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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第二章 《疑と欺の狭間》
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俺、絶望を知りました。


 俺は目を覚ます。


「……ぁ、ぁああっ!嫌っ、もう……や、めて……」


 何か聞こえる……。

 俺は頭を振りながらも目を開ける。


「……おや?お目覚めですか、陛下」


 目の前には先程まで校門の向こう側にいた筈のレミィの顔が見える。

 俺の両腕は屈強な兵士に掴まれ、両膝を付く形で座らされている。


「な、にを……?」


 俺はレミィから顔を背け前方へと視線を向ける。


「あっ!ああっ!いやあ!もう、もう許して下さい……!」


 マットの上に兵士の男に組み敷かれている少女。

 顔は見た事はあるかも知れないが何年なのか、名前は何なのかも知らない。

 しかし、問題はそこでは無い。

 少女は。

 《剣の国》の兵士の男に―――。


 ―――犯されていた。


「もう……やめ、て……」


 ……一体……。

 何を、やっているんだ……こいつらは……。


「ふふ……。陛下。お気分は如何でしょうか。御覧の通り、この『要塞』は我が《剣の国》が落とさせて頂きましたわ」


 ……落とした…?

 学校が……《剣の国》に……?


「あ、ああ……」


「ふふ……陛下。まだはっきりと言葉を発せないご様子ですね……。でもわたくしには陛下の気持ちが手に取る様に分りますわ……」


 レミィは俺の頬をその細い指でなぞるように撫でる。


「戦に敗北する絶望。後悔。……そして目の当たりにする現実。これらはすべて陛下が引き起こした事なのですよ?素直に我が国の『同盟』をお受けになっておられれば、こんな事にはならなかったのですよ?陛下……」


「おい、早く逝っちまえよ!次がつかえてんだよ!捕まえた女のうち、まともなのはそいつしか残ってねぇんだからよ!さっさと交代しろや!」


 ……捕まった女のうち……?


「ふふ……。それにしても、あの『オガタ』とかいう補佐官。なかなかの手腕ですわね、陛下。……ご想像の通りですわ。我々《剣の国》の第十兵士団が落としたのは、まだこの『要塞』の『一角』に過ぎませんわ」


 ……緒方理事長が……皆を逃がしてくれたのか……?


「流石に我々の方が圧倒的な戦力を保有していたとしても、何百名の人間を人質に取るなんて事は難しい事ですわ。せいぜいこの建物の一角が関の山……といった所でしょうか」


 レミィがそう言い、俺の前から立ち上がる。


「……うっ!!?」


 マットの上でまた別の兵士に組み敷かれている女学生の横。

 そこに数名の裸の女学生が……精気を失ったような空ろな目で横たわっていた。


「ふふ……。うちの兵士団の男共は性欲が強すぎて困りますわ……。捕虜とする異界の人間も『少女』しか選ばないなんて……。あんなに精神が崩壊してしまっても捕虜としての使い道があるのか疑問でなりませんわね」


 女学生へと歩を進めるレミィ。

 手には大きな剣を持っている。


「や、めろ……」


「使い道の無い捕虜は……生きていく意味など存在するのでしょうか……陛下?」


 やめろ……。

 何故、お前らは、平然とそんなに酷い事を……!


 レミィは大きな剣を逆手に持ち狙いを定める。


「や、めろ……!」


 俺は止めようと何とかもがくが、両手を抱えられたまま身動きが全く取れない。

 それどころか体中から力が抜け、全く言う事が聞かないでいる。

 何故動かないんだ……!


「おや、陛下。一国の主ともあろうお方が、平民の娘を救おうとでも?陛下はよっぽど平和な異界からこの《三国》の世界へと参られたのですね。ご存知かも知れませんが、陛下……。この《三国》の世界では何百年と戦争が続いております」


 既にグロリアムからはこの『世界』の事はある程度は聞いている。

 しかし、だからと言って、平和な世界から急に異世界へと飛んで来てしまった俺達にそんな事を急に受け入れろ、と言う方が無理があるだろう。


「陛下。この際なのではっきりと教えて差し上げましょう」


 レミィが大きな剣を振りかぶる。

 剣を向けられている少女は空ろな目を中空に泳がせたまま微動だにしない。


「やめろ……やめ……!」


 そしてレミィは冷たく言い放った。


「この『戦争』の世の中で、『人』は―――」


ザクゥッ!!


