ホーリーの災難 4
ホーク様御一行がのんびりと進んでいらっしゃいました。
さて事件のようなことも起こらず、唯々のんびりしていらっしゃいます。
延々と続くヘーゼルナッツの畑の中の一本道はどこまでも続く真っ直ぐな道。
遠くに見えるのは・・・
やっぱりヘーゼルナッツの畑だった。
ヘーゼルナッツは低灌木だから森のように見える訳ではない。緩やかな高低差のある大地に淡い緑の絨毯が敷いてあるように見える。その絨毯の中のまっすぐな一本道を、2頭立ての馬車がカラコロカラコロとのんびり進んでいた。
「と! ゆう訳でぇ、あたしたちは250年前の十秘宝を探し求めて冒険してるって訳なの。」
(何がとゆう訳でなんだ・・・?=byホーク様)
馬車の中ではサラが嵐のように喋りまくっていた。カイドーは最初にあった頃の鋭い眼差しは影を潜め、好々爺のようにサラの話をニコニコと黙って聞いている。グラは時々合いの手を入れたりするが、基本的には聞き手側のようだ。サラのお相手は、もっぱらマッシである。
「で、あの筋肉野郎はその二つを持ってて、この馬車を買ってくれた大富豪ってヤツが・・・えーと。」
「えーとじゃなくてエストロっていうんだよね。なんかさ、高利貸しらしいんだけど、ちょっと感じ悪いんだよねー。」
サラのマシンガントークから逃げるように、ホークは荷物に紛れて狸寝入りを決め込み、ユンは人間の姿のままで本当に寝ている。どうもネコ科の習性に近いようだ。もしかするとシトリーは昼にはあまり活動しない夜行性なのかのしれないが・・・。
馬車を操っているのはシュセである。カイドーたちの馬車も概ねシュセが操っていたらしい。カイドーたちの馬車は1頭立ての小さめの馬車で、今は豪華な2頭立ての中型の馬車に乗っているの
だが、シュセは苦にする様子もなく難なくこの馬車を操っていた。しかし、どこか憂鬱そうな翳を落としている。そして時々ちらりと眠っているユンに憎悪の眼差しを送っている。
「そんでー、コールレアンになんかもう一つあるらしいんだよねえ。なんて言ったっけ?」
「愚弄王リーの魔法書でしょ。あるわよ。」
「えーっ、本当!」
グラはちょっと首を傾げた。少しばかり瞳に翳が走る。
「グラは最強修道士だったからのう。」
「えーっ! ホントですか! 私を弟子にしてください!」
「よしてください。それは昔の事です。今はただの賞金稼ぎなんですから。」
「いいじゃねえか。俺は誇っていいと思うぜ。」
「それより。お嬢ちゃんは愚弄王リーの魔法書の事が聞きたいんじゃないのかね?」
「そうです。そうです。その愚弄王リーの魔法書って、何なんですか?」
3人は一瞬、ぽかんとした表情を見せた。
「ただの古い魔導書よ。修道士図書館の一番奥にある強大な魔法金庫の中に置いてあって、修道士なら誰でも見ることは出来るわ。でも読むことは禁じられている。強力な結界が張ってあるから、ちょっとやそっとじゃ手に取ることも出来ないけどね。」
「でも、それがどうして十秘宝の一つなんだろう?」
「古代語で書かれてて、並みの魔法使いじゃ操るのも難しい強力な呪文が書かれてるって話だわ。」
「でも、それっておかしくないですか? それなら修道士に閲覧して強力な魔法が使えるようになった方がいいじゃないですか?」
グラはちょっとだけ目を丸くしたのだけれど、はにかむように微笑み。
「色々あるからね、大人の世界は。」
グラはそれっきり口を噤んだ。
権力を持つにはいくつかの条件がある。例えば金だ。あるいは武力だし、既得権益なんかも権力を持つには必要な条件となる。強い者が必ずしも強い権力を持つとは限らないが、権力者が恐れる条件の一つにはなるだろう。ホークが前世の素性を隠すことも用心の上である。もっとも、エグランでの活躍で、ある程度有名になったホークがラグナロクの転生者だという事は(噂であっても)信じる者は多いだろう。権力者にとっては、英雄の転生者が現れるという事は、手放しには喜べない事実だ。真相は知りたいが、その事実は表向き噂としてうやむやにされるのがオチだ。
