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虚仮威し

 魚人族達の先導によりイルカ達が牽引してきた艀は、港へ接岸する事なく港湾の中央で止まった。

 俺達が港の橋まで行くと、ガイオスさんが海中から顔を出して笑顔を見せる。


「ジョー、マヌー隊長、粗方の敵兵は捕縛したぞ。未だ残って居ないかは、仲間達が捜索を続けているので見つかったら連れてくる」

「ガイオス殿、忝ない」

「ガイオスさん、お疲れ様でした。何人位を捕縛しましたか?」

「100人近いな。沈んだ船には、まだ遺体が沢山あるし、海に浮かんでいる遺体も合わせれば、倍位は死んだのだろう」

「……そうですか……200人も死んだのですか……。一隻に100人は乗船して居た事になりますね」

「そうだな。ジョー、気にするな。お前はイサドイベを彼奴らから守ったのだぞ」

「そうですとも、ジングージ卿。ガイオス殿の言うとおりですぞ」

「ありがとうございます。自分は、どうも対人戦闘が苦手なもので、済みません」

「お前の、そう言うところ、俺は好きだぞ。ジョー」

「はい。では、早速に敵の尋問を開始しましょう、ドロン卿」

「そうですな、間もなくシムカス伯爵も此処へお出でになるでしょうから、準備を致します」

「お願いします。ああ、ドロン卿、一つお願いがあります」

「何なりと承りますそ。で、何でしょうか?」


 俺は、マヌー隊長へ、ある物を用意して貰う様に依頼をした。

 マヌー隊長は、「それは、有効ですな。早々に準備致します」と言って、部下にそれを用意する様に指示を飛ばす。

 俺達が、艀まで移動するには、ガイオスさんの様に泳いで行く訳にはいかないので、小型のボートを用意して貰う。

 捕虜には、怪我人も居る様なのでミラにも同行をしてもらう事にした。

 "九ノ一"全員となると、大人数になってしまうのでサクラさん以外は此処で待機だ。


 新たな敵船が現れた場合を想定し、ナークとベル、そしてロックには、16式機動戦闘車で待機しつつ敵船の警戒を頼む。

 用意されたボートに俺が乗ると続いてアンが乗り込み、ミラが続き、ミラが海に落ちない様に、俺が手を取る。

 サクラさんは、全く心配いらずで桟橋からジャンプしてボートへ乗り込んだ。

 既に、マヌー隊長はボートに乗り込んでおりボートを艀に向かって進行させる。

 小型ボートには、両再度にオールが装備されており、それを兵士達が漕ぐ。

 流石に港湾都市の兵士で、ボートなどの操船も慣れたものだ。


 俺達は、直ぐに艀まで到着し艀に乗り込むと、大勢の捕虜達がロープで縛られイサドイベの兵士や騎士達に監視されていた。

 どの捕虜達も、鎧塁は身につけておらず装備なども見に着けてはいない。

 恐らくは、身元を隠すために、装備類も海中へ投棄したのだろう。

 まして金属鎧を身につけたままでは、その重さで泳ぐこともできずに、海中へ沈んでしまうだろうから、秘密保護という観点よりも我が身大事さから鎧は投棄したのかもしれない。


