艦隊迎撃作戦
「き、貴様、何者だ?!」
「俺は、自由交易都市スベニの冒険者、ジョー・ジングージだ。フーリエ艦長達の軍艦を撃沈した張本人だよ」
「き、き、貴様が我が艦を撃沈したと言うのか。ほら話も大概にしろ」
「俄には信じがたいだろうな。では、実際に見せてやろうか……」
俺はそう言って、ガイオスさん達、魚人族が海底から回収してきてくれた、ガウシアン帝国兵の身につけていた多数の鎧や、剣、そしてマスケットなどが置いてある艀の端まで行く。
そして、剣を手に取り、それを艀の床板の隙間へ刺し込み、その剣に鎧を被せた簡易の的を並んだ状態で3個作る。
艀の端なので、尋問を行っていた艀の反対側からは、30m程度はあるだろうか。
元の場所まで戻るついでに、海から回収されたマスケットを一丁、手にして戻る。
「シムカス伯爵、これがマスケットです。今は濡れているのと、弾丸が入っていないので、爆裂魔法は発動できません」
「これが、マスケットと言う爆裂魔法の発動杖か……確かに、ジングージ卿の持つ発動杖にも似ているな」
「基本的な構造は同じです。では、実際に発射してみましょう。濡れていないマスケットも鹵獲してありますので」
俺は、無限収納から、鹵獲したマスケットと火薬、弾丸、火種入れなどを取り出し、火薬を注入して、弾丸を込める。
そして、火縄へ火種入れで種火を点火し、それを艀の端へ作った的へ向かって狙いを定めた。
正直、火縄銃を撃つのは初めての経験だったが、知識として知っている火薬量を注入したので、それが果たして、このマスケットの適正量なのかも判らず少し不安が残る。
ラッパの様な先端をした銃身のため、狙いが定め難かったが、構わずに引き金を引いた。
ズドンッ!と火薬の爆発音がし、硝煙が銃口や火縄ハンマーの当たった部分から吹き出る。
俺の設置した的の右側の鎧へ何とか命中するが、89式小銃と違い発射の反動が激しい。
これは、本当に慣れないと衝撃で怪我をしてしまう。
鉛の弾丸は、金属鎧に穴を開けたが後ろ側の鎧まで貫通する事は無かった。
それでも、金属鎧では、弾丸を防ぐ事は出来ない事は十分に判る。
「これが、マスケットの威力です」
「正に爆裂魔法……金属鎧を貫通する威力を持っているのか」
「そうですね。但し、欠点も多いのがマスケットです。まず、濡れたり、雨が降ると火種が消えて発射できません。そして、銃身を大きく下げると込めた弾丸が落ちてしまいます。最大の欠点は、発射準備に時間を要する事でしょうか」
「なるほど……だが、兵士が大勢マスケットを装備しておれば、驚異である事には違いないな」
「そうです、決して侮れません。ですから、ガウシアン帝国の兵士をイサドイベへ上陸させては非情に危険なのです」
「ふはははは……貴様、マスケットを操れるとは少々驚いたが、これで我が帝国の恐ろしさも良く判ったろう。さっさと降伏しろ!」
「へえ、そうかい。アン、あの鎧の的へフルオート・モードで全弾撃ち尽くせ!」
「うん、判ったよ!」
アンは、直ぐさま89式小銃の安全装置を解除し、そして"レ"の位置へレバーを合わせ、直ぐにトリガーを引き絞る。
ダダダダダダダッ!……カシーン!あっと言う間にマガジンが空になり、89式小銃はホールド・オープン状態となった。
アンが射撃した89式照準のフルオート・モードの連射に、捕縛されているガウシアン帝国兵から驚愕の声があがり、俺の前に座らされていたフーリエ艦長も目を見開いたまま固まっている。
三つの鎧は穴だらけになり、艀に刺した剣も途中から折れてしまっていた。
警護の兵士に頼み、穴だらけになった鎧と剣を持って来てもらいフーリエ艦長の前に転がす。
穴だらけの鎧や、銃弾によって破壊された剣を見て「ぐぬぬぬ……これは……」と言葉を詰まらせた。
俺は、肩に掛けていた89式小銃を手にし、安全装置を外しレバーを"3"へ合わせてから、フーリエ艦長ら、ガウシアン帝国の士官達の足下へ発射した。
