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超大陸パンゲアへ渡った神代家の異世界奮戦記  作者: 久遠 遙人


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第24話 女王討伐、そして西方戦線へ

 西方都市連合軍は大地溝帯を抜けるのに手間取り、当初の日程より一日の遅れが生じていた。


「カシム殿、何とか大地溝帯を抜けましたが、斥候によると魔鋼虫の動きが活発になり、こちらへ進行し始めたそうです」


 カシムの側近の一人が、伝令として報告に訪れていた。


「当初の予定より一日遅れか。魔鋼虫の巣《バラン》からは、だいぶ離れた場所での遭遇戦になるな」


「ドワーフ部隊の貨物飛行船が間に合えば良いが……」


 そして、《バラン》から30kmほど離れた荒れ地で、遭遇戦が始まった。


        ◇


 フェンリル化したラピスは今回はお留守番である。フェンリル化したせいで疲れたのか、透の背から降りて別室のベットで眠っていた。皆にはまだ知らせていないのと、最近よく眠っていたので誰も気にとめなかった。透は眠っているラピスの頭を優しく撫でて、「ありがとうな、ラピス。お休み」と言って側を離れた。


「では、手はず通り、皆さんよろしくお願いします」


 隆志の掛け声を受けて、透を先頭に選抜メンバーが巣穴に入っていった。


「へぇ、これが巣の中ってわけだ」


 ライガが初めて見る巣の内部に感心していた。


「俺も初めて見たが、螺旋状になって下っているのか」


 ガルドも声を合わせた。


 フェリスとリネットは物珍しげに周囲を見渡していた。


「ノア、様子は?」


「下の方にたくさん。向こう側に大きいのがいるよ」


「さっき幼体を叩いたけど、残りがまだたくさんいるはずだから、そっちはガルドさんとライガさんに任せていいですか?」


「おうよ、任されたぜ」


「ああ、あたしらに任せな」


「この先です」


 辺りには透が斬り払った魔鋼虫の死骸が転がっていた。


「相変わらずすげえ切り口だな」


「あんなに硬い奴を、まったく」


 ガルドとライガは切り口を見て呆れていた。


「この奥に幼体がいます。中には蛹から羽化したものもいるかもしれませんので、気を付けてください」


「ああ」


 二人は別れて幼体のいる部屋へ入った。


「何だこりゃ! これが魔鋼虫の幼体か。とんでもねえ数じゃねえか」


 ガルドは隆志から借りたヘッドライトで奥を見渡し、吠えた。


「ここまでとはねぇ」


 ガルドたちと別れた透たちが螺旋状の通路をさらに進むと、卵の孵卵室の前に出た。


 通路の奥から、卵を運ぶ魔鋼虫の群れが現れた。


「おにぃ、あれはキモいから、おにぃたちに任せる」


 結衣はそそくさと後方に下がってしまった。


「明日華、やってしまいなさい」


「ハイハイ」


 明日華とリーファが弓で、次々とそれらを倒していった。


 透も斬撃を放ち、最後の一匹を討ち取った。


「脚が多いだけで、そっくりなんだから」


「結衣ちゃん、あれって何なの?」


 フェリスが訳が分からず尋ねた。


「あれは、あれ。あたしと明日華の天敵。乙女の敵」


 リーファもノアもフェリスもリネットも「?」


 真白は我関せずと、お菓子をポリポリ。


 呆れ返った透が、


「さぁ、行くぞ」


 と話を断ち切った。


「すぐそこが孵卵室みたいだな」


 薄膜を切り裂くと、無数の卵がサークルの中に並べられていた。


「フェリスさん、リネットさん、卵を処分してください。あまり大きな魔法は使わないで。魔素枯渇が心配ですので」


「分かりました」


「おにぃ、割っちゃえばいいんでしょ?」


「そうだな」


「じゃあ、みんなで卵割りだ!」


「真白も頑張るのじゃ」


「わたしは兄様についていきます」


「じゃあ、俺と明日華、ノア、じいちゃんは女王討伐に向かう。後で合流しよう」


 透たちが螺旋状の通路を下りていくと、女王の部屋と思しき場所にたどり着いた。


 奥には、前回大地溝帯の巣にいた女王より、さらに大きい個体がいた。


