第1話 失われた記憶と死因
初投稿となります。
試しに読んでいただけますと嬉しいです。
「・・・ここはどこだ・・・俺はいったい誰だ・・・?」
気が付くと、何もない空間にいた。
「どうしてこんな所に・・・だめだ、名前もなにもかも全部思い出せない・・・」
「ようこそ、死後管理領域へ」
優しい声がした。
びっくりして声のする方へ目をやると、えらく破廉恥な服を来た美女が宙に浮いている。
状況があまり飲み込めていない俺に、ウインクをしながら笑顔で続ける。
「たった今、あなたの死亡が確認されました♪」
「現在、天国へ行く為の処理をしている段階です♪」
「あ、『死後管理領域』とか『処理』だなんて、陰気で堅苦しい言い方だって顔をしてますね♪」
「つ・ま・り、ここはあの世で、死者を天国に送るとても良い場所です♪」
「・・・死者・・・天国に送る・・・?」
「そうです。あなたは、可哀そうなことに・・・」
「亡くなってしまったのです」
(死んだって・・・)
あまりにも突然の事に、言葉もでない。
あたりを見回すと、何もない。
目の前には宙に浮く美女だけ。
一見裸のように見えたが、よく見れば服らしきものは着ている。
しかし、大きな胸とへそから下の大事な部分以外隠れてはいない。
服というよりは、布だ。
「あなたは・・・」
うんうんと頷く美女。
「・・・痴女?」
「ち、違いますよ!!」
訂正しながら、これは天使の神聖な伝統ある制服です!と怒っている。
「わたしは天使のセラと申します♪」
「これは、亡くなってしまった方(男性向け)の、少しの癒しになれば♪という、大変配慮ある服なのです♪」
正装なんですからね!と胸を張った。
たゆん――。
色々と疑問はありつつも、このセラとかいう、天使のせいで若干混乱している。
死者に配慮するなら、しずしずと寄り添うもんじゃないのか・・・。
こほん。
「さっきも言いましたがここは、あの世です♪」
「あの世・・・死んだって事ですか!?」
「ご愁傷様です」
深々と頭を下げると綺麗な金色の髪がさらさらと落ちる。
いなや顔を上げると途端にパァっと明るく笑顔で
「死んだって、俺、何も覚えてないんですが・・・」
どこで何をしていたか、名前すら覚えてない。
「うーん、管理領域では初めての症状ですね・・・」
「ショックで一時的に混乱される方はいたけど・・・。
生前に記憶喪失だった方も、ここに来れば正常になるはずなのに・・・」
何やらぶつぶつと言っているが、よく聞き取れない。
「さぁ!」
いきなり、バッと両手を広げる。
「セラ・・・さん?」
「美しく可憐でグラマラス(以下略)な私をしっかりと見てっ!」
「死んでしまった心の傷を、癒すのです!」
だんだんと温まってきたでしょう?と、恍惚な表情を浮かべている。
結構ヤバめだ・・・。
「つまり・・・俺は・・・」
「はい、ご明察の通り♪」
「超セクシーな癒し天使である私を凝視しても犯罪にはならない♪」
「は?」
「しかも、私!かなり!可愛い♪」
「おい」
「どうぞ、心往くまでお楽しみください♪」
「・・・」
「どうかしました?」
こんな死後の世界、必要ないんじゃないかな・・・。
ベルトコンベアーのように流れ作業で、三途の川を渡らせてくれた方が100倍マシだ。
そもそもこのセラ、天使と言ってはいるが、頭の上に輪っかもないし、純白の羽根も生えてない。
「セラさんのおかげで、死んだ実感も悲しみも未だに沸きそうにないんですが・・・」
事実、不思議と死んだ実感が湧かない。そういうものなのか・・・?
ここからは、長くなりそうなので
この頭の様子が、かなりアレな天使の話を要約しまくると
『俺はちゃんと死んで、ちゃんと記憶喪失らしい』
(ちゃんとの使い方ってコレであってるのか・・・?)
「さっきのは、死んでしまったショックや絶望を少しでも和らげる手法ですから♪」
ひどく人を選ぶ手法だな・・・。
「では早速、あなたの識別情報を照合していきますね♪」
そう言うと、セラはどこからともなくA5サイズの小さめのボードを取り出した。
「それは?」
「あなたの情報がすべて記載されています♪」
ボードに挟まれた用紙1枚をぺらりと見せてくれる。
遠くて何が書かれているかは分からなかったが、そんな紙1枚の人生だったのか・・・。
「死因や、記憶喪失の原因が分かるかもしれません」
「ふむふむ・・・って、あれ?」
さっきとは打って変わって、天使の声のトーンが落ちる。
「・・・ちょっと待ってください」
ボードと俺の顔を交互に確認しながら
「えーっと、霧島誠司さん・・・ですよね?」
と聞いてくるが、記憶喪失の本人に聞いてどうする。
俺が知りたい。
だが、セラの表情は冗談を言っている顔ではなかった。
「ちょっとこれを見てもらえますか?」
そう言うと宙に浮いていた半裸のセラがスーッと近くに寄ってくる。
なんだか懐かしいような、良い匂いがした。
暖かい、楽しい、悲しい色んな感情が湧いたが、次の瞬間には消えた。
彼女が差し出してきた用紙には、俺の情報らしきものが書かれていた。
――名前:霧島誠司
――年齢:■
――趣味:■■■■
――職業:■■
――家族構成:■■■(■■■■■■)
――交友関係:■■
死因:■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「なんですか、これ。黒塗りだらけじゃないですか」
正直ゾッとした。胸の奥がかすかにざわつく。
まるで、誰かが何かを隠すように。
「おかしいですね・・・」
「名前以外の項目が、ほぼ閲覧不可になっています」
「他の人のものじゃないんです?」
「いえ、それだけはあり得ません・・・はずです・・・」
「管理システム的に、絶対に起こりえないです」
あの世もずいぶんとハイテクなんだな・・・。
「死因も全く分からない・・・これってどういう――」
「あ、ここ読めますよ・・・って、あれ?」
――特記事項:
※※※※※※
要注意人物。
――速やかに対象を転生、隔離、再配置。
※※※※※※
なんだ、要注意人物って・・・。
まるで危険人物みたいな言い方じゃないか。
他にも物騒な事が書かれているが?
天使の方を見ると、彼女もまた困惑しているようだった。
「ちょっと、上に確認を取ってみますので、少々お待ち――」
ハッと何かを思い出して
「・・・霧島誠司さん、あなた・・・もしかして――」
何かを言いかけた瞬間
ビ――――――――――――ッ!!
ビ――――――――――――ッ!!
突然、何もなかった静かな空間にけたたましく警告音がなり響く。
つんざく音に、反射的に頭をかがめる。
頭上には"警告"と書かれた赤い文字と、"転生"と青い文字が浮かび、交互に点滅している。
明らかに、異常な事が起こっていることは分かる。
この事態に対処できそうな、セラの方へ目をやると、動揺して焦っている。
「どうしてよう、とにかく、・・・って・・・さい!・・・!!!」
必死に何かを伝えているが、音がうるさすぎてほとんど聞き取れない。
「なんて言っ――」
セラが険しい顔でパッと虚空を見つめる。
「強力な干渉が・・・てる!権限剥奪?どうし・・・。だめ――――使えな――」
途端に、目の前のセラの姿や、聞こえる警告音に強烈なノイズが掛かりだす。
い、一体何が起きてるんだ?
そう思ったのも束の間、
ブツンッ――と、意識が落ちた。
楽しみにしていただける様な作品になるよう励みます。