ダダダッ!艀の木製の床に穴が三つ空き、そして海水が吹き上がり、フーリエ艦長の足下へ流れて行く。
「お前達の持つマスケットなど、我々の持つ小銃に比べれたら玩具以下の骨董品だ。この小銃は、一分間に800発以上の弾丸を発射できるのだからな」
「……き、き、き、貴様の持っているのは、伝説の勇者が持っていたと言うキカンジューか?」
「まあ、似たような物さ。ならば、ついでに本物の勇者コジローさんが持っていた、本物の機関銃の威力も見せてやろうか」
「何?!き、貴様は勇者の末裔なのか?」
「当たらずとも遠からずだな。では、見せてやろう。本物の勇者コジローさんの爆裂魔法をな」
俺は、腰に着けていたハンディー・トランシーバーで、港の護岸で待機しているロックやベル、ナークへ連絡する」
『ロック、MCVの重機関銃M2を海へ向かって発射してくれ。ベル、主砲へ徹甲弾を装填してくれ、ナーク、主砲の照準を艀の少し先へ合わせて発射。どうぞ』
『ロック、了解です。……ザッ』
『ベル、徹甲弾を装填しましゅ……ザッ』
『……ナーク了解……ザッ』
護岸に停車している16式機動戦闘車の砲塔からロックが姿を表して、重機関銃M2の安全装置を解除し、そして此方の頭上を狙う様に狙いを定め、引き金を引いた。
ダダダダダダッ!同時に銃弾が、俺達の頭上を音速を超えた弾速で通過して行く。
そして、16式機動戦闘車の主砲も、僅かに砲身を下げてからマズル・ブレーキが爆音と共に火を噴いた。
105mmライフル砲の発射を、攻撃される側から見たのは初めてだったが、これは本当にヤバイ。
16式機動戦闘車の主砲から発射された105mm徹甲弾は、艀の先50m程沖へ着弾し大きな水しぶきを上げる。
「どうだ、フーリエ艦長。これが勇者コジローさん直伝の爆裂魔法だ。お前達の持つ骨董品の大砲と違い、砲弾は狙った場所へ100発100中だ。だから、安心して俺達は砲身の前に居られるのさ。しかも、連続発射が出来る」
「……ま、ま、まさか、イサドイベに勇者の末裔が居るとは……我が帝国は、女神様に見捨てられたのか……」
「お前達の言う女神様とは、フノス様の事か?」
「フノス様?違う。我らの帝国は女神ゲルセミ様が、導いて下さっている」
「ゲルセミ様?知らないな。しかし、どちらにしても、それはお前達の思い違いだ。女神様の意思は、この世界の平和だ。他国を侵略するなどと大それた事を企てたから、お前達の女神様にも見限られたのだろうさ」
「くっ……これまでは、順調に南の大陸を完全に征服した我らだ。例え勇者の末裔が邪魔をしようが、それは変わらぬのだ」
「へえ、そうかい。本当に往生際が悪いな。それだけ、お前達の戦力の自信が揺るがないのなら、本体の艦隊が到着する予定日時を教えろ」
「ふん、よかろう。我ら斥候隊から遅れる事、一日。早ければ明日の夜明けには、イサドイベの攻撃を開始し、別れた艦隊が同時に大河を遡り、スベニの攻撃に向かうのだ。例え、貴様が勇者の末裔だろうが、貴様達だけではどうにもなるまい」
「それは、どうかな。やって見なければ判らんだろう。しかし、明日の夜明けか……思っていたより早いな」
「ふん、せいぜい怯えながら待つが良い。我らガウシアン帝国には、敗北の文字は無いのだ」
「へえ、そうかい。待つだけしか戦い方が無いと思っているとは、本当に馬鹿だな。まあ、俺達の戦い方、じっくりと見せてやるから、楽しみにしておけよ」
俺は、決して強がりで虚勢を張った訳では無い。
ちゃんと裏付けが有っての威嚇を、フーリエ艦長へしたのだ。
この戦い、防戦で艦隊の到着を待っていたら危険だ。
なにしろ、艦隊の数が多すぎるし二手に艦隊が分かれていたら、スベニへの進行までも許してしまいかねない。
やはり、此処は攻撃は最大の防御を実践するしか無い。
既に昼を過ぎたので敵ガウシアン帝国の無敵艦隊が、イサドイベまで攻めて来るまでの猶予は、18時間ほどだ。
俺は、敵艦隊への迎撃作戦を速やかに頭の中で戦術シミュレーションをしてみるのだった。




