Ep3 男女
帰り道でのこと、俊がこう言ってきた。
「ウッチー、今日うちにこない?例のあのゲーム買ったから一緒にやろう。」
「ほんと!絶対行く!」
俊の家は学校の近くにあるからよくおじゃまさせてもらっている。それに今日は午前中だけなので午後にたっぷりと遊べる格好の日なのだ。それに例のあのゲームは面白いときいているだけにこの機会を逃す手はないだろう。そう思い俺は俊にほいほいついていく。
俊の家の前に着いた。俊は鍵を開けた。
「ん?鍵を開けたってことはおうちの人は・・・。」
「今日は親がいないから二人っきりだぞ。」
俺は前まで男だったとはいえ、今は女だ。そして男女二人っきりでやることと言えば・・・。
「俺やっぱり帰るわ。」
「ちょっと待て、ジョークだって。どうせお袋は買い物に出かけているだけだろうからそのうち帰ってくるよ。」
「もし変なことしようとしたらクラス中に言いふらすからね。」
「だからやらないって。俺は女の子の嫌がることはしない主義だからな。」
「それならいいけど・・・。」
でもそうか、性別変わると今まで気軽に行けていたところにもいけなくなるのか・・・。そんなことわかっていたはずなのに・・・。
「どうした?」
「ううん、何でもない。」
「そうか、ならさっさと遠慮なんかせずに入れよ。」
そういわれたので入っていく。テレビゲームなのでリビングだし、まず相手が俊なら変なことは起きないだろう。
「ちょっと待ってて、飲み物持ってくるから。」
「わかった。」
「そういえばお前が女になった時に家族の反応はどうだったんだ?」
「うーん、母さんと妹はすぐに適応したというかなんというか。まあそのおかげで女にすぐ慣れれたというのはあるかな。父さんは何だか複雑そうだったな。まあ自分の子供が知らない内に性転換してるんだもんね。でも今まで通りでいいとわかってから前と変わらず、って感じかな。」
「そうなのか。飲み物牛乳でもいいか?」
「別にいいよ。でもおじいちゃんがうるさかったなぁ。男に戻れるのかどうかってしつこくて。むしろこっちが知りたいのに、」
「そりゃ大変だったな。」
「まあ今じゃ大分落ち着いたけど。ありがと。」
俺は俊がもってきた飲み物を飲む。俊がこちらをじっとみている。
「何?」
「やっぱいいな。」
何かよくわからなかった。
「よーし、それじゃあやるか。」
ゲームを起動する。丁度その時玄関の方で音がした。
「いらっしゃい、ウッチー君。」
俊のお母さんだ。
「お邪魔してます。」
「母さん、よくこいつがウッチーだってわかったな。」
そういえばそうだ。顔に面影があるとはいえ今は見た目は立派に女子なはずなのに・・・。
「どうしてわかったんですか?」
「簡単な推理よウッチー君。まずうちの俊が堂々と連れ込む女の子なんてまず居ない。」
「余計なお世話だ。」
「居てもあんた絶対に話すでしょ。そして昨日ウッチー君が女の子になったという話を聞いた。それだけよ。」
なるほど、本当に簡単だった。
「まあいつも通りゆっくりしていってね。」
「お気遣いありがとうございます。」
それからはいつもと変わらず二人で遊んで楽しんだ。何があっても変わらない友情はいいものだな。