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古代遺跡都市

 俺達は、朝飯を終えてからグループを二つに分けて、訓練組と探査組に別れて行動を開始する。

 訓練組は、"九ノ一"のメンバーへ基本的な銃の扱いを教えるため、アンが教官となりサクラさんも含めて"九ノ一"の全員が学ぶのだ。

 そして、俺とロック、ナーク、ベルが探索組となり、コロニちゃんのガイドの元、古代遺跡都市へと入る。

 今回の探索行動は、危険度も低いのでミラも同行する事になった。

 何か有れば、ハンディー・トランシーバーで緊急連絡が行える様にと、アンとサクラさんが装備する事になっている。


 カタンの町の北側の門を出ると、一直線に古代遺跡都市の南門まで伸びている道路がある。

 俺達は、その道路を歩いて行くのだが、この道は石畳では無く舗装された道路の様にも見えた。

 この異世界で、初めて見た舗装されている道路。

 元居た世界のアスファルト舗装された道路ではなく、一枚板の大理石で作られた様にも見えるので、むしろコンクリート製の道路の様だ。

 工作精度は、素晴らしく全く凹凸などはなく滑らかだ。

 しかも、道路中央から道路の端までは、雨対策の傾斜角までも施されている。

 本当に、この道路は千年以上前に作られた道路なのだろうか。


 俺は、複雑な違和感を抱きながら、古代遺跡都市の南門まで歩いて行く。

 そして、南門まで着いた俺は、更に違和感を増大させる事になった。

 古代都市を囲っている城壁も、石を積んだ石垣では無く、道路と同じコンクリート製にも思える継ぎ目の全く無い構造だった。

 しかも、千年以上も前に建造されたと伝えられているにも関わらず、城壁は全く損傷している箇所が無い様なのだ。

 これは、いくらこの世界がファンタジー的な世界であっても、明らかに異常な建造物だ。

 元居た世界で有れば、完全にオーパーツ構造物と言われるだろう。


 古代都市の城門には、複数の警備兵が入場票をチェックしており、既に多くの入場者が列を作って順番待ちをしていた。

 俺達も順番待ちの列の最後尾へ並び、入場チェックを待つ。

 此処では、身分票表示板のチェックは無い様で、入場票を確認しているだけの様だ。

 直ぐに俺達の順番が回ってきて、各々が首から提げている入場票を警備兵に見せる。

 この警備兵は昨日、俺達が警備兵宿舎を訪れた事を知っていた様で、俺達が近づくと敬礼をしてきた。

 俺も敬礼を返して入場票を見せると、警備兵は「お気を付けて!」と言葉まで掛けてくれた。


 南門を潜り古代都市へ入ると、その偉容、いや異様さに驚かされた。

 これは、まるで元居た世界の都会が、誰も住まなくなって廃墟になった様子と酷似していたのだ。

 住居らしき建物は、全てが道路や城壁と同じ、継ぎ目のないコンクリート製の様に見え、窓と思しき四角い穴が空いてる。

 多くの建物は、3階から5階の構造で、大きさは異なってはいるが建築構造は同じだった。

 古代都市内の道路は、道幅も広く造られており、明らかに歩道と思われる一段高い側道までもが有る。


 もしも、この廃墟の街へ俺が、いきなり連れてこられたら、それは核戦争の後の未来へ来てしまったのかと思うだろう。

 つぶさに廃墟の都市を観察してみると、コンクリートらしき構造物ばかりで、金属製やガラス製などが一切無い事に気がつく。

 俺は、疑問に思ってロックに尋ねて見る事にする。


「ねえ、ロック。この古代都市には、金属構造物やガラス窓などは無いの?」

「はぃ、大昔は金属製の構造物やガラス製の窓なども有ったと聞いてぃますが、全てが探索者によって何百年も前に持ち去られたのだそぅです」

「なるほどね……。となると、あの建物の中に入っても、何も無いという事なんだね」

「そぅです。今は、地下の隠し部屋が探索の中心です。指揮者(コマンダー)ゴーレムも、地下の隠し部屋で発見しました」

「そうなんだ……守護者(ガーディアン)ゴーレムは?」

「守護者ゴーレムは、一箇所に集まってぃる場所がぁります。大きく重ぃので、持ち帰りたくても持ち出せなぃのですね」

「そう言う事か……判った。ありがとう」

「過去に、数体だけ王国の王都に運ばれた事が有るとは聞いてぃますが、詳細は僕も知りません」

