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カタン

 俺達、パーティー"自衛隊ジエータイ"は、港湾都市イサドイベの西門を出た海岸の側に居る。

 これから俺達は、イサドイベの街を旅立ち、古代遺跡都市へと向かうところだ。

 街道には、イサドイベで、お世話になったシムカス伯爵家の方々や、海辺には魚人族の族長ガイオスさん一家と他の魚人族の方々も勢揃いしてしている。

 マヌー隊長以下、親衛隊の騎士も、ほぼ全員が兵士達を背後に従え整列した姿は壮観だ。


「ジングージ様、是非またおいで下さいませ」

「はい、レティシア姫。また寄らせていただきます」

「ジングージさま、また遊んでくださいね」

「はい、アラン様。また一緒に遊びましょう」

「ジングージ卿、本当に世話になった。感謝しても仕切れないが、これからも宜しく頼む」

「シムカス伯爵、こちらこそ、お世話になりました。もう無いとは思いますが、ガウシアン帝国が不穏な動きを見せたら、直ちに連絡してください。何処に居ても、必ず駆け付けます」

「うむ、有り難い言葉、感謝に堪えない。スベニとタースの皆にも、宜しく伝えてくれ」

「はい、承りました。大砲やマスケットなどの提供、フェアウェイ大公閣下や、スベニの街の皆も喜ぶでしょう。火薬の製法の件も、スベニへ帰ったら生産ギルドと相談してみます」

「すまぬが、宜しく頼む」

「ジングージ様、聖女様。本当にレティシアを、お救い頂き、有り難うございました」

「お后様も、お元気で。また、お会いしましょう」

「ジョーよ、また必ず来い。海の幸を用意して待っているぞ」

「はい、ガイオスさんも是非、大河を遡って一度はスベニへ来て下さい」

「そうだな。ジョーの家まで水路が通っているようなので、何時か必ず行こう」

「お父様、私がジョーさんの家まで案内できるの」

「そうですね。アリエルさんは、水路から大河までや、スベニの街の水路も知り尽くしていますから、迷う事もないでしょう」

「そうか、ならば必ず行こう。楽しみにしておくぞ」

「はい、お待ちしています。アリシアさんも、ご一緒に来てくださいね」

「ジョーさん、ありがとうございます。一家でお邪魔しますわ」

「では、皆さん、お見送りを有り難うございました。また、お会いしましょう」


 イサドイベの人々に見送られ、俺達は一路、古代遺跡都市へと出発する。

 ガウシアン帝国艦隊を撃破した俺達は、結局20日間ほどイサドイベに滞在した。

 この間、捕虜にした士官から様々な情報を得る事が出来たのだが、核心となる情報は引き出せなかった。

 既に下士官以下は、イサドイベを立ちガウシアン帝国へ帰国の途についている。


 捕虜となった兵士の中には、大怪我をしている者も多かったが、ミラの回復治癒魔法で、全員が治療された。

 治療された兵士は、口々に「聖女様……」とミラに感謝していたが、どうやらガウシアン帝国には、聖女は居ない模様だった。

 大勢の捕虜を、犯罪奴隷として鉱山へ送る案もあったが、イサドイベやスベニへの攻撃失敗を、母国で報告させた方が、再び攻撃を仕掛ける事も無くなるだろうと言う判断からだ。

