第75話 『大切な人』
例の雑誌が発売されて3日が経った。
当初こそ蓮也のファンを警戒していたのだが、意外や意外、雑誌の話題よりも素顔でミニライブを行った方が騒がれており、私の学生生活は連日知らない人から声を掛けられる日々が続いている。
曰く『デビューはいつするの?』だとか、『もうレコード会社からのスカウトが来てるんでしょ?』とか、中には『今からサイン貰ってもいいかな』なんて、男性生徒達に囲まれるような事もあった。
これはもう、来月に発売される10枚目のシングルが出た日には、学校中大騒ぎじゃすまないんじゃないだろうか。
「沙耶、もう帰るの?」
「うん、ちょっと今忙しくてね」
授業が終わり、クラスメイト達と軽い雑談を楽しむ。
「なになに、沙耶ようやく新曲を出すの?」
「一昨日SASHYAの公式サイトに告知されてたじゃない、見てないの?」
「バカ、学校でその呼び方をしちゃダメでしょ」
「いや、新曲がどうのと言ってる時点で既にダメなんじゃ」
私を気遣いながらクラスメイト達が楽しそうに談笑する。
流石にここまで来たら私も隠すつもりが無く、今じゃすっかり覆面アーティストとして人気者。それでもクラスの中だけに収まっているのは、ひとえに皆による団結力の賜物だろう。
「新曲のこともあるけど、syu♡syuとGirlish曲も頼まれちゃってね」
「マジで!? みちる喜んでるでしょうね」
「私それよりもSNSで流れてるあの新曲の方が聴きたいなぁ」
来月の発売のCDは先日告知されたが、カップリング曲のことまで載っていないからね。
入学当初はみちると鈴華しかいなかった友人も、今じゃクラス全員が友人のようなもの。
私がいるこのデジタルミュージック科は、学年に1クラスしか存在しておらず、当然他の学科のようなクラス替えは行われない。
「みちるは仕事、鈴華も最近じゃバラエティに引っ張りだこだし、私も早くデビューしたいなぁ」
「由佳、あなた志望はゲーム音楽だって言ってなかった?」
「そう言えばそうだった」
はははは
こういう意味のない会話というのも実に楽しい。
現在みちるはsyu♡syuの全国ツアーの真っ最中。授業には顔を出すようにはしているみたいだけれど、移動日やリハーサルにはどうしても学校を休まなければならず、今日も明日から始まる名古屋公演の為に欠席している。
鈴華の方はとある番組がきっかけで、最近じゃバラエティ番組に呼ばれることが多く、中年層からの人気が再浮上したのだとか。
ただその切っ掛けとなった番組で、『あの可愛かった《《元》》小学生アイドルのいま!』、なんてテロップを出されたのは、本人にとっては皮肉としか言いようがない。
「それじゃまた明日」
「バイバイ沙耶」
「またねー」
クラスメイトに挨拶をし、帰宅するために校門へと向かう。
今日はこのまま自宅へと帰る予定だが、例のストーカー対策のために、校門前にはKne musiのスタッフさんが待機されている。
私としてはなんとも申し訳ない気分なのだが、これも所属会社が決めた決定事項なため、ありがたくご厚意を頂いている。
そんな時だった。
校舎から校門へと向かう途中、突然数人の女子生徒達が私の前に現れたかと思うと、まるで逃走を防ぐかのように前後左右を囲まれてしまう。
一瞬また例のミニライブの影響か? とも考えるも、次の瞬間その考えを打ち消される。
なぜなら目の前の女性の右手には、例の雑誌が握りしめられていたからだ。
「私、前にも忠告したわよね」
やや語尾を強めながら、私に詰め寄る一人の女性。芸放の制服を着ていることから、間違いなくこの学校の生徒だろう。
そして私はこの女性の顔に見覚えがあった。
「蓮也さんは私達の学年…、いえ、この学校を代表するようなアーティスト。あなたもファンの一人なら節度ある行動を取りなさいと」
「えぇ、聞きましたけど」