話は変わるが、愚弄王リーの魔法書・・そのただの魔導書が魔法王とまで言われたラグナロクが本当に必要な秘宝なのだろうか? 250年前のカオスとの戦いで、その魔導書を使って強力な魔法使いを量産したと言う伝説はない。それにエストロのご先祖様のシュマロは、『あれはラグナロクに一番懐いていた』と言っていたそうだ。もしかしたら書物の形をした兵器かもしれない。ほかにどういう能力があるものなのかは修道士たちも教えられてはいなかった。
ちなみに通常の武具や魔導書には仕掛けがあっても、魔法の力で動く能力は無く、そういう能力を持つ道具を人々は魔道具と呼ぶ。
魔道具は大体ABC3段階に類別される。基準ははっきりとはしていないが、その能力の稀有さ、防御力・攻撃力が通常の道具とは桁違いである事。そして再現できない魔道具は文句なくAランクに属する。
例えばホークが着ているローブは自己修復機能付きの防護力アップの魔道具であり、類別的にはBランクぐらいだろう。エグラン王家の秘蔵品であったものだ。十秘宝はやはりAランクに属する訳だが、Aランクの魔道具の中には特別な物も存在する。魔道具それ自体が意思を持ち、使われる相手を選ぶのだ。もちろん魔道具が意思を持っていたからと言って、決して使えないという訳でもないが、魔道具本来の実力を出し切ることは出来ないとされている。
「でもどうして馬車なんかでチンタラ移動するんですか? なんか魔法でビューンって移動するとかできないんですか?」
「お嬢ちゃんは瞬間移動魔法陣の事を言っとるのかね?」
「あー、それそれ。それです。どうしてそれで行かないんですか?」
「瞬間移動魔法陣はいろいろと制約があってのお。」
「制約ですか?」
「そうそう、瞬間移動魔法陣は短い呪文で行ったり来たり出来るが、行きたい場所同士を繋ぐだけだ。例えばコールレアンに瞬間移動魔法陣をセットしてカブールに行こうとすれば、カブールに行ってコールレアンと同じ瞬間移動魔法陣をセットしなきゃなんない。」
「それって、けっこう面倒かも。」
「だろ。それに作った瞬間移動魔法陣をそのまま残しておくことは危険でもある。それを使った場合、待ち伏せされたり、トラップを仕掛けられたら一巻の終わりだ。だから瞬間移動魔法陣を使う時は、片方に仲間を置くか、目立たない場所に作るわけだ。」
「それって、私でもできるんですか?」
「出来るよ。瞬間移動魔法陣は呪印法じゃ。駆け出しの魔法使いでも瞬間移動魔法陣は、その基本図面さえ描ければ簡単にできる。」
「でも憑代が必要だからちょっと痛いけどね。」
「そうじゃな。大抵は自分の血を使う。」
(なんか痛そうじゃん・・・。)
「自由に自分の行きたい場所に行ける魔法があればいいのになあ・・。」
サラの目は遠くを見ていた。
「まあ。古代の魔法には、それに近い魔法があったと聞くが、使える者は見たことが無いのお。それにリスクもあるらしい。」
「ホントですか、じゃあ、その魔法がそのなんとか魔導書に載ってるかもしれないじゃないですか! 絶対、手に入れましょうよ!!」
「いいか、お嬢ちゃん。よく考えろよ。俺がもしその魔法を使えたなら、お嬢ちゃんのお風呂場に覗きに行くぞ。それでもいいのか?」
「ぎゃー!マジ引くー!ド助平オヤジ!!」
「バカヤロー、も・・物の例えだろうが!」
「うるせえぞ、小娘!」
シュセが不機嫌そうに吐いた言葉に、馬車の空気は気まずい雰囲気に一変した。
「シュセ、嬢ちゃんに当たるなよ。」
「フン。別に当たっちゃいねえさ。」
「お嬢ちゃん。こいつはユンが怖いんだ。だから機嫌が悪いのさ。勘弁してやってくれや。」
「フン。言ってろ。」
「どうしてユンさんが怖いんですか? 結構いい人ですよユンさん。」
「やめなよ、嬢ちゃん。シュセは臆病者なんだ。魔物はドワーフすら怖いのさ。」
マッシがケタケタと笑うと、シュセが馬の手綱を軽く引き、馬車は緩やかに止まった。
「降りろ。マッシ。」
シュセはゆっくりと馬車から降りると、馬車の後ろに回った。
「なんだよ。やる気か? 臆病者野郎。」
