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存在進化(1)

 多少の犠牲を出しながらもダンジョンへと帰り着いた直人なおとらは回収した死体の納品と新しく手に入ったステータスなどの確認を兼ね、管理室に赴いていた。


「なんとか時間内までに間に合ったな」

「そうですね~マジシャンは機能しなかったですし、それに女神の介入……もう少し早くに仕留めておくべきでした」


 申し訳なさそうに落ち込むレイシス、そんな彼女を見かねた直人が励ましの言葉を贈る。


「まああれは対処のしようがなかったからそう気にするな。それよりも今はステータスの確認だ」

「そ、そうですね!」


 管理室に用意したソファーに腰掛けながら気になる画面を確認していく。


「やっぱり気になるのはこの存在進化ってやつか?」

「ですね!これはいわゆる種族進化に似たようなものでして―――……」


 種族進化、ゴブリンがホブゴブリンに、エルフがハイエルフになるように種族としての能力値の上昇だけでなく見た目や固有能力といったものも変わってくる。


 レイシスの説明では存在進化もまた種族進化と似たような特徴を秘めているらしい。


「ただ一つ種族進化との違いは例えレベルの概念がない直人様や進化することのない人種族であっても存在進化であれば進化することが可能であるという点です」


 ゴブリンなどのこの世界の魔物には一定のレベルに達すれば種族進化というものが起きるのだがレベルの概念がない直人やレベルの概念があるにも関わらず進化を許されない種族、人族であっても存在進化であれば起こりえるということらしい。


「そうか、この貧弱なステータスが正直心残りではあったが村攻めのおかげで思わぬ収穫を得られたな」

「ですね!」

「じゃあ早速存在進化をやるが……まあ大丈夫だと思うがもし侵入者が来た場合の対処は任せるぞ?」

「お任せを!ただ多分数分ほどで終わるものと思いますのであまり気張らず挑んでください!」

「りょ~かい」


 直人はステータス画面を開くと存在進化の項目を開く。そのままなんの躊躇いもなくそのボタンを押すとテレビの電源を引っこ抜いた時のようにいきなり目の前がプツンと暗転する。


「これは……」


 暗転した視界、自身で発した声を自分自身で聞き取ることもできない虚無。無重力空間を漂っているような感覚、触れることも触れられることもないこの空間、普通の精神であればこの空間に居続けることはできなかっただろう、そんな無気力な空間。


 精神は安定しているよう思えるが不安だけが積り積もっていく、そんな感覚の最中体のあちこちに異変が起こる。


「あつっ!」


 デコや手足、腰といったいたるところから焼けるような痛みが直人を襲う。


「う、ぐうぅぅ……がああぁぁぁぁっ―――――!!!!」


 顔を抑え、体を丸めてなるべく楽な体勢をとるが痛みは内側から起きているため何の足しにもなりはしない。


 痛みはただ無差別に直人を襲い、地獄のような苦しみが体感で何時間も続き永遠にも思える痛みに死さえもよぎった時だった。ふっとさっきまでの痛みが嘘のように全身の痛みが引き気づいたときにはあの虚無空間はどこにもなく、見知らぬ天井を眺めていた。


「はあ……はあ……はあ……はあ~~~……ここは……」


 直人は体全体が暖かで柔らかなふかふかとした感触に包まれているのを感じた。どうやらいつの間にかベットへと移動させられていたらしい。


 目線だけをきょろきょろと辺りを見渡してみるが周りにレイシスの気配はない。


 とりあえずレイシスに目覚めたことを報告するためまだぼやけ覚醒しきっていない意識のまま起き上がろうと右腕を動かそうとするが動かない。というか動かせない。


「ん?」


 何か弾力のあるぷにぷにとした触感、つい最近にも同じようなものを触ったような気もするクセになりそうな感触の柔らかな何か―――それは何故か鷲掴みになっているため嫌な予感を感じながらも二、三度触れてみると……


「んっ……んあっ――……」


 艶っぽい喘ぎ声が帰ってきて直人の嫌な予感が的中する。


 ばっ!と勢いよく布団を引きはがすと全裸のレーナが直人の右腕を太ももに挟みながら抱き枕代わりに抱き着いて隣で寝転がっていた。


 そして直人も何故か裸になっており、また右手には揉み心地のよいレーナのおしりがぴったりと収まっていた。


「うぅうおわぁぁっ―――!!??」


 慌ててレーナのおしりから手を離すとその拍子に彼女を起こしてしまう。


「んん?あれ?直人様?―――お目覚めになられたのですね!」

「あ、ああ……っていや、そうじゃなくて……なんで君がここにいるんだ?」


 彼女、レーナは出発前もしもスキルの効果が切れてしまったときの備えのため鍵付きの個室に閉じ込めていた。そんな彼女が部屋から出て、直人と一緒のベットに寝てるこの状況に直人は困惑していた。