「だったらなんで! なんでまた蓮也さんと一緒に居てるのよ!! それも隠れるようにして公園にまで呼び出すなんて!」
いや、公園を指定したのは私だけど、呼び出したのは蓮也なんだけど…
思わずのど元まで出かけた言葉を、必死の思いで思いとどめる。
「蓮也さんは今一番大切な時だと言うのに、こんな写真まで撮られて…、あなたこの責任どう取るつもりよ!」
彼女の右手に握り締められた一冊の雑誌。不注意だったとはいえ、確かにあの写真は蓮也にとってマイナスのイメージ。Ainselのファンにとっては腹立たしい行為だろう。
だけど、私はもう全てのことから逃げないと心に誓ったんだ。
「写真を撮られてしまった事については申し訳ございません。ですが私個人としては、これからも蓮也との関係は続けていくつもりです」
「あ、あなたねぇ!!」
彼女達にとっては許せる行為ではないのだろう。私も立場が違えばあちら側に立っていたかもしれないが、人の恋愛事情を他人にとやかく言われる筋合いはない。
私は一つ深呼吸をして、胸を張って宣言する。
「私は蓮也が好きです。Ainselのボーカルだからではなく、彼が一人の男性だから好きなんです。蓮也のファンからすれば『何を言ってるのよ』と、お叱りを受けるでしょうけど、それでも好きなものは好きなんです」
このとき私は初めて『好き』という言葉を口にした。あれほど心の中で葛藤していたと言うのに、これほど簡単に口に出来た事に正直自分でも驚いている。
「いい加減な事を言わないでよ! あなたは好きかもしれないけど、その感情を蓮也さんに押しつけるのは違うでしょ!」
確かにその通りだ。私は蓮也の事が好きだが、私はまだ蓮也の口からその答えを聞いていない。
「知ってるわよ、あなた今SNSで騒がれてるんでしょ? どうせどこのレコード会社からも誘われないから、こんな事までして人気を取りたいんでしょ」
「あなたもアーティストを目指しているなら、こんな姑息な真似をしないで、実力でデビューをもぎ取りなさいよ」
彼女の言葉をきっかけに、私を囲む生徒達から似た様な罵声を浴びせられる。
やはり私個人の言葉としては彼女達には届かないか。
ここで私がSASHYAであると自白しても、恐らく今の彼女達には信じてもらえないだろう。
蓮也に連絡をして、こちらに来て貰えば解決には至るだろうが、こんな事で彼の手を煩わせるのは本意ではない。
すると今私に出来る事は、精一杯自分の言葉で、彼女達を納得させる方法しかない。
「確かに皆さんが思われるような事をしているのかもしれません。ですがアーティストである私と、蓮也を好きである私は別問題です。今回の一件、確かに私にも非があったと自覚しています。その上でAinselのメンバーには謝罪をし、Kne musicの関係者の方々にも、状況の説明をさせて頂きました。ファンである皆様にとって、この程度で許せるとは思いませんが、私は自分の意思を変えるつもりはありません。もし私の感情が変わるとすれば、それは私が彼に振られたときです」
言いたい事は全て言った。
こんな言葉で彼女達が納得するとは思えないが、全てを吐き出した事で私の心は達成感で満ちあふれている。
「あ、あなたねぇ…。良くもぬけぬけと言えたものね、あなた程度の人間がAinselのメンバーと知り合いなわけないでしょ! この嘘つき女!」
「「「嘘つき女!!」」」
「「「卑怯者! 嘘つき女!!」」」
ざわざわざわ……。
やはり無理か…。大して期待はしていなかったが、今の彼女達にはどんな言葉も通じない。
半ば諦めかけていたとき、目の前の彼女達が明らかに動揺し始める。
何事? と一瞬疑問に思うも、次の瞬間私の隣に立つように一人の男性が現れる。
「はぁ、はぁ。その…、沙耶のクラスメイトが教えてくれて戻って来たんだが、これはいったい何の騒ぎだ?」
「なっ、なんで蓮也さんがここに!? あなた達、蓮也さんは先に帰ったって言ってたわよね!」
