第09話 朝練、始まります。
大変お待たせしました。
「気を付け、礼!!」
「 「よろしくお願いします!!!」 」
グラウンドに挨拶をし、いつものようにランニングを始める。
二・三年生と一年生二人は遠征に行き、残りの一年生三人と俺の四人での部活が始まった。
と言っても高が四人でしかも一人は使い物にならない状態で出来る練習は限られているわけで・・・
「何しよっかな~」
(先生から一日目と二日目の練習メニューは任されたものの・・・)
「ぶっちゃけやることねぇ。」
「パス練」「鳥かご」「三角パス」「一対一」出来る範囲でメニューを考える。
ゴールデンウィークは午前中だけっと言われたが今考えてるメニューだけでは飽きるだろうし遠征組は一日中試合しているから出来ればこっちも同じ位体力を消費したい。
考えに考え抜いた結果は・・・・・
「筋トレしながら考えるか。」
俺は三人の中で唯一経験者の織田にメニューを伝え体育館に向かった。
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「さて、体育館に来たものの・・・・・」
俺は昨日ベンチプレスで死にかける体験をしたばかりだ。補助なしでのベンチプレスが危険なのは昨日改めて知った。なのでーーー
「ダンベルですっか。」
俺はダンベルの重りを調節し始める。すると
「アレ?岩瀬じゃん。」
声が聞こえた方を振り向くと二年二組で陸上部の藤原が居た。
「おう藤原、何お前居残り?」
「うっせぇ、お前も居残りだろ。」
「うっせぇ。筋トレすんのお前だけ?」
「いや、後何人か来ると思うぞ。良かったら一緒にすっか?」
藤原ナイス!俺が陸上部の筋トレに混ざればもれなく補助をしてもらえる。
「是非ご一緒させてください。」
こうして俺は陸上部の筋トレに参加させてもらえる事になった、よっしゃラッキー!
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「先輩、重かったら言ってくださいね。」
「うい。」
「先輩バーベルはゆっくり持ち上げて下さい。」
「うい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何が『よっしゃラッキー!』だよ三分前の俺、泣かすぞ!!!
俺の補助に若松さんが着いた。
藤原に補助を頼もうとしたら若松さんに声を掛けられ
「良かったら私に補助をさせてください。」
と、何故か目をキラキラと輝かせ申し出てきたのだが正直女の子に補助をしてもらうのは男としてのプライドが許さず、丁重にお断りしようとした所を藤原に目撃され
「アレレ〜岩瀬くん、もしかして若松ちゃんと一緒に筋トレするの〜?なら俺は補助しなくて良いよね?んじゃ二人でごゆっくり〜。」
と、わざとらしい口調で他の奴等と筋トレを始め俺は若松さんにお願いしたのだが・・・
(き、気まずいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
正直昨日は健郎も居たので何とか気が紛れたが二人になるとめっちゃ緊張してしまう。緊張し過ぎて『うい。』としか返事できない。
落ち着け、岩瀬隆晴。若松さんは善意で補助に着いてくれたんだ。緊張して筋トレに集中出来なかったら若松さんに申し訳ないぞ。
緊張を払う様にベンチプレスを始める。
息を吐きながらバーベルを上げ、ゆっくり自分の腕に負荷が掛かるようにそして息もゆっくり吐きながらバーベルを下げる。それを十回し三分間のインターバルの後、再び始める。
三セット目に入るとキツさの所為か緊張は消えかけていた。
緊張は消えた。がしかし、新たな問題が発生していた。
(・・・・・・やべぇよ、この体勢はやべぇよ!!!)
ベンチプレスの補助の仕方は、補助者は実施者の頭を跨ぐような位置で準備し、実践者がバーベルを上げられなくなったら、すぐ補助に入るような体勢なのだが考えてみてほしい。補助者は今、実施者の頭を跨ぐような位置で準備しているんだ。
そう、準備をしているだけ。今はまだ安全なのだ・・・いい匂いがするのを除いては。
ここで俺がバーベルを上げられなくなったらどうなるだろうか。若松さんはバーベルを持つために今より近づきに来る。それ即ち、俺の顔近くに若松さんの脚が近くに来る。今日短パンの若松さんの脚、つまり位置的に生足が、更に付け加えて太股が俺の顔近くに来るのだ。更に運良ければ腹チラも拝めるかもしれない!
どうでしょう、彼女いない歴が年の数=童貞の俺には刺激が強すぎるどころか死ぬのではないだろうか。
そこまで言うのなら、さっさとセットこなせばいいのでは?と思うだろう。けれどね、昨日筋トレを再開した奴がさっさとセットこなれると思うか?更に昨日の今日で疲れが回復すると思うか??
そう、俺もう腕限界来てます。後五回なのに腕上がんない。もう何十秒バーベル下げてんだよ、このままだとーーー
「先輩、そろそろ補助着きましょうか?」
キターーーーー!!!
補助の申し出来ちゃったよ。
腕は限界、補助があればもしもの危険は回避される。しかし補助が入れば若松さん(の太股)が俺に近づき、下手したら死ぬかもしれない。だがしかし、男としての本能が『太股間近で見たい腹チラ拝みたい』と言っている気がした。
太股と腹チラが間近で見れるなら死んでも悔いはないだろう・・・・・
「う、うい。お願いしーーー。」
『します。』を言い掛ける直前、俺はフッと思った。
ーーーいや、待てよ。童貞卒業せずして死ねないだろう。
更に冷静になる。
ーーー女の子に補助してもらうなんて男が廃らないか?
ーーーうん、廃るな。
「・・・しない!何とかラスト五頑張る!!」
「は、はい。が、頑張ってください。」
「うん頑張る!!」
体育館に響く大声を出し、若干引き美味の声で応援してくれた若松さんを気にする事なく俺は気力と根性でラスト五回を終えた。
後で藤原に聞いたのだがその時、俺の顔は何故かとても悔しそうな顔だったらしい。未練あり過ぎだろう・・・・・




