表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/237

切り札

 俺達は、宿営地を軽装甲機動車で出発し、古代遺跡歳へと行く。

 城門の警備兵達は、軽装甲機動車を見ると、敬礼をするだけで止めてチェックすらしなくなっている。

 顔パスではなく車輌パスとなっているが、この異世界では同じ車輌装備を持っているのは、オブライエン少佐の一派だけなので、問題にはならないだろう。

 俺も、警備兵達へ敬礼を帰しながら一応少しだけ速度を落として、古代遺跡都市の城門を潜った。

 古代遺跡都市を十字型に走っている舗装路を、羊皮紙の地図へ印を付けた場所まで走り続ける。

 助手席に乗るロックと、ロックの膝の上に乗るコロニちゃんが、周りの景色を確認しつつ、羊皮紙の地図を眺めながら、右折と左折を指示してくれるので、その指示に従って軽装甲機動車を走らせ続けた。


「此処です、ジョーさん」


 ロックがそう言うと、コロニちゃんも何度も頷く。

 俺は、軽装甲機動車を停止させて、目的の場所を確認した。

 そこは、何もない平面の舗装された広場だ。

 しかし、生命体複写魔法陣の様な文様は無く円形の広場でも無い。

 それは、広い駐車場の様な場所なのだが、地面には一切何も描かれて居ない場所だった。

 かと言って、滑走路にしては長さが足りない感じだったが、浮遊魔法を使う垂直離着陸機であれば、此処でも十分に空港として使用可能だろう。


「ロック、何処が入り口なの?」

「彼処に見ぇる小さな建物です。行きましょぅ」


 ロックは、そう言うと軽装甲機動車のドアを開け、コロニちゃんを車外に下ろし自らも外へ出る。

 俺も、軽装甲機動車のエンジンを切り車外へと出ると、ナークとミラも俺に続いた。

 ロックとコロニちゃんは、小さな建物へ一直線に歩いて行く。

 俺とナーク、ミラもその後へ続き、広場を見渡しながら小さな建物へと向かう。

 小さな建物には、窓は無く、扉らしき凹みが一箇所あるだけの直方体のモニュメントだった。

 例によって、この凹みが自動扉になっていて、ロックが手を凹みに触れると、静かな作動音と共に扉が開く。


 内部は暗かったが、扉が完全に開ききると、内部の壁全体が光りだし明るくなる。

 そして、地下へと続く階段も見えてきたので、地下入り口の階段を降りて行く。

 階段は、何度か踊り場を経て、一番下まで続いていた。

 元の世界のビル内に設置されている階段と同じで、殺風景この上ない階段だ。

 最下段まで降りると、再び壁に凹みがあり、そこへロックが手を触れると、扉が開き始める。

 開いた扉の内部は、何もない広々とした地下空間だったが、天井までの高さは10m程もあり凄く高かった。


「此処が、指揮者(コマンダー)ゴーレムが有った地下室です」

「素朴な疑問なんだけど、ロックはどうやって指揮者ゴーレムを此処から出したんだい?」

「天井が開ぃて、床が上昇するんですよ」

「……まるでサンダーバードだな」

「サンダーバードって何ですか?」

「いや、忘れてくれ。開閉式の天井にエレベーター装置か。空母と同じ構造か……」

「空母とは、何ですか?」

「元居た世界の軍艦で、航空母艦の略語だよ。航空機を船内に積み込んでいて、それを甲板まで運搬する装置も装備していたんだ」

「ぁのアパッチ、ヘリコプターでしたっけ、ぁれを船に積んでぃたんですか?」

「そうだよ。何十機も積み込んで、それを飛行甲板から離着艦させてたんだ」

「どんな敵が居たんですか? ジョーさんの世界には?」

「人族同士、国同士がお互いを牽制し合うために軍備が不可欠だっただけさ」

「実際の戦争も有ったのですか?」

「俺の生まれた国では無かったけど、俺が生まれる以前には有ったよ」

「そぅですか……」

「勇者コジローさんが戦死された戦争だよ。結局、戦争は敗戦だったけどね」

「ぇっ、敗れたのですか?」

「ああ、元々侵略戦争だったしね……ガウシアン帝国と同じさ。で、敗戦から学んで敵国からの防衛戦力だけに限定して組織されたのが、自衛隊って訳さ」

「成る程……でも、ぁのアパッチみたぃな凄ぃ航空兵器を作れるなんて、凄ぃですよ」

「はははは……あのアパッチ・ロングボウは、母国との戦いに勝った国が作った航空兵器だよ。それを買って使っているんだ」

「ぇぇぇっ!、敗戦国に兵器を売るなんて、信じられません! 戦闘車両もですか?」

「いや、車輌は自国の独自開発だよ。母国と戦った国も今は、殆どの国が同盟国だしね。ガウシアン帝国とも、そうなれば良いんだけど、ガウス皇帝の決断次第と言ったところかな……。さて、無駄話が長くなったね。作業を開始しようか?」

