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Refrain - 再起は精霊とともに -  作者: 青黄緑
『魔都突入』編
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46. それぞれの意思


「姉さん……何で……?」


 リアーナは少し目を伏せ、何かを考えるような表情をしていたが、すぐにアイクへと向き直り、明確に、しかし彼にとって残酷な理由を説明した。

 

「理由は単純だ。お前達はそれだけのレベルに達していない。精霊の谷での善戦はリゼの能力と、それが奴らにとって初見だったことが大きい。しかしその能力も知られていて、かつ向こうに仲間が他にもいるかもしれない状況で、実力の伴っていない者は戦力とは言い難い。」


 アイクはその理由を聞き何かを言おうと口を開くが、言葉が出て来なく、俯く。その肩は小刻みに震え、指先が白くなるほど、強く拳を握っている。


「ですが、僕たちも黙って待っているなんてできません! もし俺たちがやられれば捨て置いていただいて結構です。それでも……いけませんか……。」


 レントも同じようにその胸中を曝け出す。いつも冷静な彼とは違った、感情の乗った力強い声だった。

 それでも、リアーナの考えが変わることはない。


「ダメだ。お前達が良くても周りはそういうわけにはいかない。もし二人が危機に陥れば、周りの者は必ず助けに入るだろう。それは隙となり、その隙が致命的な状況を引き起こす。それは……迷宮で身に染みたはずだ。必要なのは背中を預けられる存在。そうでなければ、足手纏いとなる。」


 レントもアイクと同じく、その理由に返す言葉はなかった。リアーナの言う通り、迷宮でその無力感を一番その身に受けたのがレントだ。

 だが、一切の容赦なく放ったように思えるその言葉も、リアーナなりの優しさが含まれている。

 ライラも同じ気持ちだった。


「ところでよ、その緑髪の嬢ちゃんはお前の言う戦力として信じていいのか? さっきの話だと不意打ちとはいえやられた訳だろう。」


 キョウがリアーナへと疑問を呈する。

 ライラとは今日が初対面なうえ、知っている情報といえばラズベントにやられたこと。

 ある意味至極真っ当な疑問だった。


「勝てる勝てないは別としても、そんな不意打ちでもなければライラがそう簡単にやられる訳がない。それこそその時その場にはアイク達もいたわけだからな。それに、ライラは私がその実力を見込んで前任の副団長として任命した。これでは答えにならないか?」

「前任の……ああ、じゃあこの嬢ちゃんが。」


 キョウは何かを思い出したようで、怪訝だった表情が消え、ライラの方を見ている。

 『この』と言われても、自分が人に知れ渡るような何かをした覚えもなく、ライラは少し戸惑う。


「私が何か……?」

「当時、3年前ぐらいだったか。まだガキの魔術師が魔術師団の副団長になったってのは噂になってたからな。まあこいつがそこまで言うのなら実力に問題はないんだろ。それなら尚更だな……リアーナ。」


 キョウが鋭くリアーナの方へと視線を向け、続いた言葉は意外なものだった。


「今回の作戦、お前は抜けろ。」


 キョウの口から出た意外な言葉に、リアーナはその意味を理解するまでに少し時間がかかってしまった。初めは面食らったように目を丸くしていたが、次第に真剣な表情へと変わってゆく。


「……何故だ?」

「簡単なことだ、さっきから言っているリスクを下げるためだ。お前は立場上、帝国の奴らに面が割れている可能性がある。万が一見つかった時にそれはまずいだろ?」


 そこまで言って、キョウは親指でライラを指差し、話を続ける。


「それで言やぁこっちの嬢ちゃんも同じなんだろうが、俺達同じ国の人間ですら顔を見ても分からなかったぐらいだ。よその国の人間なら尚更分からねえだろ。」


 キョウの理屈はもっともだ。魔術師団団長ともなれば他の国の者でも名前を知っていてもおかしくなく、顔や容姿も知られている可能性がある。

 そしてそれは、今回の作戦との相性が致命的に悪い。

 リアーナもそれが分かってか、何も言い返せず苦い表情を見せる。


 ただでさえ少人数で動かないといけない中、リアーナという絶大な戦力がいなくなるというのはかなりの痛手だが、それでもやるしかない。


「異論はねえな?」

「……仕方あるまい。」


 自分も助けに行きたくともそれが叶わない悔しさを押し殺すように目を閉じ、上を見上げる。

 しかし握られたその拳は、震えが止まらないほどに強く力が込められている。

 

「ウチのもんをそこまで想ってくれてること、礼を言う。ありがとな。」


 キョウが今までにない柔らかな口調で礼を言った。それに対し、リアーナが「ふっ」と笑った。


「あのような優秀な人材、ギルドで置いておくにはもったいないと思ってな。こちらへ来るよう口説こうと思っていたのだ。」

「ああ?それはこっちも同じだよ。それに、行きたきゃとっくに行ってるだろうよ。」


 言葉だけ見れば喧嘩のように聞こえるやりとりだが、二人は笑顔だった。お互いが相手のおもいやりが分かるからこそだ。


「じゃあ決まりだな。帝国へは俺とこの嬢ちゃんの二人で行く。」

「さっきから嬢ちゃん嬢ちゃんって、私にはライラ・ブルーガーデンって名前があるの。これから背中を預ける相手の名前くらいは覚えてよね。」


 ライラのその強気な態度にキョウは笑みを見せる。


「そういうの、嫌いじゃねえぜ。」

「出発は明朝、それまでにこちらでできる限りの根回しはしておく。二人とも、頼んだ。」


 リアーナの号令にライラは深く頷き、キョウは拳を合わせる。

 ―――ここに、リゼ・ミストレイル救出への臨時パーティが結成された。

 

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