雷竜迎撃準備
カタンの町と古代遺跡都市へのドラゴン来襲情報は、冒険者ギルドと警備隊へ伝えた。
その対策も、主にカタンの住人達の避難体勢であるが、古代遺跡都市からの避難が混乱無く行えれば、雷竜の攻撃対象が古代遺跡都市、いや恐らく人工頭脳なので、それに巻き込まれなければ良いのだ。
取り敢えず、明日からは巨大魔法陣の周辺だけは、立ち入り禁止を徹底してもらう事にした。
しかし、そんな命令が出れば、あの魔法陣に何か有るのではないかと勘ぐる者が、絶対に現れるだろう。
それが、冒険者や探索者の欲から出る行為であったとしても、それは仕方が無い事だ。
兎に角、人命に関わる事なので、冒険者ギルドと警備隊には頑張ってもらうしか無い。
俺達は、警備隊宿舎を後にし、俺達の宿営キャンプ地へと戻る。
事態は何時、雷竜が襲って来るのか全く判らない状況なので、古代遺跡都市探索よりも、雷竜迎撃のための火器装備の訓練に重点を置く事にした。
雷竜の来襲は、今夜かもしれないし、明日かもしれないので、急を要する。
銃器はもちろんの事だが、16式機動戦闘車の操縦と、主砲の操作と射撃方法を"九ノ一"達に覚えて貰うのが最優先事項だ。
現状では、16式機動戦闘車を二輛動かすのがやっとの状況だが、"九ノ一"達が操作を覚えてくれれば、あと三輛は運用可能となり、合計五輛の一個小隊が編成できる。
16式機動戦闘車の主砲は、本来であれば対地上戦用ではあるが、相手が巨大な雷竜であれば地対空戦であっても、それなりの威力を発揮してくれるだろう。
加えて、手持ちのロケット弾である対戦車ロケット砲のパンツァーファウスト3も、89式小銃と比べれば十分に雷竜へ対抗可能な破壊力を持っていると思われる。
しかし、雷竜が地上へ降りてきてくれずに、高々度からだけの雷撃をしてくる場合には、やはり航空戦力が不可欠だ。
そうなると、俺がAH-64Dアパッチ・ロングボウを操縦して、雷竜と空中戦をやるしか無い。
出来れば、もっと航空戦力が欲しい所だが、唯一飛行可能な偵察者ゴーレムでは、全く戦力にはならないだろう。
加えて、雷竜が目視では、全く見えないステルス機能まで備えている点だ。
しかし、これは目では見えないと言うだけで、レーダーであれば探知可能だと思われるので、本来のステルス機能では無い。
だとすれば、やはり港湾都市イサドイベの事件の後、俺の無限収納に加わった装備を、今回の作戦で使うのがベストなのだろう。
正直、何でこんな装備が加わったのか、俺は不思議で仕方が無かったのだが、その理由がやっと今、判った。
どうやら、女神様は次に遭遇する危機に対して、有効な装備を与えてくれている様だ。
相手は、未知の戦闘能力を持った雷竜なので、装備の出し惜しみを、している場合ではない。
「召喚! 16式機動戦闘車」
俺の目の前には、新たな16式機動戦闘車が何処からとも無く出現した。
運用可能な人数分の16式機動戦闘車を、毎日一輛ずつ召喚して行くしか無い。
取り敢えずは、既存の一輛に加えて、これで二輛だ。
"九ノ一"達の操縦や射撃訓練には、何とかやりくり出来るだろう。
加えて、新たに無限収納に加わった装備を召喚する。
「召喚! 11式短距離地対空誘導弾」
目の前に、二輛の車輌が現れる。
一両は、誘導弾発射装置-搭載車両で、所謂ロケット弾ランチャーを搭載した車輌だ。
そして二輛目は、射撃管制装置-搭載車両で、こちらは対空フェイズド・アレイ・レーダーを搭載している。
このロケット弾で有れば、雷竜が見えなくても、また音速を超える速度で飛行してきても、十分に探知、迎撃できる。
しかも、ロケット弾自体にも、目標を自動追尾するアクティブ・ホーミング機能が搭載されているので、発射さえしてやれば、後は自動で目標を撃破可能だ。