「おい、捕虜の中で士官か船長は居たか?」

「はっ、ドロン隊長殿。この三名が自らを船長と、副船長と名乗っております」

「そうか、ご苦労。おい、お前達は何処の国に所属している?」

「……俺達は海賊だ。何処の国にも所属などしておらん」

「そうか、海賊か。ならば、全員を処刑する事になるな」

「勝手にしろ。処刑が怖くて海賊家業をやる馬鹿はおらん」

「残りの二人も同じか?」

「「そうだ、俺達は海賊だ。殺すが良い」」


 これは、明らかに軍人の答えだ。

 本物の海賊ならば自らを海賊などと言う筈は無いし、絶対に命乞いをするだろう。

 ガウシアン帝国の軍人だと言う事を、俺達が知らないと思っているので頑なに自らを海賊と偽っているのだ。

 ここは、彼らが海賊では無いハッキリとした証拠の品を、奴らに示してやる必要がある。

 俺は、三枚の海図を無限収納(インベントリー)から取り出し、船長と名乗る捕虜に見せて言う。


「自分は、こんな物を、あの黒船の中で見つけたのですが、貴方は知っていますか?」

「そ、それは……。そんな海図は知らん」

「そうですか、この海図には、はっきりとガウシアン帝国と書かれておりますが?」

「知らんと言ったら、知らん。前に襲った船が持っていた海図だ」

「成る程、奪った海図ですか。では、この二枚も同じですね?」

「……そうだ、知らん」

「それでは、こんな命令書も知らないと?」


 俺は、海図と一緒に回収した、作戦命令書を船長と名乗る男に見せる。


「くっ……。知らん、そんな物は始めて見た」

「そちらの二人も、同じですか?」

「「……知らない」」

「そうですか。では、少し身体検査をさせてもらいます」


 俺は、船長と名乗る男のシャツの襟首から手を突っ込み、胸元をまさぐる。

 誰も好き好んで、むさ苦しい男の胸元なんぞ、まさぐりたくは無かったが、この際仕方がない。

 そして、俺の目指す物は、彼の首にしいかりと掛けられていた。

 俺は、それを船長の首から外し、手にとってから彼に見せる。


「さすが船長ですね。メタル・ランカーとは」

「き、貴様、それを返せ!」

「海賊の分際で、身分証を後生大事に首に掛けているとはね。ドロン卿、そちらの二人は?」

「持っておりましたぞ、ジングージ卿。やはり、二人共メタル・ランカーですな」


 海賊が、自らの身元が明らかになってしまう身分証を、後生大事に首へ下げている筈は無い。

 此奴らは、明らかに軍人だ。

 マヌー隊長は、直ぐに兵士達へ命じて、他の捕虜達が身分証を所持している居るかを調べさせる。

 取り敢えずは、士官を示すメタル・ランカーだけを尋問すれば良いのでレザー・ランカーの船員達を除外して行く。

 捕虜の中から、10数人のメタル・ランカーが選別され、先ほどの船長、いや艦長と副長二人と一緒にする。


「隊長、身分証表示板を、お持ちしました!」

「おう、ご苦労。早速、此奴らの身分証の内容を表示してみろ」

「はっ!」

「くっ、止めろ!俺は海賊だ!」


 マヌー隊長の部下が、艦長らしき男の身分証と後ろ手で縛られた手を身分証表示板へ翳した。


「登録国は、ガウシアン帝国です。階級は大佐で名前は、リーマン・フーリエです」

「フーリエ大佐、いや艦長。これでも未だ海賊だと貴方は言い張りますか?」

「く、くそ……。貴様ら北の大陸の国々は、我らガウシアン帝国に滅ぼされるのだ。そして、我が帝国の植民地となり逆らう者どもは全員殺す。生きたければ我らの奴隷となるしか無いのだ!」

「やっと、本音が聞けたましたね。そちらの二人の身分証はどうでしたか?」

「はっ、同じくガウシアン帝国の軍人で、階級は共に中佐です。名前は……」

「いや、ガウシアン帝国の軍人だと判れば、それで結構です。他のメタル・ランカーも同様に調べて下さい」

「はっ、直ちに!」

「ジングージ卿、シムカス伯爵が到着致しましたぞ」

「遅くなって済まぬな、ジングージ卿。で、こ奴らが、あの敵船に乗っていた者どもか?」

「そうです。ガウシアン帝国の海軍でした」

「何と……。遙か南の大陸の国から来たのか?」

「はい、それも侵略目的で、植民地化を目指している様です。手始めにイサドイベ、そしてスベニを攻撃する計画だった様です」

「たった三隻で、そんな事が出来ると思われたとは、舐められたものだ。少々、心外だな」

「貴様がイサドイベの支配者か。今なら、命だけは助けてやるから直ぐに我が帝国に降伏しろ」

「何をいきなり言うかと思えば、捕虜の分際で貴様こそ良く言うわい」

「馬鹿め、我らがたった三隻で、こんな辺境まで来ると思うか。ふん、聞いて驚くが良い。我らが無敵艦隊の本隊は、大砲を装備した30隻の大型軍艦と、マスケットを装備した兵士達を乗せた船が40隻だ。貴様らがどうあがいても勝ち目は無い。降伏しろ」

「大砲?マスケット?それは何だ?」

「ふん、蛮族に判る様に言ってやろう。大型爆裂魔法と、小型爆裂魔法を放つ武器だ。既に、お前達の街へ放った大型爆裂魔法弾を見ただろうが」

「爆裂魔法を放つだと……ジングージ卿、こ奴の言うことは誠か?」

「本当です。しかし、我々に勝ち目が無いと言うのは、フーリエ艦長のハッタリです。逆に、我々の放った爆裂魔法弾で奴ら二隻の軍艦は瞬く間に沈没し、一隻は大破した事実を棚に上げての虚仮(こけ)威しです」







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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― 新着の感想 ―
[一言] 射程30Kmオーバーの99式155mm砲なら 一方的にアウトレンジから砲撃し敵艦を攻撃出来るよね? 位置情報と着弾観測はドローンがあるし! 90式の120mmラインメタル滑空砲なら 10Km…
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