第10話 会話します。
「ち、ちょっと休憩しようかな・・・・・」
プルプルと震えた腕でバーベルを置き、近くにあった椅子に腰掛けタオルで汗を拭く。
(うわぁ、汗すげえー。)
「先輩、大丈夫でか?」
若松さんが心配そうに訪ねてくる。
「え、あ、あぁ、ちょっとハッスルしすぎたかな。腕が悲鳴上げてるけど。」
ここは普通女の子に「大丈夫?」かと聞かれたら「大丈夫!」って答えるのが男として当然で格好が付くのだろうけど、限界が来ているのに格好つけてられないよ、俺。
「あの、もし良かったらこれ飲みますか?」
若松さんは、自分の持っているスポーツドリンクを差し出した。
「え、いいの?」
「はい、どうぞ飲んで下さい。」
若松さんからボトルを貰い少しずつ飲む。
「あの・・・・・隣いいですか?」
「え、あ、あぁ、いいよ。」
「ありがとうございます。」
そう言うと若松さんは俺の隣に座った。
(え、少し距離近くないですかね。いや許可出したの俺だけどさ。てか俺絶対汗臭いよね・・・・・最悪だ。てか---)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
数分沈黙が続いた。
マジこの沈黙キツいよ。何話せばいいんだよ。
話さないといけない事はある。
昨夜霞に言われた事を今言えばいいんだ。でも、体育館で言っていいのか・・・・・いや、駄目だな。雰囲気の欠片もクソもないな。
なら何を話せばいいんだよ。
ドリンクを飲みながら話すネタを探していると若松さんから喋り始めた。
「先輩はいつからサッカーを始めたんですか?」
「え、あぁ、サッカーは小二から始めたよ。」
「中学もサッカーをしてたんですか?」
「いや、中学は他の部活に入ってたよ。」
この島の中学校にはサッカー部がない。だから殆どの小学校にサッカーをしていた子は中学に他の部活をし高校で再びサッカーを始めるのだ。てか島の子なら中学校サッカー部がない事は知ってる筈なんだが・・・・・
「もしかして若松さんって島外から来たの?」
「え、は、はい。中学まで東京に居ました。」
「え、とうきょう?東京って日本の首都の?」
「は、はい。日本の首都東京都です。」
・・・・・マジか。道理で見た事ない娘だと思ったけど都会っ子だったのか。
「・・・・・不便でしょ?」
「ま、まぁ、でも毎日が新鮮で楽しいですよ!」
「・・・・・フォローしているようだけど不便ってのは否定しないんだね。」
「・・・・・ハイ。」
(声ちっさ!)
でも仕方ないよな。この島にある店の殆どが夜の九時に閉まるしコンビニは二軒しかない上に家からは二十五キロ先に在る。。更には携帯の電波は4Gすら入らない村はある。(俺の住んでる所だ)
今まで都会に住んでいた今どきの子には不便で仕方ないだろう。
「えっと、あれかな、親の転勤とかでこの島に?」
「は、はい。そんなところです・・・・・・」
それからは若松さんとの会話は弾んだ。東京の事や部活の事などそりゃもう色々だ。
女子と話すと普段は疲れるのだが、この娘と話すと不思議と疲れない。多分若松さんがモテる理由は外見だけじゃなくこの娘の人当たりの良さもあるのだろう。
けど、だからこそ不思議なんだ。こんな娘が何故俺に告白したのかが・・・・・
「あの、明日も筋トレしますか?」
「え、うん。まぁ、この足じゃやる事限られてるしな。」
すると、若松さんが頬を赤く染め俯いた。
「えっと、もし良ければゴールデンウィークの間先輩のお手伝いをさせてください。」
・・・・・そんな顔でそのセリフを言われたらどんな人でも断れないよ。
「・・・・・それじゃ、お願いしようかな。」
「はい!」
今までの告白した男共はこの娘のこの笑顔に惹かれたんだろうなと俺は思った。今まで誰かに好意を持った事のない俺でもこの娘の笑顔に見とれてしまった。
「あ、でも明後日は多分大丈夫かな。」
「明後日何かあるんですか?」
「あれ、聞いてない?」
「何をですか。」
我がサッカー部は遠征に行けなかった奴らには毎年恒例の行事がある。それは---
「明後日、陸上部と試合するんだよ。」