 未だ、士官以上は捕虜として残されているが、取り調べが終われば彼らもガウシアン帝国へ返される手筈だ。


 今回、鹵獲(ろかく)した大砲と大量のマスケット、そして火薬は、イサドイベと、スベニ、タースで分けられる事になった。

 大砲は、鹵獲できた数が少なかったので、スベニ、タースで一門づつ分配し、残りはイサドイベでガウシアン帝国の防御用に配備された。

 マスケットは大量に鹵獲したので、かなりの数を分配でき、火薬も相当数を鹵獲したので、これもイサドイベが多めに取り、残りをスベニとタースで分配。

 ただし、火薬の製法に関しては俺の知識が必要になるので、スベニの生産ギルドを中心に行う事となった。


 未だイサドイベの海には、相当数の大砲が沈んでいるので、これは魚人族の方々が引き上げを行う予定だ。

 鯨の助けを借りれば、重い大砲も回収が可能だとの事だ。

 構造が簡単なので、コピーを作る事も難しくは無いので、それも平行して行うと言う。

 スベニ、タース、そしてイサドイベは、共通の敵国となるガウシアン帝国に対抗するため、情報共有を行い、連合を組んで立ち向かう事になった。

 また、中央の王国へもガウシアン帝国の情報が届けられた様だ。


 この辺りの事は、貴族であるフェアウェイ大公やシムカス伯爵へ任せて置く事にする。

 今回の無敵艦隊の壊滅で、ガウシアン帝国の侵略戦略が終わってくれると良いのだが、どうなるかは予断を許さない状況だ。

 俺としては、大砲やマスケット、そして火薬の製法を誰がガウシアン帝国へもたらしたのかを知りたかったのだが、その情報は残念ながら得られなかった。

 捕虜の士官達は、「我らが独自に開発した」と言うだけで、その開発したのが誰なのかは知らない様だ。


 ガウシアン帝国の皇帝は、ガウス皇帝と言う名だそうで、一代で南の大陸を征服した英雄なのだとか。

 どうやら、このガウス皇帝が大砲やマスケット、そして火薬の製法を知る人物らしいが、詳しい事は判らずじまいだ。

 このガウス皇帝と、ガウシアン帝国で信仰される女神ゲルセミを、今後は調べる必要がありそうで、事と次第によってはガウシアン帝国まで出向く事になるのかもしれない。

 何れにしても、現状は棚上げしておくしかないので、急を要する事ではないだろう。


 さて、俺達が向かっている古代遺跡都市は、アーティファクトが多数発掘される場所で、都市と言っても住人が居る訳では無い。

 人が住める状態では無く、巨大な遺跡群が残されている場所が、あたかも都市の様なので古代遺跡都市と呼ばれているのだそうだ。

 また、都市の名前も不明なので単に古代遺跡とか、古代遺跡都市と呼ばれているらしい。

 しかし、冒険者や軍関係の人々が頻繁に探索に訪れるため、隣接する場所に町が出来ており、その町はカタンと言う町だそうだ。


 カタンの町には、冒険者ギルドの出張所や、タースとイサドイベの共同管理による治安部隊も配備されているらしい。

 一応、無断で古代遺跡都市の探査を行う事は禁止されており、冒険者ギルドか治安部隊への申請が必要との事だ。

 俺は、フェアウェイ大公より治安部隊への紹介状を頂いていたが、今回シムカス伯爵からも紹介状を頂いたので、問題なく古代遺跡都市の探査は可能だろう。

 俺達"自衛隊"のメンバーでは、ロックだけが古代遺跡の探査経験者で、他の面々は初めての探査となる。


 古代遺跡都市の探査目的は、もちろんロックの操る守護者(ガーディアン)ゴーレムの発掘だ。

 また、他にも数々のアーティファクトが発掘可能だと言うので、それも楽しみの一つである。

 加えて、"九ノ一"の面々への訓練も合わせて行う予定だ。

 無論、訓練と言っても、既に相当の手練ればかりなので、行う訓練は車輌の運転技術や、銃の扱いなど、俺の召喚する装備関係の訓練を行う。

 これは、俺以外の"自衛隊"メンバーが教官となって行えるので、手分けして"九ノ一"の12名をブート・キャンプで訓練する。


 俺達は、イサドイベを出発してから途中、昼食を取るための休憩を挟み、間もなくカタンの町へ到着する所まで来ており、カタンの町の入り口が遠くに見えている。

 カタンの町は、大きな町では無いので石垣による塀も無く、木で作られた柵で囲われているだけだ。

 しかし、柵には門が設置されており、門番も居る。

 俺達の乗る16式機動戦闘車や96式装輪装甲車のエンジン音に驚き、門番達が一斉に槍や剣を構えた。


 先頭を走っていた俺の乗る16式機動戦闘車を停車させ、俺は車長用ハッチから飛び降りて、門番へフェアウェイ大公とシムカス伯爵の紹介状を見せる。

 すると、門番達は直ぐ様、剣や槍を下ろし、こう言った。


「勇者ジングージ卿、お待ちしておりました。カタンの町へようこそ!」







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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