「はぃ、指揮者ゴーレムを出して下さぃ」

「判った」


 俺は、ロックとの無駄話しを止め、無限収納(インベントリー)から指揮者ゴーレムを取り出す。

 直ぐにロックは、指揮者ゴーレムまで駆け寄って、掌に飛び乗ると胸の開閉扉を潜り、内部の操縦席へと乗り込んで行く。

 ロックは、指揮者ゴーレムの胸の扉を開けたまま、その場で立ち上がらせてから、指揮者ゴーレムの右掌で壁を触らせる。

 しかし、壁は何の反応も示す事無く、何事も起こらない。

 俺は、振り向いて、後ろに立っているミラへ言う。


「ミラ、悪いけど君も壁に手を触れてくれるかい?」

「えぇ? 私がですか?」

「そう、ミラじゃなきゃ駄目なんだ。俺やナークじゃ駄目なんだよ」

「はい、判りました。触ってきます」


 ミラは、そう言うと指揮者ゴーレムが掌を当てている壁まで走って行き、自分の右手を差し出して掌で壁を触る。

 と同時に、ゴゴゴゴ……と大きな音を立てて、壁が横方向に動き出したのだ。

 壁が完全に横方向へスライドすると、大きな地下空間が目の前に現れた。

 そう、此処が人工頭脳が教えてくれた、指揮者ゴーレムの製造工房兼、整備工房の地下空間だ。

 此処へ入るには、二名の古代人による認証が必要なので、ロック一人では開ける事が出来なかったのだが、ミラも同じ古代人の遺伝子を持っているので、無事に認証がなされて壁が開いたと言う訳だ。

 元居た世界でも、大陸間弾道弾の発射システムなどでは、二名による認証が必要となっている。

 全く、古代人のアーティファクトは、凄いとしか言い様が無い。


 壁が開いたので、ロックの操る指揮者ゴーレムがゆっくりと中へ歩を進める。

 ミラがそれに続き、俺とナーク、そしてナークが手を繋いでいるコロニちゃんも後に続く。

 ケサラとパサラも、俺とコロニちゃんの周りを飛びながら、遅れずに着いてきている。

 二人には、危険察知を最大限に働かせる様に予め頼んであるので、此処にセイレーンが居たのならば既に警告してくれている筈だから、危険は無いのだろう。

 そして、何も無かった先ほどの地下空間と異なり、此処には多数の工作機械と思しき物や、明らかに武装と思われる装備が有った。


 ロックが、指揮者ゴーレムを待機姿勢にして、掌に乗って降りてくる。

 そして、俺の方へミラと共に駆け寄ってくるなり言った。


「ジョーさん! ぁれは何ですか?」

「指揮者ゴーレムの装備や武装だ。剣は判るよな。そして隣に有るのが恐らく銃だな」

「銃って大きさじゃ無ぃですよ。巨大な大砲です!」

「ああ、調べてみよう」


 俺達は、剣や銃の様に見える武装の元まで走って行く。

 剣には、柄の部分に三色の巨大な魔結晶が埋め込まれているので、恐らく火、風、水の魔法を切り換えて使える指揮者ゴーレム専用の巨大な魔剣なのだろう。

 そして、俺が注目したのは、銃の様に見えた巨大な物だ。

 砲身に見える部分は、上下二本の金属製と思われる長いレール状になっていて、それらを透明なパーツで保持し、グリップの部分には赤紫色の巨大な魔結晶が埋め込まれている。

 トリガーの先には、銃弾、いや砲弾を供給するマガジン状の箱も装着されているが、赤紫の魔結晶を見た瞬間、俺はこの巨大な銃が何であるかを理解した。


「こ、この巨大な銃は、レールガンだ!」

「レールガンって何ですか?」

「雷の力で弾丸を発射する銃だよ。俺達の使う銃の弾丸よりも遙かに高速な超音速の弾丸を発射できる銃だ」

「雷の力で発射する銃……」


 なんと、古代人の作り出した対ドラゴンの切り札となるアーティファクトは、元居た世界でも未だ実験段階の未来兵器である電磁砲、レールガンだったのだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] かの戦争は、侵略戦争だったのか?疑問だ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