「や、やめてください!」
マッシは素早く馬車から飛び降りると、サラの制止も聞かずにシュセに殴り掛かった。
シュセも負けてはいない。マッシの拳をさらりとかわすと、目まぐるしい素早さでマッシの背後に回り、マッシの背中に蹴りを入れる。
「ケッ! てめえの軽い蹴りなんざ、効きやしねえぜ!」
「フン! 力自慢だけのデブに俺が捕まえられるかよ!」
「やめてください! 二人とも!」
サラは真っ青になって制止しようとするが、カイドーとグラは軽くため息をついただけで止める様子はない。
「坊主。御者をやってくれんか。この先に水場がある。そこで一休みとしよう。馬も休ませんといかんしな。」
「わかった。」
ホークは嬉しそうに御者台へ行くと、馬に軽く鞭をいれる。馬車はゆるゆると動き出した。
(ホークはどことなく嬉しそうである。)
「カイドーさん、いいんですか、あの二人を止めなくて!」
「いいのよ。いつもの事だから。私が居るから平気で怪我してくるし。それに馬車に乗ってるだけだと退屈なんでしょ、きっと。」
「なーに、命にかかわるような怪我はせんよ。心配ない。心配ない。」
馬車は二人を残してポックリポックリと歩みを進めた。
しかし、水場は結構遠かった・・・。
ガツン!!!
「痛ってええ!」
「テメエ! 俺たちを置いて行くたあ、どういう了見だァ!!!」
シュセとマッシがホークの頭にダブル拳骨をお見舞いした。
「あー・・ちと遠かったかのぉ。こんなに遠かったとは・・・。」
カイドーは知らんぷりである。
ユンは聞き耳を立てながら、ほくそ笑んでいる。
シュセとマッシは顔じゅう血だらけでハアハアゼーゼーと息を荒くしている。
「勝手にケンカを始めるあんたたちが悪いんじゃないの!」
グラの一喝に二人はしゅんとなった。魔物相手に大立ち回りを演ずる二人が、グラにはぐうの音も出ないらしい。
「すごーい。グラさん。私の師匠になってください。そして、私は世界最強の魔法使いになる!」
「ごめーんねぇ。わたしはね、教えるのが苦手なのよ。それに私は補助魔法と回復が専門だから、きっとがっかりしちゃうんじゃないかな?」
「お願いします! あのチビスケ(ホーク)を見返してやりたいんです!!」
(本人のいる前で言うか、普通。=byホーク)
「困ったわねえ。それに世界最強とは言えないけど、近いのがそこにいるじゃない。」
グラはカイドーを指さした。
「え、本当ですか? カイドーさんがそんなにすごい人だとは知りませんでした。」
「グラ~。そんな事より、回復呪文掛けてくれよー!」
「うるさい。勝手に怪我したんだから、しばらくはそのままでいなさい。」
「グラ~。」
「グラ~。」
「・・んー、もぉ! 男のクセに情けない声出すんじゃないわよ、まったく!」
口では悪態をつきながらも、グラは二人に回復呪文をかける。
怪我や病気を治す事を手当てと言うが、回復呪文も同じように患部に手を当てるやり方が普通だ。仕組みは判然としないが、回復魔法をかける術者のエネルギーを手から対象者に注ぎ込むようなイメージなのだろう。もっとも、攻撃魔法にしても手先や杖の先から放出する攻撃が多いことも確かだ。人間にとって手はそのような役割を持つと誰もが無意識に自覚しているのだろう。
「少し早いが、今日はここで休むとしよう。」
カイドーの言葉にシュセとマッシは「賛成ー。」と答えた。
「じゃ、私は食べ物を探してくるわね。」
「待ちなよ。俺も行く。」
シュセは弓を携えると、グラと一緒に森の中に入っていった。
「じゃあ、俺たちは薪でも集めて来るか。」
「変なことしないでくださいね~。」
「アホっ、おれは子供には興味ないの。」
「誰がガキですか!」
サラとマッシは、じゃれあいながら森へと向かった。
ホークは手慣れたように馬車から馬を外し、水場へと向かった。
カイドーは木陰に腰を下ろし、ブツブツと何か呪文を唱えながら周りの地面を杖でなぞっていく。聞けば「オマジナイ程度」と答えるカイドーなのだが、実は宿営地を守るための結界を張っているのである。