突然の本人登場に慌てふためく女子生徒達。
どうやら今の発言から、彼女達は事前に蓮也が帰った事を確認した上で、私に詰め寄って来たのだろう。
そりゃ、来るはずのない人物が突然息を切らせて現れたら、私でもビックリするわ。
「ち、違うんです。これはその…」
「私達、彼女に注意してただけで…」
「そう、雑誌に記事が載ってたから心配して…」
「それで大勢の生徒が一人の女性を囲んでいたと?」
「それはその…」
彼女達が口にした内容自体に間違いはない。ただ私一人を大勢の生徒が囲んだ状況を作っておいて、今更その言い訳は通じないだろう。
実際こちらの様子を伺っていた生徒達から、私を庇う様な発言すら聞こえてくる。
「雑誌の件を言っているのなら俺の不注意だ。沙耶はそれに巻き込まれただけで、責められる理由はない」
「で、でも蓮也さんとその子では、立場も環境も違います。ですから私達はファンとしてどうかと注意を…」
「そうです、私達は蓮也さんのファンとして注意していただけで、彼女を傷つけるようなことは何も」
「はぁ…、つまりは俺の責任か。すまない沙耶」
状況を把握し、私に向かって頭を下げる蓮也。
それを目にした女子生徒達は、慌てるように動揺し始める。
「蓮也が謝る必要はないわよ。あの写真を撮られたのは私にも責任はあるんだし、巻き込まれたと言うのなら、それは蓮也も同じでしょ?」
元はと言えば一樹のストーカーから始まった被害の一つ。呼び出したのは蓮也だけど、場所を指定したのは私だし、お互い人気のアーティストだと言うことを、もっと自覚するべきだったのだ。
「その女の言うとおりです!」
「蓮也さんが謝る必要はありません!」
「原因はその女! 全部その女のせいです」
彼女達はいったい蓮也に対して何を求めているのだろう。
人気のアーティストだからといって、蓮也は神様でも物語に出てくる勇者様でもない。蓮也の行動が全て正しく、邪魔をするものは全て悪だと断罪するのは、明らかに間違っているだろう。
流石の蓮也もこの状況に重いため息をひとつ。そして何かを決意したかのようにある言葉を口にする。
「俺にとって沙耶は特別な存在だ。初めて出会った時は衝撃を受け、再会したときには運命だとすら感じた」
蓮也は一度私の方へと振り向くと、そのまま彼女達に向かって言葉を繋げる。
「俺は沙耶が好きだ、自分だけのものにしたいとすら思っている。まぁ、本音を言えば沙耶の隣に並べるほど、大物アーティストになってから告白しようと思ってたんだがな」
蓮也は再び私に向き合うと本音をさらけ出し、若干テレながら思いの丈を伝えてくれる。
大物アーティストか、蓮也なら必ずなれるよ。
私はそれまで蓮也が自慢できるアーティストで居続けるから。
「ありがとう蓮也、私も蓮也の事が好き。だからこれは私に与えられた試練なの」
私は蓮也の前に出て、彼女達と再び向かい合う。
そんな時だった。
「沙耶ちゃん、何しているの?」
「佐伯さん? どうしてここに」
「校門前で待ってたのに、中々来ないから心配になって見に来たのよ」
そう言えば一樹のストーカーの件で、Kne musicのスタッフさんが送り迎えをしてくださってるんだった。
ただ先方もお仕事中なので、既に待って下さっている時もあれば、校門前で待つときもあるので、その日のスタッフさんの都合でその状況はまちまち。
一応そのスタッフさんの中に佐伯さんも含まれるのだが、何分忙しい方なので、打ち合わせがない日はほぼほぼ別の方がやってこられる。
「その様子だと、沙耶ちゃんLINEを見てないわね。急遽打ち合わせが入ったって、連絡を入れておいたのだけれど」
「えっ!? うわぁ、ごめんなさい、LINE見てませんでした」
「まぁいいわ、送ったの10分ほど前だったし」
おい
10分ほど前と言えば私が彼女達に囲まれているとき、流石にその状況でのんきにスマホの画面は見ていられない。
