① 彷徨える雪子
その頃のアタシは、自暴自棄に成りかかって居た。
それまで生き甲斐にしていた事を……アタシの生きる目的を、あの忌々しいサン・ジェルマン伯爵に、全否定されたからだ。(第9巻 参照)
無論、彼は紳士だから、言葉つきは飽く迄も優しい。しかし話の内容は……やはり全否定だった。少なくとも、その頃のアタシはそう思っていたのだ。
その結果アタシは、暫くの間、時折思い出したように、無目的に、生身のタイムトラベルを繰り返し、時間軸の中を彷徨うようなマネをしていた。夜、アルコールを摂取した時など、特にイケナイ。
もちろん、シルバーのワーゲンビートルを拝借したりなどしない。何故かって?直ぐに足が付いて、何処に居ても、あの伯爵に見つかるからさ。
何事も、他人のせいにするのは良くない。そんな事は百も承知だ。アタシだって、見た目こそ永遠の17歳だが、中身はすっかりオトナだ。
どんな行動も、最後に決断するのは自分自身。責任の所在も自分に有る。ただアタシの場合、自分で責任を取り切れない程の、チカラを持ってしまった事がモンダイだった。
そんな訳で、アタシは今、途方に暮れている。
「ここは……何時の、何処なのかしら?まあ、どうでもイイけど」
どうやらそこは、早い時間に閉店した、田舎のスーパーマーケットの駐車場のようだった。随分静かだ。
時刻は深夜のようだ。
アスファルトが濡れている。
さっきまで、雨が降っていたのか?
アタシは時計も持っていなかったから、詳しい時間も分からなかった。
ぼんやりそこで立ち尽くしていると、やがて爆音とともに、バイクの集団がやって来た。
ライダーたちは、一見しただけで、見るからにガラが悪そうだった。そして、全員が女性だと言う点が特徴的だった。
多分レディースというヤツなのだろう。幹部らしき数名が、揃いのピンクのツナギを着ていた。
やがてアタシは、20台程の違法改造バイクの集団に、スッカリ囲まれてしまった。
その中の一人が片手を挙げると、全員がエンジンを切った。夜の静けさが戻って来た。
「アンタ、この辺じゃ、見ない顔だね?」
メンバーの中のリーダーらしき女が声を掛けて来た。
「……ええ、ちょっと遠くの方から来たの」
アタシはそう答えた……ウソではない。
「何処かからか、逃げて来たのかい?何なら相談に乗るよ?」そのリーダーは、アタシに興味を持ったようだった。どうやら、世話焼き親分肌な性格らしい。
無理も無い事だ。
深夜の駐車場に、セーラー服姿の女子高生が、ポツンと一人で立って居れば、誰の眼にも、訳アリな様子に見えるだろう。アタシはそう思った。
大方、そういう訳アリ娘や家出娘を、次々に仲間に引き入れて、組織を大きくして来たんだろうな……アタシはそんな想像もした。