「嬢ちゃん。嬢ちゃんは魔法使いになりたいのか?」
「なりたいんじゃなくて、こう見えても立派な魔法使いです。」
「ふ~ん。で、魔物と戦ったことはあるのか?」
「ありますよ。」(ほんのちょっとだけだけど・・・。)
「で、斃したのか?」
マッシの目は次第に鋭くなっていく。
「それは・・・た、斃しましたよ(ホークが)」
マッシが拾った薪をポキンと折った。
「まだ半渇きか・・。」
「嘘です。ごめんなさい。まだ斃したことはありません。」
「だろうな。あんたを見りゃ分かるさ。ところで、嬢ちゃん。」
マッシがサラの顔をマジマジと観た・・が目は笑っていない。
「お前はドレイクたちにくっついて何をする気だ?」
「もちろん、魔物を倒して世界を平和にするのよ。」
サラはウケるかと思ったが、見事に滑ったようだ。マッシはサラをまっすぐに見てさらに厳しい眼差しを送っていた。
「魔法使いになりてえンなら、コールレアンの修道士にでもなるんだな。一つお前に言っておく。俺たちはこれからドレイクたちとつるもうと思ってる。他のみんなも同意見だ。」
「じゃあ、コールレアン以降も一緒に旅が出来るって訳ですね!」
「浮かれるなよ、嬢ちゃん。」
「え?」
「お前さんはいらねえ。足手まといだからな。」
「そんな、私だって魔物くらい斃せます! それに誰だって最初から達人なわけないじゃないですか!」
「お前、ホークやドレイクが何者か知ってて言ってるのか?」
知っているつもりだ・・・とは答えにくかった。ドレイクはエグランの武人であり、ホークはとんでもない魔法使いだ。ユンは魔物だが、そこいらにいる普通の魔物とは桁が違う。
では何者かと問われると、あの3人が何者かはサラには分からなかった。しかし、3人とも只者ではないと言う事だけはサラにも分かっていた。
「俺たちはコールレアンでもちっとは知られた賞金稼ぎだ。それがジモン島では情けない話だが死にかけて、あいつらに命を助けられた。俺たちが必死で戦って斃せなかったあの魔物どもを、あいつらは苦も無く斃したんだ。それがどういう意味か分かるか?」
「ふ・・普通のレベルじゃない。」
「その通りだ。おそらく背負っている物が違う。一緒に行動しても、俺たちでさえ足手纏いになりかねない。遊び半分でホークについて行こうとするならコールレアンで立ち去れ。」
マッシの表情は今までに見たことが無い程、冷徹である。
「わ・・私は、私でもきっと・・きっと戦える!」
(そうだ。遊び半分でついてきたわけじゃない。)
「嬢ちゃん。現実は甘くないんだ。もう一度聞くが、お前は魔物を殺せるのか?」
「殺せるわ!」
サラの瞳はギラギラと燃えていた。
「じゃあ人間はどうなんだ?」
「どうして人間なの? 人は関係・・」
「魔物を率いている人間もいるし、魔物に与する人間もいる。そいつらも殺せるのか? それにだ。場合によっては俺たちも殺さなきゃならないかもしれない。」
(そうだ、確かにエリア火山に行く途中で襲われた時は、人間の魔法使いがいた。)
「・・・・・・。」
「・・分かったか。お前はジモン島に帰れ。」
マッシは呆然と佇むサラを置いて、拾った枯れ枝を持って帰ろうとした。
「殺る。殺ってみせるわ。それが必要なら!」
サラの瞳には決意が宿っていた。
「ほう・・。」
マッシはベルトに挟んである小さなナイフを取り出すと、サラに向かって投げた。ナイフは放物線を描いてサラの足元に転がった。
「俺を刺してみろよ。俺を刺せたら、このまま黙認してやる。ダメならコールレアンでお別れだ。修道士になるもよし、ジモン島に帰るもよし。お前の好きに生きればいい。」
サラは足元に転がっているナイフをじっと見つめていた。質素な木彫りの柄と鞘の小さなナイフである。護身用と言うよりは、果物ナイフのような用途に使うナイフの様である。サラはそのナイフを拾うと鞘を抜いた。
銀色の鋼に映ったサラの顔は青ざめている。ナイフを持つ手がブルブルと震えていた。
(ダメ・・負けられない。このままじゃ自分に負けてしまう!)