「そんな事より急ぐわよ」
「急ぐって、何の打ち合わせです?」
「Last letterを使いたいってスポンサーが出てきてね、今から先方に挨拶に行くのよ」
「今からですか!? 私制服のままなんですけど」
「いいからいいから、さぁ早く行くわよ」
なんというか、いつもながら強引な性格。
先方に挨拶と言うなら、一度着替えに戻りたいのだが、まぁ制服も正装の一つなのだから問題はないだろう。
ただ一つ、問題があるとすれば、今のこの状況を何とかしなければならないのだが、それは意外な方から解決が持ちかけられる。
「突然現れて一体なんの話をしているのよ、おばさん」
「あら、これはどういう状況?」
「今気づいたんですか?」
現在私は蓮也と共に修羅場の真っ最中。
それなのに突然部外者が割り込み、全然関係のない話を始められれば、相手からは無視されたと勘違いされてしまい、ただ感情を逆撫でされるだけだろう。
案の定リーダーっぽい女性が、佐伯さんに向かっておばさん呼ばわりしている。
「……まぁ、そう言う状況でして」
佐伯さんに分かるよう、今の状況を簡潔に伝える。
「相変わらずトラブルに愛されているわね」
「いや、そんな人をトラブルメーカーみたいに」
「自覚はあるでしょ?」
「うぐっ」
身に覚えがありすぎて、反論のしようが思い浮かばない。
私としては速やかにこの場を解決させたいのだが、それには彼女達に対し、私の気持ちを誠心誠意伝えることしかない。
幸い蓮也の登場で、ようやく私の話を聞いてくれるようになったので、このまま二人で押し切ればとは思っていたが、ここに来て別の問題が浮上。
よほど自分達が無視されたことが気に入らなかったのか、リーダー格の女子生徒が、佐伯さんを睨むように今も威嚇してくる始末。
「状況が理解出来たのなら、部外者はどこかへ行きなさいよおばさん!」
「いや、佐伯さんはこれでもまだ30代前半…」
「沙耶ちゃん、年齢の事はいいから」
私の小さな呟きを笑顔の一言で黙らせ、何故か対立するかのように女子生徒の前に立つ佐伯さん。
その笑わぬ笑顔から、おばさん呼ばわりされた事を怒っている様子がうかがえる。
佐伯さん、先月30歳になって肌つやの事を気にしてたからなぁ。
私から見れば全然20代と言っても通じる見た目だし、仕事が出来るキャリアウーマンみたいで、カッコイイとも思えるんだけど。
流石に見知らぬ高校生に、おばさん呼ばわりは頭に来るわよね。
これから起こる修羅場に身構えていると、何故か考える様子を見せる佐伯さん。
そして何かを思い出したかのように、目の前の女子生徒に一言。
「あなた確か、先月うちの会社のオーディションに来てた子よね?」
「えっ!?」
「オーディション?」
突然出てきたオーディションという言葉に、思わず声に出して反応してしまう。
「うちは3ヶ月に一度、新人発掘の名目でオーディションをしているのよ」
聞けばKne musicでは、事前に送られて来たデモテープの選考を経て、定期的に採用オーディションが行われているとのこと。
昔はデモテープ1本で社内審査に掛けられていたらしいが、最近は誰でも簡単にデジタル編集が出来るようになり、時間を掛けて自分の声色を変えたり、演奏の未熟さを誤魔化したりする人もいるそうで、実際に目の前でオーディションを行う慣習が生まれたのだとか。
「知らなかった」
「でしょうね。沙耶ちゃんも結城君もスカウト組だから、オーディションに関わる事はないからね」
所属した当時、お偉いさんの前で生歌を披露したことはあったのだが、その時は既に契約書にサインした後だったし、競い合う相手などいなかったので、オーディションが行われているなんて話は、全く聞かされてもいなかった。
すると彼女はそのオーディションとやらに、参加していたということなのだろう。
「な、なんでオーディションの事を…」
