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第一話

昔々、ある山奥深くの一軒家にて、お爺さんとお婆さんが乳くりあったり血で血を洗う夫婦喧嘩をしたりしながら暮らしておりました。


ある日、お爺さんは大事に取っておいたプリンを食べられた腹いせに家出を、お婆さんは暇なので家の周りにベトコンもかくやというほどのトラップを設置いたしました。


「ええぃ、あのクソばばぁ。わしのプリンを食べよってからに」


怒りでかんかんのお爺さん。川に鮭を取りに来た熊さんに延髄チョップをかましながらストレスを発散させます。動物愛護の精神は無いようです。


「うむぅ、ヒ素か……。いやまて、あのばばぁは嗅覚が犬並みじゃから悟られるやもしれん。そうなると、自然死を待つしかないが、いつになることやら……」


まさかのお爺さん、天下の童話内で殺人計画です。自覚というものがないのでしょうか。しかしお話は続かなければなりません。

お爺さんが流れるような動作でコブラツイストを熊に仕掛けていると、川上から大きな大きな桃が、どんぶらこっこどんぶらこっこと流れてきたのでありました。


「おひょう!デカイ桃じゃ!こりゃデカイ。婆さんの尻くらいはあるんじゃないか?」


息の荒いお爺さん。尻フェチのようで、お爺さんは川に飛び込んで、執拗に桃を撫で回しながら岸に上げました。


「おお。そうじゃ、こんなにもデカイ桃じゃから、あのばばぁビックリしすぎて心停止するかもしれん。急いで持って帰るぞ!」


未だに殺人計画を捨てきれないお爺さんは、えっさかほいさか、桃を抱えて……


「おい、そこのクソ熊。見ている暇があるなら手伝え」


まさかの熊いじめ再スタート。けれど心優しい熊さんは、片側を持ってあげ、えっさかほいさか、家へと運んでゆきました。


ちなみに、家の周りに設置されたトラップを解除するのに、お爺さんは丸2日かかりました。



「た、ただいま……」


巧妙に隠された落とし穴や、一歩足を踏み入れたら竹槍が飛んでくるゾーンをなんとか踏破したお爺さん。それを見たお婆さんは、とてもビックリしました。


「でっけ!なにその桃でっけ!というか桃くっさ!むしろお爺さんくっさ!下水道より臭い!というか獣臭じゃね!?」


そう、日中に晒された桃は腐敗し、トラップ解除に汗をかき熊さんと夜を明かしたお爺さんは異臭を放っていたのです。けれど、解除に疲れたお爺さんはお婆さんの発言に気付きそうにありません。


「おおそうじゃ。こんなにもデカイ桃じゃし、中は腐ってないかもしれん。お爺さん、切ってくださいな」


意識朦朧なお爺さんに、お婆さんは日本刀を手渡します。お爺さんは、前まで持っていたお婆さんへの殺意を忘れ、ふらふらと刀を構えて桃に向かいました。


「チェストーッ!」

「来たぁーっ!お爺さんの必殺剣『二の太刀要らず』!!お爺さんカッコいい!私を抱いて!」


この期に及んでまだふざけたことを言うお婆さん。しかし、刀は一直線に桃へと振り下ろされます。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


突然、桃の中から悲痛な叫び声が響きました。驚いたお爺さんは手首をひねり、桃の上部辺りを切り落とすだけにしました。


「ひえーっ。化け物じゃぁ。魑魅魍魎インザ桃じゃぁ」


怯えるお婆さんを、お爺さんはそっと抱き寄せます。左手に刀を持ちながらお婆さんを抱き寄せるお爺さんはとてもカッコいいので、右手がお婆さんの臀部に伸びているのは見なかったことにしましょう。


「ううっ、怖かった……」


桃の中から聞こえてくる泣き声。しばらくすると桃の中から、なんと!花も恥じらう紅顔の美少年が現れたのです!


「うひょう!美少年じゃあ!夢にまで見た美少年じゃあああっ!」

「ヒイッ!?」


よだれをたらしながら桃に駆け寄るお婆さん。童話とは一体なんなのでしょうか。

再び涙目になった男の子を下から上まで舐めるように見たお婆さんは、いささか失望しました。男の子は桃から現れたというのに服を着ていたからです。危ないところでした。もし男の子が裸だったら、珠のように美しい男の子の身体が発情お婆さんによって汚されるところでした。


しかし、お婆さんはめげません。衣服を少しはだけさせ、しなを作り、男の子の顎をさわりとなぞりました。


「ねぇ、坊や。お名前はなんていうのカナ……?」


さすがに、90近いお婆さんの色気はテロリズムに等しいものがあります。男の子は涙を流しながら震えます。


「ぼ、僕は、桃から……桃から生まれた、桃太郎ですぅ……」

「うふっ。桃太郎くんたら、緊張しちゃってるのね。かーわいっ♪」


嗚呼、生まれてから5分と経っていない桃太郎くんがどうしてこの恐怖に耐えきれるというのでしょうか!桃太郎くんはあまりの出来事に、前後不覚に陥ってしまいました。

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