サラは短い柄を両手で掴むとまっすぐにマッシの方に向けた。体が震えてナイフの刃先が大きく揺れている。
マッシは担いだ枯れ枝を肩から落とすと両手を広げてサラに向き直った。
「ほらよ、嬢ちゃん。お前の覚悟が本物ならやって見せな。」
声にならない声を上げた。本当は何か大声で叫んだようだ。走っているのに、時間が重い。何も聞こえない。何も見えない。暗くないのに何も。体にまとわりつく何かが粘りつくようだ。
きっとマッシは避けるハズだ。誰だって痛いのは嫌だ。誰だって死ぬのは嫌だ。
だから絶対避ける。避けるハズだ!
ザク・・・。
あっけない程乾いた音が、サラの鼓膜を刺激した時、両手に暖かい液体の感触を感じ、それがマッシの血だと分かった瞬間。サラは涙と共に咆哮した。訳も分からず、マッシに背中を向けて走り出していた。
「・・・まさか本当に刺すとはな。」
少しばかり顔が歪んだが、マッシはチョットだけ笑っているように見えた。
「やっぱりお前はアホウだな。」
「ホントに・・・バカね。」
少し離れた木陰から、シュセとグラが現れた。
「なあに。大した傷じゃない。急所も外してあるしな。」
それでもマッシの腹部には、サラが差したナイフが深々と突き立っていた。抜かなかったので、出血はさほどではない。
「痛いでしょう。」
「あ。当たり前だろーが! あっつ!」
「しばらくそうしてればいいんじゃねえか。」
シュセは山鳥2羽をぶら下げて、面白そうにマッシの傷口を見ている。
「そうね。そのままがいいかもしれない。」
グラはマッシの落とした薪を拾い集めつつ、静かに笑っている。
「おっぉ~い。グラぁー・それはねえだろ。」
「女の子を苛めたバツよ。あら? ・・・でもこれ結構重傷かもね。」
「え? 何だって? マジですか? そう言われると・・・・痛てえ。なんか急に痛くなってきた。グ・・グラぁ~。」
グラはじっと痛がるマッシを見つめている。
「自分より若い子が死ぬのを見るのが嫌なんだろ。俺は嬢ちゃんの所に行く。」
シュセはぶっきら棒にそう言うと、サラが去った方向へと歩き出した。
グラの瞳に少しだけ暗い翳が差した。
「ほら。もっとよく傷を見せて。」
グラは呪文を唱えつつ、マッシの腹に刺った刃を指で挟むと、ゆっくりと抜く。一瞬血がドロッと出たが、それ以上は出てこない。
(縫った方がよさそうね。)
グラは手早く忍ばせていた針と糸を取り出すと、目にもとまらぬ素早さでマッシの傷口を縫い上げた。そして患部に手を当て、回復呪文をさらに唱えだした。
「うぇぇぇ!!! うぇ・・・うっ、うぇぇぇ!!!」
小川の辺でサラは吐いた。
初めて人間に刃を突き立てたのだ。落ち着こうと思っても、次から次へと胃の奥から何かが、こみあげてくる。けれど吐く物は何もない。内容物は胃液だけだ。胃が捻じれてすべての物を絞り出そうとしている。胃液で食道と喉が焼けるように熱かった。
「ほらよ。」
いつのまにかサラの傍らにいたシュセが、サラに布切れを差し出した。
「最初はな。大抵のヤツがそんなもんさ。けどよ、心配するこたあねえ。マッシは無事だ。グラに回復呪文をかけてもらってるからな。傷跡も残らねえさ。」
シュセは優しく微笑んでいた。
「ああ・・ありがとう。ございます。」
サラはようやく落ち着いたのか、シュセが差し出した布切れで口元を拭く。
「まあ、勘弁してやってくれ。あいつはあいつなりにお前さんの事を心配してるんだ。」
「・・・わかってます。いえ・・分かりました。」
「昔の事だけどな。あいつには陽気な妹のような子分がいた。」
「・・・・・・。」
「とあるダンジョンで、そいつはマッシの目の前で・・・・ま、許してやってくれ。」
その思い出はシュセにとっても話したくない過去らしい。サラも何も言わなかった。
「随分、遅かったのぉ。」
小枝に刺した人数分の魚が大きな葉の上に並べられているのを、お預けを喰らった犬のようにじっと見つめながら待っていた。
「その魚は?」
「ホークが馬を洗ったついでに捕ってきてくれた。」
にんまりと笑ってホークがぐいと親指を立てた。
「そうか、こいつは余計だったかな?」
シュセは2羽の山鳥を魚の脇に並べた。