「余程の人数や馬を使わないと無理だろうからね。船に積むにしても、重いから船が沈みそうだしね」

「そぅですよね。どぅやって運んだのか僕も興味は有りますが……」


 なるほど、この廃墟の都市は、エジプトのピラミッドと同様に、流用できる素材は全て剥ぎ取られてしまった状態なのか。

 ピラミッドも、建造当時は石積みの階段構造の上側へ、石灰岩による化粧板が施されていた様だが、殆どが略奪されて他の建造物の素材として流用されてしまったのだと聞く。

 それにしても、構造物が破壊されている様子は無く、頑丈に作られている様だ。

 俺は、そこで思い出したのが、守護者ゴーレムの強度だった。

 石造りにしては、強度が高く中々破壊が出来なかった。


 恐らく、これらの建造物も守護者ゴーレム並みの強度を持っているのだろう。

 であれば、この異世界の今の技術力では、容易には破壊出来ないと思われる。

 失われた古代文明の技術力は、既に指揮者ゴーレムなどのアーティファクトで思い知らされているが、この古代遺跡都市でも改めて技術力の高さを痛感した。

 唯一の疑問点としては、これほどの技術力を持ちながら何故、古代文明が崩壊、滅亡してしまったかと言う事だ。


 俺は、ロックが見ている地図とは別に、スマートフォンのマップ表示を見ているのだが、巨大な古代遺跡都市の中心部は、何故かぽっかりと何もなく、池の様に水が溜まっている様に見える。

 そして、俺達の進んでいるのは、そのぽっかりと何もない都市の中心部だ。

 俺は、再びロックへ質問をした。


「ロック、この古代都市の中心部は、池か沼なの?」

「はぃ。そこは大きな池になってぃます。水が湧き出てぃるのではなく、巨大な穴に雨水が溜まった様です」

「穴があるんだ……。元々、作られた穴なのかな?」

「僕には判りませんが、道路や建物も、そこだけは破壊されてぃます」

「破壊?こんなに大きな、しかも正確な円形に穴を掘るのだって大変なのに、破壊とはね。ちょっと興味が湧くな」

「その池の手前に、守護者ゴーレムが大量に置かれてぃるのです」

「ああ、此処だね。未だ大分先かな」

「はぃ、ぁと1時間位は歩かなぃと行けません」


 後一時間となると、コロニちゃんは大丈夫だろうか。

 幼い頃から体力は人族よりも高い獣人族とは言え、8歳の幼子だ。

 俺は、振り返ってナークと共に歩いているコロニちゃんへ尋ねてみる。


「コロニちゃん、疲れてないかい?」


 するとコロニちゃんは、笑顔で頷いた。

 今日は、昨日引っ張って居た箱車は家に置いてきて、小さなリュックサックの様な袋を背負っている。


「疲れたら遠慮なく言うんだよ。休憩するからね」


 コロニちゃんは、何度か頷いてからナークの手をしっかりと握る。

 尻尾は、左右に振られており特に疲れては居ない様だ。

 服装は、昨夜と同様に"九ノ一"からの、お下がりメイド服だ。

 メイド服を相当、気に入った様子だったし、元々着ていた服は"九ノ一"達によって昨夜の内に洗濯され、今はキャンプ地で干された状態となっている。


 後、一時間の行軍か……。

 道幅は広いし、探索者や観光客の姿も殆ど見えない。

 廃墟の都市と言っても、道路には瓦礫は殆ど無く、雑草や樹木も何故か生えていない。

 この状態ならば、車で走って行った方が楽だし、何より時間の節約になる。

 俺は、無限収納(インベントリー)から、久々に軽装甲機動車、LAVを召喚した。


「これで行こう。みんな、乗車してくれ」

「「「「はい」」」」


 俺が運転席に乗車し、助手席にロックが搭乗する。

 後部座席には、定員オーバーだがナーク、ベル、ミラの三人が乗り込み、ガイドのコロニちゃんは、ロックの膝の上へ乗せた。

 こんな事だから、俺の体力は落ちる一方なのだが、日差しが強くなって来て少し汗ばむ程の暑さだったから、エアコンの効く軽装甲機動車の誘惑には、根性無しの俺は勝てなかった。

 俺は、直ぐに軽装甲機動車のエンジンを始動し、今日の目的地である守護者ゴーレムが多数有ると言う地点を目指し、古代遺跡都市の舗装された道路を走り出したのだ。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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