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Refrain - 再起は精霊とともに -  作者: 青黄緑
『大精霊の谷』編
26/43

25. 『大精霊の谷』へ


『大精霊の谷』に行こうと決めた理由は、セレナとの会話まで少し時を遡る。


ーーーーー


パーティから一夜明け、帰る支度をしていたところへセレナがやってきた。


「もう、お帰りになられるのですね。」

「はい。もともと式典への出席のために来たのと、今回の件の報告の為にもなるべく早く戻らないといけませんので。」


今はもう魔術師団に所属していないとはいえ、国賓として招かれた立場で報告もしない、聴取も受けませんというわけにはいかない。

ただ、あの事務的なやりとりは何回やっても苦手意識は抜けない。

ライラは今から憂鬱な気持ちになっていた。


「そうですか。仕方ありませんね。」

セレナの表情はどこか寂しそうに見えた。


たった数日の滞在ではあったが、セレナとは時間以上に密度の濃い関係を築いたと思っている。

彼女の元を去ることにライラも寂しさを覚えていた。


「また、会いにきますね。」

「ええ、もちろん。お待ちしています。

その時には、きっと美しい街並みをお見せできると思います。」


笑顔でそう答えるセレナを見て、早くも次の再会を待ち遠しく思っている自分がいることに、少し照れ臭くなった。


「はい、楽しみにしています。」

言葉でその気持ちに蓋をし、悟られないようにすることが精一杯だった。


「話は変わるのですが、ライラ様はいつ精霊たちと契約を交わしたのですか?」

「一番初めは子供の頃ですね。」

そう言って、紫の魔石が埋め込まれたピアスを外して見せる。


「ここにはセラがいるんです。私が初めて契約した精霊。魔術を学び始めたのもその頃ですね。

そのあとにレアとルナと契約をしました。」


ライラはリルオール王国の北端の村に生まれ、そして、戦災孤児となった。


当時小競り合いの絶えなかった隣国の侵攻の脅威の直撃を受けたのがライラの住む村だった。


騎士団、魔術師団の必死の防衛によりそれ以上の侵攻は食い止めたが、戦場となった村は壊滅状態だった。


セラと出会い、リアーナと孤児院長と出会ったのもその頃だった。


(辛い記憶でしかないけど、でも、かけがえのない出会いもあった。……今思い出しても複雑だな。)


「顔色が優れないようですが、どうかされましたか?」

心配そうにセレナがライラの顔を覗き込む。

無意識にそんな表情をしてしまっていたようだ。


「いえ、大丈夫です。」

「それなら良いのですが。

ライラ様は、『大精霊の谷』に行かれたことはありますか?

あの地には全ての精霊の祖である大精霊様がいらっしゃるとされています。

この精霊樹も、もとはそこにあったものだと言い伝えられています。」


『大精霊の谷』。

精霊と馴染みのあるライラもその存在は知っているが、訪れたことはなかった。


「いえ、ありません。」

「一度行かれてみてはどうですか?何か得られるものがあるかもしれません。」

「そうですね……。」


ジルフリードとの戦いの中で、ライラはセレナの『祈り』によって精霊樹の力の一端に触れた。

それはとても不思議な感覚で、精霊たちの存在がより大きく感じられた。

ライラ自身、精霊たちとの繋がりを改めて考える良い機会なのかもしれない、そう思った。


「一度、行ってみようと思います。」

「きっとそれが良いです。ライラ様なら大精霊様とも心を通わせることが出来るはずです。」


そこまで話し終えると、衛兵が出発の準備ができたと呼びにきた。


「ありがとうございます。では、また。」

「ええ、またいつでもいらしてください。」


二人は再会を約束し、ライラはその絆をセレナに預けてエルフェリオン王国を発った。


ーーーーー


「連れて行くって行っても、帰ってくるのに数日はかかると思うよ?」

「大丈夫です!きちんと家族にも了承を得ます!」


魔術指導を頼まれた時にも思ったが、リゼは意外と頑固なところがある。

今もその時と同じ雰囲気を感じる。


「アイクたちとのパーティはどうするの?後衛のリゼが抜けると依頼も受けにくくなるんじゃないの?」

「ならアイクとレントにも来てもらうようお願いしてみます!」


(こうなったら何が何でも引かないんだろうなぁ。でも、アイクたちに来るメリットはないし、二人が断ればリゼも諦めるかな。)


「……わかったよ。じゃあ、どうするか決まったらまた知らせてくれる?」

「わかりました!じゃあまた来ますね!」


そう言うと、リゼは跳ねるように走り去って行った。

そして、ライラは自分の見立てが相当に甘いものだったとすぐに気付くことになる。


「じゃあライラ、よろしくお願いするよ。」


翌日、そうして意気揚々したアイクがレント、リゼを引き連れてがライラのもとへとやって来た。


「……ほんとに行くの?」

まさか本当に来るとは思わず、ノリノリなアイクを見て困惑する。


「うん。丁度その方面の魔獣の討伐依頼が出ていたからね。僕たちとしても異論はないよ。」


「そうですね。それに、臨時パーティとしてライラさんに入ってもらって、パーティ戦の指導も受けれるのなら尚更願ってもないことですので。」


そう言ったのはレントだ。

迷宮の一件以来、ライラへの強気な態度は見る影もなく、むしろ好意的な対応になっている。


(ちゃっかりしてるなぁ。まあでも、約束は約束だもんね。)


リゼを見ると、誰よりも眩しい笑顔をライラに向けている。

これを見て断れるほど、ライラは薄情にはなれなかった。


「仕方ない、わかったよ。でも、数日かけての遠征になるから、出発は三日後。それまでにみんなもしっかり準備を済ませてね。」


「わかりました!」

リゼが元気よく反応し、アイクとレントはそれを微笑ましそうに見ている。


(ま、リゼの指導の一環にもなるし、みんなが了承しているのならいいか。)


まだまだ胸を張って言うには自信と度胸が足りてはいないが、『師匠』として『弟子』たちを見るライラの目は、温かく優しいものだった。


こうして四人は、『大精霊の谷』を目指すこととなった。


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