「そんなことはないわい。今日はご馳走だな。」
「薪はこれで足りるかしら。」
ようやくやってきたマッシとグラが薪を置く。マッシはどこかバツが悪そうにして、サラから目をそらしている。
「カイドーさん、お願いがあります。私に魔法を教えてください。」
カイドーは少しばかり沈思し、こう言った。
「よかろう。しかし、魔法使いとしてモノになるかならぬかはお嬢ちゃん次第だ。」
「え? あ・・ありがとうございます。」
サラはキョトンとしていた。てっきり拒絶されるかと思っていたからだ。
「まずは、お嬢ちゃんが使える魔法を教えてくれ。確か師匠が居たはず。」
そう、ジモン島にいた頃、敬愛して信じていた魔法の先生がジルコーニだったのだ。
「フィラ・・だけです。」
「ふん。なるほど、ほぼド素人という訳か。」
カイドーは石で組んだ竈に薪を揃えると「火を点けてくれ。」とサラに言った。サラは火打石を探そうとしたが、カイドーに止められた。
「お前さんはフィラを使えるんじゃろ?」
サラは気恥ずかしそうに、頭を掻いた後、両手を無造作に置かれた薪に向けて精神を集中した。ジモン島での戦い以来、数か月ぶりの魔法である。
「フィラ!!」
・・・・・・・・・・・汗。
「え?」
「プッ!」
「笑うな、シュセ!」
サラの両手の先に蝋燭のような灯が宿ると、それは亀が歩むかのようなゆっくりしたスピードで薪に向かって飛び、薪に当たって微かに焦がしたものの・・・しゅっ・・と煙を残して消えた。カイドーはそれを見ても笑ったり、なじったりする様子はなく、いつもと変わらぬ様子でもう一度やるように促した。
「今度は全詠唱でな。」
「はい。」
皆も驚いたが、一番驚いたのはサラ自身である。シュラミスに姉を攫われた時は、野球ボール大の火の玉が矢のように飛んで行っていたのだ。修行をサボっていたせいなのか、しばらくぶりに魔法を発動したせいなのかは解らないが、その威力は格段に落ちていた。
サラは額にうっすらと汗を搔いていた。
フィラの呪文を間違えぬよう精神を集中して、丁寧に唱える。
今度はピンポン玉くらいの大きさになったが、やはり薪に火を点けるまでには至らなかった。
「こんなはずじゃ。こんなはずじゃないんです。そりゃ、先生の様にはいかなかったけれど、もっと威力のある火球が出来ていたんです。」
「フィラ。」
カイドーが名称詠唱で薪に火を点けた。無論カイドーの火球弾呪文はサラの呪文の比ではない。ソフトボール大の火の玉が薪の束を一瞬で燃え上がらせた。
「まず、飯にしようかの。」
カイドーは何事もなかったかのようにほほ笑んでいた。
「お嬢ちゃんがどこまで習ったか知らんが、魔法と言うのは目に見えぬほど小さい魔法の素を魔力によって操作する技術の事を云う。その魔法の素を便宜上わしらは”魔素”と呼んでおるが、自然を作る源のような物だ。そして魔力とは生命の源、エネルギーなのだ。」
食事が終わって皆が休んだ後、サラと張り番を申し出たカイドーは、不意に話し始めた。
「魔素というのは大別すると4種類あると言われておる。<火><土><風><水>がその4種類な訳だが、何の決まり事もなく自由に扱えるわけではない。4つの種類の魔素を扱う精霊と契約を結んで初めて自由に使うことが出来る。火炎弾呪文は呪文の名前であるわけだが、同時に名称詠唱呪文の発動スペルでもある。ところが名前を言っただけで魔法が発動するわけではない。そこに自分の魔力を乗せねば契約が成立しないからだ。わかるかね?」
「え・・えと、分かります。」
そういえばサラもジルコーニから最初に聞いたような気がする・・・。
「火炎弾呪文はいっぱしの魔法使いなら名称詠唱呪文でならわしがさっきやって見せた程度の大きさになる。お嬢ちゃんが昔そのくらいの物が出来ていたと言うなら、今も出来るハズだ。死にかけて魔力が無くなりかけているとか、そういう状態でなければだ。それが出来なくなっていると言うのは、魔力の放出をためらっているからに他ならない。」
(い・・いや・けっこう精一杯やった結果なんですが・・・。)
「これからやることを見ていなさい。」
