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第2話 名探偵、二つの謎を拾う

次に目を覚ますと、見覚えのない天井だった。

(一体、何が起こって――?)

インクと古紙の静かな匂い。

体を起こして辺りを見渡すと、部屋を埋め尽くす勢いで本が山積みになっている。

窓の前には、本が塔のように積まれ、その隙間から夕日がさしていた。

「・・・セラ!?」

思わず名前を呼ぶが、返ってきたのは聞いたことのない声だった。


「ふふん、やっと起きたようだね!」

本の山から、姿を現して笑顔を見せる女。

その恰好はまさに「探偵」と言った出で立ちだった。

茶色のケープコートに探偵帽。

まるで、推理小説から抜け出した探偵そのものの恰好だった。


「どこか痛い所や、怪我はしていないかい?」

「ここまで運ぶのに苦労したんだよ?」

「実は、階段で何回か君を落としてしまってね・・・」

頭を触ってみると、たんこぶがいくつか出来ていた。

「まっ、そっちのソファでゆっくりくつろいでくれたまえ」

ぽんっと濡れたタオルが渡される。これで冷やせという事か。



本の山に隠れて分からなかったが、

高級そうな足の低いソファが向かい合わせに置かれ、その間には重厚なテーブルが置かれてあった。

テーブルには、赤いペンで〇や文字が書き込まれた地図や、老人の写真とメモがあった。

あまりじろじろと見ても悪い気がして、目をそらすように改めて部屋を見渡す。

と言っても、本の山ばかりでここから得られるモノはなさそうだ。


探偵風の彼女はというと、本の束をせわしなく上機嫌にあっちへこっちへと移動させている。

「ふんふん♪面白い謎を二つも拾うとはね!」

「こんな機会、滅多に無いぞー♪」

小さな声で言っているが、こっちまで聞こえている事に気が付いていない。

「君たち、あそこで一体何をしていたんだい?」

「君たち・・・?」

「あぁ、君と金髪のあの子さ」

「彼女に聞いても、的を得ない事しか言わなくってね♪」

「もしかして・・・セラ?彼女はどこに!?」

思わず立ち上がって、その姿を探す。


「安心したまえ、急いては事を仕損じる。チルだよ、チル」

あいつもここに居て良かった、と胸をなでおろす。

本を運び終わったのか、彼女は正面のソファに腰を沈める。

「彼女は今おめかし中だ♪」

「おめ・・・かし・・・?」

彼女には色々聞きたい事が山ほどあるが、今は待つしかない。

「楽しみにしていたまえ。おっと、申しおくれた」

矢継ぎ早に自己紹介をされ、名刺を渡された。

「私は『名探偵の白石こころ』だ」

「たんてい・・・?」

「チッチッチッ――"名"探偵の白石こころだ!」

わざとらしく指を横に振り「名探偵」の部分を強調する。

「名探偵・・・の白石こころさん・・・?」

「うむ、上々!」

名刺には、見たことのない文字が書かれている。


テーブルの上の地図などを、ぐちゃぐちゃっと無造作に隅へ押しのける白石こころ。

「あの、ここは一体・・・」

と言いかけた時、聞き慣れた声が聞こえて少し安堵する。

「――あ、あの。こ、こころさん?」

部屋のどこからか不安そうなセラの声がした。

これだけの本の山だ。人が居ることすら認識できなくて無理もない。

「お、帰ってきたようだね」

立ち上がって、白石こころは手を上にあげてここだ!と合図する。




しかし、目の間に現れたセラの姿に、俺は言葉を失った。

「いやぁ、せら君、よく似合ってるじゃないか!」

君にはすこし大きいだろうが、ちゃんと着こなしている!うん!と満足げな探偵。

一方、そっちのセラは恥ずかしそうに立って俯いている。


その姿をみて俺は驚愕して目を見開いた。

「セラ・・・おまえ・・・なのか?」

「はいぃ・・・」

「本当の本当に、セラで合っているのか?」

「うぅ・・・合ってますぅ・・・」

「お、お前に聞きたい事があるんだが・・・」

「どうぞぅ・・・」

そう、こいつには山ほど聞きたい事がある。

色々と起こりすぎて、俺は頭がパンクしそうなんだ。

気が付けば"なんとか領域?"とかいう変な場所に居て、訳も分からないまま色んな事が起こった。

『あの異常事態は何だったのか?』とか、『黒塗りされた俺の情報はなんだったのか?』とか

『要注意人物っていったいどういう事だ?』『そもそも、ここは何処なのか?』等など。

それを知る、唯一の手がかりである天使のセラ。

目の前に現れた時、彼女が居てくれて助かった、と安堵した。

そんな彼女にまず、俺が聞きたかったのは

なぜ、超かわいいゴスロリファッションを着ているんだ?では、勿論なく。


「なぁ、セラ・・・お前――」


「・・・小さくなってないか?」

「は、はいぃ・・・」


力なく申し訳なさそうに返事をする天使のセラは、なぜか小さくなって

まるで、少女の様になってしまっていた――。




「これは面白くなりそうだ」

と、二人の後ろでニンマリと口元を隠す名探偵白石こころに俺は気付くはずもなかった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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