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007 キャンプの終わり

アクセスありがとうございます。

 夕食のパスタを食べ終えた後、俺はゆっくりと片付けを始めた。


 鍋やフライパンを軽く水で流し、油汚れをペーパーで拭き取る。キャンプ場の夜は思った以上に静かで、隣のサイトから聞こえていた笑い声もいつの間にか落ち着いていた。ランタンの灯りだけが、ぼんやりと手元を照らしている。


 明日は撤収か。


 そう思うと、3泊4日はあっという間だった気がする。最初は長いかな? とか思っていたが、終わってみれば短い。こういうのはいつもそうだ。


 焚き火の残り火を眺めながら、明日の動きを頭の中で整理する。


 チェックアウトは午前中。できれば朝のうちに撤収を終えておきたい。朝食は作らない。いや、正確には作る余裕を作らない方がいい。ダラダラすると時間が溶けるのはもう分かっている。


 片付けを終えると、早めにシュラフへ潜り込んだ。今日の映画は1本だけだ。1本だけ見て、絶対に寝る。


 映画を観終わってから、スマホを少しいじり電源を落とし、目を閉じる。焚き火の匂いがまだ服に残っていて、妙に落ち着いた気分だった。



 気付けば朝だった。


 テントの内側がうっすら明るい。スマホを見ると7時52分。予定通りの起床だな。


 体を起こして外に出ると、軽井沢の空気は昨日より少しだけ暖かかった。朝特有の張りつめた感じがある。遠くで鳥の声がしている。


 とりあえず顔を洗い、テーブルの上にまとめていた荷物に手を付ける。まずは寝袋、次にテント。順番はもう頭に入っている。


 3日間使ったサイトは思ったよりも整っていて、撤収はスムーズだった。ペグを抜き、ポールを外し、布を畳む。慣れている作業のはずなのに、どこか名残惜しさが混ざる。


 直火を使っているので、炭と灰は指定の場所へ……多くの場所で直火が禁止なので、下調べの時にしっかり確認をしないと大変なことになる。


 一緒に使用したブロックも元の位置へ片付けて、 荷物を車に詰め終わる頃には9時を少し回っていた。チェックアウトの時間には十分間に合う。


 管理棟へ向かい、簡単な挨拶と精算を済ませる。スタッフは慣れた様子で対応してくれて、特に問題もない。車へ戻る途中、もう一度だけキャンプ場を振り返った。


 3日間、ここで過ごしたのか。


 思ったより遠く感じる。けれど悪くない時間だった。


 車を発進させると、軽井沢の道路はすでに観光客の車でそれなりに賑わっていた。チェックアウト直後の時間帯ということもあって、みんな同じように移動しているらしい。


 とりあえず昼飯だな。


 キャンプ場を出てからしばらく走り、事前に目星を付けていた蕎麦屋へ入る。木造の落ち着いた店構えで、観光客と地元の人が半々くらいに見えた。


 席に座ると、すぐにメニューを決める。蕎麦と山菜の天ぷら、それとかき揚げのセット。


 待っている間、窓の外をぼんやり眺める。もうキャンプの喧騒はない。ただ普通の観光地の昼が流れていた。


 やがて運ばれてきた蕎麦は、想像よりもずっと香りが立っている。箸で持ち上げると、細い麺からさらに香りが立った。


 まず一口。


 喉越しが良く、噛むほどに蕎麦の風味が広がる。山菜の天ぷらは、軽く揚がっていて油っぽさが少ない。苦味が少しだけ残る感じがちょうどいい。かき揚げはサクサクで、玉ねぎの甘さが強い。


 キャンプ飯とはまた違う満足感がある。どちらが上とかではなく、単純に役割が違うだけだ。


 昼食を終えた後は、そのまま帰路へつくことにした。ナビをセットすると、家までおよそ5時間半ほど。途中で休憩を挟めば、夕方には到着できる計算だ。


 山道を通り来た時の道を戻るように車を走らせる。流れるように景色が変わっていく。半分ほど走ったところで、都市部へ近付いていく感覚がある。


 途中で、母親から頼まれていたことを思い出す。ハウス栽培のフルーツだ。


 具体的な品種までは聞いていないが、道の駅で売っているものなら何でもいいと言われていた。少し大きめの道の駅へ寄り、駐車場には観光バスも停まっていて、それなりに人が多かった。


 売り場を見て回ると、ハウス栽培のフルーツが並んでいるコーナーがあった。いちご、メロン、シャイン系のぶどう。どれも見た目が良い。


 母親に頼まれたけど、俺が食べたいからシャインマスカットにしよう。


 少し考えてから、箱詰めされたものを選ぶ。保冷もしてくれるようなので問題はない。クーラーボックスの隙間に入れて、再び車へ戻る。


 そこからは一気に帰宅ルートだ。街の景色が戻ってくると、キャンプの3日間が少し遠い出来事のように感じる。


 家に到着したのは18時頃だった。


 車を駐車場に止めて荷物を下ろすと、玄関から母親が出てくる。タイミングはちょうどよかったらしい。クーラーボックスからフルーツの箱を取り出して渡すと、母親は軽く中身を確認して満足そうに頷いた。


 ちゃんとしたもの買ってきたね、と言われた。まあ、俺が好きな物を選んできたけど、頼まれた通りではある。


 自分の部屋に戻ると、ようやく3日間の疲れが一気に来た気がした。ベッドに腰を下ろし、軽く息を吐く。


 キャンプが終わった。


 それにしても、キャンプ場には少なからず虫がいたのに、被害が全くなかったな……

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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