カイドーは火炎弾呪文を唱える。手の平の上にソフトボール大の火の玉が出現した。そして省略詠唱から全詠唱と変化を見せるとその火の玉はバスケットボール大から直径1m程の巨大な火の玉へと変貌した。そしてその火の玉はかき消すように消える。カイドーが呪文を解除したのである。
「これでもわしは火系の呪文が得意でな。今のは全詠唱呪文でわしが出来る大きさの火の玉だ。それをホーク殿は名称詠唱呪文でこの5倍もの大きさの火の玉を作り出した。それがどういう意味か分かるかね?」
サラの背中に一瞬冷たい物が走った。
― シュルツの街 ―
「惨いな・・・。」
白い僧服に軽装の白銀の鎧を付けた若い男が呟いた。
年は16~7歳くらいに見える。 端正な顔立ちに切れ長の目。一見すると女性の様にも見える白銀のストレートヘアーはセミロングでおかっぱ頭のようにきれいに整えられていた。
男の名はゼン。ゼン・クロード・ジハァーゥ。騎竜兵団の分団長である。そしてその傍らには当然のように轡をつけたドラゴンが佇んでいた。
シュルツの街でいったい何があったのか? 町は廃墟と化していた。街の建物の四分の一ほどが火に包まれたらしく彼方此方が焼け落ちている。それよりも惨いのは生き物の死骸である。人々の死骸はまだ片付けられてはいなかったのだが、全てが焼死したわけではなさそうだ。大した火傷でもないのに、目や耳から血を流したような跡がある。中には眼球が破裂したものもいるし、口から大量の吐血が見られる者もいる。いったいロアの軍団はシュルツの街で何をしたのか? 彼らには皆目見当もつかなかった。余程強力な爆裂魔法でも、このような死骸は出来ないハズだ。生き残った兵士たちに当時の状況を尋ねると「歌声のような物が聞こえてきたと思ったら、急激に眠くなって・・・」寝てしまいました。と言う。
おそらくはセイレーンの仕業だろう。だがセイレーンにはこのような爆裂魔法を使うような能力は備わっていない筈だ。爆裂魔法を使ったとしたら、それは別の魔物だろう。ただ火を放っただけの状態ではない。それに、もっと気になるのは、火の手に包まれていなかった場所でも死人が出ていることだ。たくさんの魔物に襲われたのなら、凄惨な死骸が累々と残っただろうに、ほとんどが毒を飲まされたような死に方である。特に抵抗力の弱い老人や子供がその餌食になり、生き残った者も体調の不良を訴えていた。それなのに彼らには傷一つ無い。もしかしたら呪いのような物で殺されたのかもしれないが、一切が不明と言う状態である。城内と城外から魔物の襲撃を受けたランスロット城の方がまだ説明がつく。
町の外れに棲むものは、この災厄から逃れることが出来たものが多くいた。その者たちは、眠らされずに済んだ者もいたが、実際に事が起こったのは深夜である。何か騒動が起こった訳でもない。何人かがランスロット城の異常に気付き、眼を覚ましていたらしいが、シュルツの街では何も起こらなかったと口をそろえている。ただ、突然、キノコのような雲の炎が町の中心部辺りで上がり、強い衝撃波を受けたことだけは覚えていた。その後は炎が火災を起こし、消す者もいなかったために燃え広がった・・という次第なのだそうだ。
「このあたりか・・・。」
街の中心地あたりに来ると、ゼンは足を止めた。敵が爆裂呪文を使ったと思われる中心部らしき場所。云わば爆心地である。
「分団長!」
軽やかな声の主がゼンを呼んだ。先に街に降り立ち、調査していた第4分団のキース隊長である。キースは巻き毛の頭を掻きながら、さも困ったような顔つきをしていた。
ちなみに、騎竜兵団は4つの分団に分かれている。第1と第4の分団はフリーシアの北方を守護し、第2・第3の分団は南方方面の守備として配置されている。分団には2個の部隊があり、10頭のドラゴンを使役している。ランスロット城落城の知らせを受けたルニエラは、第1分団を首都バリントンの守護警備に、第4分団をランスロット城の調査へと向かわせたのである。そしてキースは第4分団の第1部隊の隊長でシュルツの街の調査をしていたのである。ちなみに第2部隊はランスロット城の調査に当たっていた。
「キース。生存者はいたかい?」
「いやあ、酷いモンですよ。全滅っすね。それにしてもいったい何が起こったんすかね。」
