想を尽かされてしまうかもしれない。昨日のこともあるし、ここは一つ、機嫌を取っておこうかな。


「悪かったよ。うん、じゃあお詫びに何かする。何がいい?」

「……何があるの?」

「俺にできることなら何でもいいよ」

「何でも……何でも……」


 何でもとは言っても、ユユに頼まれて断るようなことも無いしな。意地悪で変なこと言われなければだけど。


「それじゃあねえ、フィールとやって、私とやってないこと」


 フィール? また張り合ってるのかな?

 別にフィールと大したことはやってな……い……?


「え……キス?」

「っ!?」


 それしか思い付かないんだけど。俺からフィールにしたことなんて殆ど無いし。フィールも最近はくっついてくるくらいだし。

 あ、フィールの首を絞めたことがあったな。でもそれをユユにもやろうなんて思えないから却下で。


 他の案を考えていると、顔を赤くしたユユが目を閉じて少し上を向いた……!

 やれと!?


 いや待て、キスは結婚するときにするものだ。婚約者か家族しかやらないものだってユユから聞いたぞ。俺とユユっていつから家族になった? 半分家族みたいなものだったけど、家族ではないよな。

 ユユはいいのか? キスを待っているし、同意しているってことだよな。とすると、これってあれか? もう、プロポーズ的なところまで来ているのか? いつの間にだよ。


「んー。んー」


 催促されてもな。

 ここは進むべきか、退くべきか。

 どうしようかとユユを見ていると、ユユがプルプル震えてきた。顔が赤い。

 恥ずかしいのだろうけど、それでも頑なに目を閉じたままだ。存在を主張する桜色の瞳が閉じられているせいか、小柄で何処までも白いユユの姿は消えてしまいそうな程に儚げに見えた。


 受け入れた先のことよりも、拒絶した後の恐怖が勝った。

 一度手を離したら、もう二度と俺の前に現れないような錯覚。ユユを失うのが怖い。

 そうだ。ユユのことは好きだし、どんな関係になろうと問題ないじゃないか。


 ユユの両肩に手を置いた。ピクリと反応が返ってくる。

 そんなユユに顔を近付けて――、




 ノックの後に、扉が開いた。


「ご飯、できてるけど……?」

「う、うん。今行くよ」

「わっ、私もっ」

「?」


 あっぶねええぇ……。

 いろんな意味で危なかった。いや、ナイスだよリティ。変な雰囲気に呑まれていた。あそこは曖昧にするのが俺にとって一番都合がよかった。

 落ち着かない感情を隠しながら、部屋を出てリビングへ向かう。【状態魔法】で精神状態を維持しているとこういうとき便利だな。抑えが効く。考えたうえでの行動はそこまで抑えられないから、さっきのは本当に危なかったけど。

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