 少女の露になった腹部から鮮血が舞う。


 レミィの白銀の鎧が真っ赤に染め上げられる。



「―――いとも簡単に、命を落とします」






◆◇◆◇






「おーい!みんな!そろそろ引き上げるぞー!」


 小笠原という青年が皆に声を掛ける。


(……なかなかの統率力ではあるが……気に食わんな、あの張り付いた笑みは……)


 私は食料班とは少し離れた位置から食糧調達の作業を見守っている。


 『学園要塞』から南西に800ULウムラウトほど歩いた所にある湖。

 すぐ横には森が生い茂っているこの土地で、食糧を調達するのはさして苦では無いだろう。

 ここならば《魔法の国》の使者が『学園要塞』に向かったとしても。

 私の《暗黒の力》のうちの一つ、《予兆オーメン》の力を使えば、ある程度の敵の動きも察知する事が出来る。

 私の育ての親……おばば様から受け継いだ、《暗黒の国》でも珍しいとされる《封魔》と呼ばれる暗黒術のうちの一つ。

同 じく、その《力》を打ち消す《封魔》でも存在しない限り、ある程度の『未来の予測』ならば容易に出来る。


(……おばば様……。いつか……必ず……)


「きゃあああ!!」


 考え事をしていた最中、井上とか言う女の叫び声で我に帰る。


「!!……お前等は……!?」


 食料班の学生達の周囲には十数名の《剣の国》の兵士達が取り囲んでいた。


「これはこれは……。『異界の要塞』の、麗しき妃様では御座いませんか?」


 森の奥からニヤケ顔で大柄な兵士が現れる。

 

 こいつは確か……会談に来ていた『ゼノン』とか言う兵士長……!

 そしていつの間にか私の首には大きめの剣の刃がぴたりと付けられていた。


「く……!」


「おっと。こちらを振り向かずに、そのまま前を向いていて貰えますかな?お妃様?……くっくっく……」


 声の調子からするに、あの時のもう一人の兵士長……確か名を『ローグハイル』とか言ったか……。


(……しかし、何故だ……?何故、我の《予兆オーメン》が反応しなかった……?……まさか!)


「おや?何かに気付かれましたかな?……まさかとは思いますが、妃どのが『特殊な《暗黒の力》』をお持ちだという事を、我々《剣の国》が調べ上げていなかったとでもお思いかな?」


「!!」


「おいおいゼノン。お妃様がプルプル震え出しちまったぜぇ?あんまり苛めてやるなよな……くっくっく……」


 刃をより首に食い込ませるローグハイル。

 一筋の赤い糸が首筋から滴り落ちる。


「ようし、お前等ぁ!そこのガキ共を全員殺して、さっさとレミィんとこに向かうぞぉ!!そろそろ『要塞』を占領している頃だからよぉ!!」


「なっ!!?」


 レミィと呼ばれたやつは確かあの時の最後の一人の兵士長……。

 そやつが『学園要塞』に向かったのだとしたら、ほむらが迎え撃っている筈……。

 なのに私の『中』にある《黒炎剣の力》は何も反応を起こしてはいない。

 つまりは……!


(敵に捕らえられたか、ほむら……!まさか我の《予兆オーメン》を逆手に取られるとは……。この采配…。アリアンロードめ……。早々に打って出て来たか……!!)


 ほむらが危ない。


 『黒炎剣』を発動していない現状から考えても、何かしらの《力》で発動を封じられている可能性が高い。

 今すぐにでもこやつらから逃げ延び、ほむらと合流しなければ―――。



 ―――この『世界』が……《剣の国》に……!



















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