「私に見覚えはない? これでもあの場に参加していたんだけど。ちなみに担当のアーティストはSASHYAよ」
「SASHYAって…、まさかあの時の審査員!?」
審査員って、まぁ私を発掘した実績は高く評価されているようだし、過去にはKANAMIさんの才能を誰よりも早く見つけたという経歴もある。
そう考えると、佐伯さんに認められるのはある意味一流アーティストへの道が、開かれると言ってもいいだろう。
「思い出したようね」
「どどど、どうしてKne musicの審査員がこんなところに!?」
「決まってるでしょ、私がSASHYAのマネージャーだからよ」
佐伯さんの正体を知り、明らかに動揺する姿を見せる女子生徒。
彼女もアーティストを目指しているなら、佐伯さんを敵に回したくもないだろうし、何より希望の光が一つ消えてしまう恐怖もあるはず。
そんな人を前に、彼女はおばさん呼ばわりしてしまったのだ。
私じゃ怖くて平謝りしている事だろう。
「あなたもアーティストを目指しているなら、先輩に向けていい態度じゃないわね」
「す、すみません! そんなつもりじゃなかったんです」
「違うでしょ、謝る相手はこっち」
「わ、わたし!?」
慌てて謝罪をする女子生徒に向かい、何故か私は自分の前へと押し出される。
これ絶対彼女に対して怒っているやつだ。
「な、なんで彼女に…」
「わたし言ったわよね、担当しているのはSASHYAだって。ならここへ来た理由は一つしかないでしょ」
いやいや、その中には聖羅達の存在もいますって。
冷や汗が流れるこの状況、いったいどう伝えていいのだろうか。
私を取り囲む女子生徒達は、まるでロボットの様に顔だけ私に向けると、全員が時間が停止したかのように、目と口を見開いたまま完全に固まってしまう。
その直後、外側からこちらの様子を伺っていた無関係の生徒達から、一斉に悲鳴ともおぼしき驚きの言葉が響き渡る。
『『『『えぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!????』』』』
その後のことはもはや語るまい。
駆け寄る生徒達に私は囲まれ、私を非難していた女子生徒達は完全に枠の外へと放り出される。
デビューからずっと謎とされてきたSASHYAの正体が、このとき初めて暴露されたのだ、そりゃ彼女彼らでなくとも騒ぎたくはなるというもの。
中には私と蓮也の恋路を祝う者や、出会いからの経緯を聞いてくる人もいたが、その大半はSASHYAの素顔を一目見ようとする者だった。
結局面白半分の佐伯さんが、「はいはい、仕事に遅れるから道を開けてねぇ」の笑顔での一言が出るまで、私は大勢の生徒達から質問とサイン攻めにされる事態に。
「明日から大変そうね」
「まったく誰のせいですか!」
車の中、完全に人ごとのように語る佐伯さんに、心の底から文句の言葉を投げつける。
でもこれで良かったんだと思う。
いつまでも秘密にしておけるものでもないし、これからは蓮也の隣に自信をもって立ちたいので、私の正体を伝えるにはいい機会だったのかもしれない。
どうせ来月に発売されるCDで、SASHYAの素顔が世間に知れ渡るのだから。
そろそろあの件にも決着を付けるべきよね。
今回の事で、雑誌の一件は解決したと言っても差し支えはない。
さきほど囲んできた生徒達の中には、今の様子を撮影していた人が何人かいたので、明日にはSNSなどで騒がれている事だろう。
するとあと残されたのはその元凶となった彼の存在。今まではなるべく関わらないようにしていたが、今後同じような事が起こらないとは限らない。
これは私自身が解決しなければいけないのだ。
「佐伯さん、ゴールデンウィークが終わった後でいいので、休みを1日貰えませんか?」
「…………分かったわ、だけど絶対に無理はしちゃダメよ」
「はい」
一樹、決着をつけましょう。
そう心の中でつぶやくのだった。