 幼体や卵を殺られたことで、真っ赤に目を血走らせ、侵入者である透たちを射殺さんばかりの目で見ていた。


 その前には、女王のガーディアンであろう三体が女王を護っていた。


「透よ、あれか」


「そうです、じいちゃん」


「では、俺と明日華で露払いをするから、あれはお前に任せるぞ」


「うん、俺がやります」


 刹那、明日華が蒼天の弓を引き絞り、三本の矢が同時に放たれた。


 それぞれが魔鋼虫の頭に突き刺さり、身悶えしながら叫び声を上げた。


「飛燕」


 宗玄が斬撃を放った。


 三体は呆気なく二つに分かたれた。


 透もジャンプして、切断線に沿って刃を振り下ろした。


 女王も叫ぶ間もなく二つに分かたれ、最期を遂げた。


「ノア、もういないかな?」


「うん。向こう側に大きいのが一体いる。でも動いていないよ」


「何だろう、行ってみるか」


 ガルドやライガ、結衣やフェリス、リネット、リーファたちもそれぞれの役目を終え、透たちと合流した。


「こいつが女王か。また綺麗に二つに捌いているな」


「捌いているって……誰も食べないって。ガルドさん、持っていきます?」


「食えるのか?」


「ライガさんまで」


「ガルドさんたちは放っておいて、帰ろうよ、おにぃ」


「ああ、最後の一匹が螺旋状の通路の向こう側にいるらしい。地上へ抜けられるだろうから、行ってみようと思う」


 皆で最後の一匹のもとへ向かった先には、大型の幼体がいた。


 明日華が矢を放つと、頭部に深々と矢が突き刺さり、絶命した。


「明日華の弓も相当だな」


 ライガが呆れて言った。


「やっぱりこの家族は、おかしいって」


「明日華、褒めてもらえたよ」


 結衣と明日華がハイタッチして喜んでいた。


「褒めてねえよ」


 ガルドは呆れて笑っていた。


 フェリスとリネットも、少しだけおかしいと思っていた。


「ふー、これで終わりかな。早くシャワー浴びたい」


「そうですね」


「俺は一杯飲みてぇ」


「同感だ」


「またお酒の話?」


「勝利の美酒だからな、最高だぞ」


 ノアが周囲一帯を索敵し、魔鋼虫の殲滅が完了したことを隆志たちに報告した。


 そして、モモを通して《トーラス》掃討作戦の終了を全部隊に通達した。


「みんな聞いてください。西方都市連合軍が《バラン》から30km離れた場所で遭遇戦に入ったとの連絡がありました。作戦遂行の準備も陣地の構築も難しいでしょうから、極めて良くない状況にあるかと思われます。この船はこのまま西方に向かいます。セシリアさんには魔素の回復に努めて頂くため魔法士部隊へ戻って貰いましたので、フェリスさん、リネットさんも残ってください。」


「俺は行くぜ」


「獣牙族の仲間がいるからな。当然」ガルドとライガが吠えた


 その時、後方の救護隊にいたセリナもブルートリトン号にやってきた。


 皆が無事なのを見て、ほっとしていた。


 特に透の元気そうな姿を見て安心していた。


 話を聞いていたセリナも、


「私も行きます」


「分かりました。では、すぐにでも出発します。パルムちゃん、準備を」


「はい、パパさん。いつでもいいよ」


「隆志よ、白も連れていけんか」


「船室には入りませんよ」


「パパさん、吊り下げてなら行けますよ」


「父さん、6~7時間はかかりますよ」


「ちょっと無理があるか」


「そうですね。この後、アストレア連合軍は態勢を立て直し《オメガ》に向かいますから、向こうで合流すればいいのではないですか?」


「では、白に言って聞かせるから、御者を付けるよう騎士団長にお願いしてくれ」


「分かりました」


 そこへ作戦終了の報告を受けたオーギュスト騎士団長がやってきて、白の件を快諾してくれた。


「では、すぐにでも発ってくだされ。あちらの窮地を救えるのは皆さんたちしかおられない。我々は《オメガ》を目指します。あちらが片付き次第、こちらへ戻ってください。皆さん、どうぞご無事で」


「はい、全力を尽くします」


 こうして神代家一行を乗せたブルートリトン号は、西方の戦線を目指して飛び立った。



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