一輛に四発のミサイル・ランチャーが搭載されているので、この装備も毎日召喚を行い、発射可能数を増やしておく必要がある。
恐らく、地対空の攻撃では、16式機動戦闘車の主砲よりも命中率や破壊力は上だろう。
長い名称なので、略して11短SAMとも呼ばれるが、無限収納からの召喚では、正式名称を念じるか、言葉に出さないと召喚出来ないのだ。
俺は、召喚した11式短距離地対空誘導弾のシステムを直ちに稼働状態にし、対空警戒を開始した。
しかし、この新装備でも決して油断は禁物だ。
何しろ、雷竜は古き神々が作り出した最強の生物兵器なのだ。
最新型のミサイルであっても、ダメージを与えられる保障は無い。
強力なゴーレムを生み出した古代文明人達が、自分たちの都市を捨てる程の強敵なのだから。
そもそも、映画などでも自衛隊の装備が、怪獣に勝った物語が無いのは、夢物語だからだと言えばそれまでだが、ここはファンタージーな異世界。
夢物語の世界が、そのまま現実の世界なのだから、俺には嫌な予感しかしないのだ。
「それじゃ、サクラさん達"九ノ一"は、全員が装備の扱い方や車輌の操縦訓練をしてくれ。教官は、アンとベルだ」
「「「「「はいっ! 主様」」」」」
「ジョー兄い、優先的に訓練するのは、やっぱり主砲の扱い?」
「そうなるな。砲弾の装填と、射撃や照準の仕方だけど、自動追尾の操作をしっかり教えてくれ」
「判ったよ。慣れて居なくても自動追尾なら、何とかなるよ」
「ああ、ただ今回の標的は、高速で飛び回る可能性が大きいので、その点も要注意だ」
「ジョー様、砲弾は榴弾が良いのでしゅか? それとも徹甲弾でしゅか?」
「判らない。どちらが雷竜に有効なのか、全く判らない。鱗が神鉄並みに硬いと人工頭脳に言われたからな」
「そうでしゅか……言い伝えでは、大昔にドラゴンが来襲して、半日で都市が跡形も無くなったと聞かされていましゅ。私は怖いでしゅ……」
「大丈夫だよ、ベルちゃん。ジョー兄いの爆裂魔法なら、ドラゴンも尻尾を巻いて逃げるよ」
「そうでしゅね! 私、頑張りましゅ!」
「うん、アタイも頑張るよ」
アンと違い、ベルはドラゴンを怖がっている。
それが悪い事では無いし、正直なところ俺だって不安だしドラゴンに対しては恐怖を感じる。
一体、ドラゴンとはどんな怪物なのか想像も出来ないので、怪獣映画を連想するしか無いのだ。
加えて、ドラゴンは神獣でもあり女神様の眷族でも有ると言う、矛盾した言い伝えも有る。
恐らく、雷竜は伝説の邪竜であり、女神様の眷族では無いのだろう。
そして、女神様が俺の装備に加えてくれた、今回の11式短距離地対空誘導弾であれば、対抗できるに違いない。
俺は、考えを切り換えてポジティブ思考で、今回の雷竜襲来を乗り切る事にする。
"九ノ一"達への訓練は、アンとベルに任せて、俺とロックは、再び古代遺跡都市へと戻る事にした。
人工頭脳が教えてくれた、|守護者《コマンダー」 ゴーレムの追加装備や武装を探しに行くためだ。
二人だけでは、セイレーンとの遭遇も警戒して、ナークにも同行をしてもらう。
また、ガイドとしてコロニちゃんにも着いて来てもらう事にした。
ミラにも、怪我や事故に備えて、一緒に同行してもらう事にしたが、人工頭脳に言われた事項によると、ミラが同行してくれないと守護者ゴーレムの新たな装備や武装が入手出来ない可能性が高かったのだ。
今回の古代遺跡都市探索は、俺達4人とコロニちゃんなので、軽装甲機動車で行く事にする。
緊急事態なので時間が惜しいため、昼食も保存食や缶飯で簡単に済ませ、早々に出発だ。
俺は、守護者ゴーレムを無限収納に格納してから、軽装甲機動車に乗り込み宿営地を出発したのだった。