「あっ、えっとですね、レイシス様から直人様のことを頼まれましたのでこちらにお運びいたしたのです!」


 レイシスの差し金か……。


 まあ彼女が判断したのであれば多分大丈夫なんだろうがそれとは別にまた新たな疑問が思い浮かぶ。


「ん?ちょっと待て、じゃあ何で俺は服を脱がされているんだよ!?」

「えっと服はですねレイシス様が言われていたのですが存在進化?するときに服などを着ていたら破けちゃうから脱がせてくれって言ってました!」

「そうなのか、ってじゃあ君が服を脱ぐ理由って全然ないよね?」

「……てへぺろ」


 直人の口からため息がこぼれる。


 まあこんな隙だらけな状況で攻撃されなかったことを喜ぶべきか……。


 っとそんなことを考えながら部屋を見渡すとベットの横に置いてあった鏡に自身の姿が映し出される。


「―――ッ!?なんじゃこりゃ?」


 鏡に映った自分の姿はいつも見ている姿とは大きく異なっていた。


 デコからは二十センチほどのツノが生え、全身には黒い刺青のようなものが波のように至る所に現れており、また体も少しばかり大きくなっている。


 元々筋肉質ではあった直人の肉体にさらに上から筋肉がついたかのようにそんな感覚、視点もやや高くなっている。


「す、ステータス―――」


 慌てて直人は自身のステータスを確認してみるとこちらも驚くほど変化していた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:目黒直人 種族:ゴブリンエンペラー? 年齢:エラー 職業:なし 状態:エ*ー

 称号:異世界の人間、女神の契約者、未来の王、蹂躙者、虐殺者、ゴブリンキング


 存在レベル:6 SP:319


 HP(体力):67 MP(魔力) :34 STR(攻撃力):67

 DEF(防御力):45 INT(知力):90 DEX(器用):28

 AGI(素早さ):32 LUK(幸運):136


 スキル:精力増強 魅惑の瞳 感情鑑定 異種交配 剣客抜刀術 亜空間倉庫Lv1 格闘術Lv2 万能武器種オールラウンダー 号令 覇気


獲得可能スキル:身体能力強化Lv1 SP:15、ステータスアップLv1 SP:24、素早さ上昇(アジリティーアップ)Lv1 SP:12、存在変化メタモルフォーゼLv1 SP:50、 蒼穹探知スカイラーナーLvMAX SP:35、覇王覇気LvMAX SP:300、黒鋼猛撃 SP:73、夜斬の印Lv1 SP:65 降神葬 SP:666 体力上昇ポイントアップLv1 SP:21 攻撃力上昇ストレングスアップLv1 SP:27 魔力感知Lv1 SP:55 魔力操作Lv1 SP:55 魔術配合Lv1 SP:25 火炎球ファイアーボールLv1 SP:5 怠惰 SP:200 強欲 SP:200 暴食 SP:200


特別クエスト【レフィー・アドラス解放クエスト】

クエスト対象者の存在の確認……成功

クエスト対象者の復帰を確認……成功

停止していたカウントを復帰、残り時間:七時間

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 いろいろと確認しないといけないことは多いがクエストの開始時間が眠っている間止まっていたのはうれしい誤算だ。


「えっと……レーナ、さん?」

「はいなんでしょう?あっ!それとさんづけとかしなくていいですよ!」

「そ、そうか?んじゃレーナ、レイシスのやつはどこにいるんだ?」

「あっ!そうでした!レイシス様に直人様が目覚められた場合声をかけるように言われてたんでした!ちょっと待っててください!」

「あっ、ちょ……!」


 そう言い残すとレーナはレイシスを呼びに裸のまま外へと飛び出していった。


 それから数分後、奥からものすごい勢いで直人の元へ飛んでくる光が一つ。


「な~~~お~~~と~~~さ~~~ま~~~!!」


 勢いをつけたレイシスはそのまま直人の胸へと飛び込みおいおいと泣き始める。


「うべええええぇぇ~~~~~直人様っ~~!!よ”か”った”て”す~~~~もう目覚めないかと思いましたよ~~~!!!」


 直人の胸に顔を押し付けながら泣き尽くすレイシス、その状況に直人も困惑の表情を見せる。


「あーっと、レイシス……なんか知らんが悪かったな?」

「い”い”でず!直人様が目覚められただけで……ズビッ!……よかったです!」


 少し体が大きくなったためか今の人差し指では潰してしまいそうではあるが慎重にレイシスの頭を撫でる直人、しばらく撫でていると落ち着いてきたのか深呼吸をし始める。

 

「スー……ハー……スー……ハー……ご、ごめんなさい、直人様。私、取り乱しちゃって……」

「いや、それは大丈夫。それよりもあんなに慌ててたが何かあったのか?」

「何かってそりゃー慌てますっよ!だって直人様半月も目を覚まさなかったんですよ!?」

「はあ!?」


 半月、確かに騒ぐだけの時間ではあるか。


「それに生きているはずなのに存在も危うい状況だったんですよ!」


 存在が危うい……どういうことだ?―――ん?そういえば特別クエストの確認事項に存在の確認なるものがあった、それが関係しているのか? 


「まあとりあえず心配かけて悪かったな」

「いえ、絶対に目を覚ますって信じていましたから!」

「そうか」


 とりあえず二人でほっと一息、再開を喜び合うと自身が眠っている間のことと自分に起きたことの情報交換をし始めた。

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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