キースは団子ッ鼻を膨らませた。
巻き毛の短髪、浅黒い肌に太い眉。そしてたれ目の彼はお世辞にも眉目秀麗とは言えないが、愛嬌のある印象を見る者にあたえる。小柄でどことなく憎めない彼は、部隊の皆にも女性にも好かれていた。
「分からないよ。」
「オレらには理解できそうもない事が起こったみたいッスね。」
ゼンは左手の親指を口に持ってくると。軽く爪を噛んだ。
「・・・仕方ない。探ってみるか・・。」
「分団長、そいつは止めといた方がいいんじゃないっすか。何もそこまでしなくとも・・。」
「分かりませんでした。と、報告する訳にもいかないでしょう。」
「まあ、そりゃ、そうなんすけどね。アレはちょっと・・。」
今までもキースはゼンがあの能力を使った後に苦しんでいる姿を何度か目にしている。だから気遣っているのだ。
ゼンは石畳に微かに刻まれた瞬間移動魔法陣を見つけた。概ね魔法陣は破壊されていて使い物ならない。いずれにしても出口のゲートは既に消されているだろう。
「さて、どうするか・・・。」
ゼンは魔法陣から10m程離れた場所に倒壊している焼け焦げた大木に目を付けた。どのみち出来事を見ていた人間は眠らされていただろう。樹木に視覚は無いが、強烈な出来事はオーラの形状がハッキリしている場合が多い。
ゼンは云わば<サイコメトラー>である。彼の能力は物体の残留思念のような記憶を読み取る能力である。自分の読みたい場所の記憶を検索して読み取りたい場所の記憶を読むために、体の負荷も大きく、強烈な残像は時として精神を蝕むこともある。
「マジ、やめてくださいっす。」
「心配ないよ。人間の死骸を視るよりはずっと楽だから。」
ゼンは焼け焦げて倒れかかっている大木に手を当てて、眼を瞑った。
植物には視覚がない。それでも長年生きながらえた樹木のような生き物は、周りの風景を気配のようなイメージで形作る。ゼンが見ている物は風景ではない。風景画のような気配とでも言えばよいのか・・・説明しづらいがそう言う物を感覚として感じる。
なんだろう?
巨大な人間?
巨人のようにでっぷりと太った人間のような物が広場にやってくるのを感じる。
その巨人のような人間は、突然炎に包まれた。
やがて轟音のような衝撃と、膨大な熱に包まれる。
そして・・・それ以降の記憶は消えていた。樹木の死。物体の崩壊。記憶の損壊が起こっている。
(なんだ、今のは?)
目を開けたゼンの顔は蒼白になり、汗が顔じゅうを覆っていた。
全身が炎に包まれたように熱い。
そして痛かった。
サーモバリック爆弾(燃料気化爆弾)と言う物をご存じだろうか?
爆弾の内部に液状、または固形の特殊な燃料を詰め、第1の爆薬で高圧、高温で燃料を瞬時に気化させ、気化燃料の雲を作る。それを第2の爆薬で発火させると高温・高圧の爆発が起こる。貧者の核とも呼ばれる非常に威力の高い爆弾で、その特徴として火力もさることながら、衝撃波で人体を破壊する。有効範囲はおよそ半径300mと言われているが、その中にいた生き物は急激な気圧の変化で内臓が破裂したり、急速な酸欠によって窒息死する。場合によっては有効範囲外でも鼓膜が破れたりすることもあるのだそうだ。
そういった知識の無い彼らにとっては、その出来事がいったい何を指示しているのかすら理解できなかっただろう。
・・・どこだ?・・このあたりのハズ・・。
「という訳だ。分かったかな?」
「いえ。いや、はい、先生。」
のんびりと進む馬車の中で、カイドーはずっとサラを相手に講義をしていた。あの夜からずっとこの調子である。
「魔物と言うのは元々は生き物だった物が多い。魔素による突然変異種と言う者もおる。それゆえか本来は何も食べなくても魔素の供給だけで生きながらえることも可能だと言われておる。ちなみに魔素は自然そのものを形作っておる物質だが、人間は特に魔素の含有量が多く、魔物の格好なエサとなりうる訳だ。魔物が人間を襲う理由が魔素にあるとする説で、73年前聖魔導士と言われた聖ジョアン・ロックウェル・バルセローナが提唱した魔素構築論によればダ・・・・・。」
シュセとマッシとグラは荷物に蹲って眠ったふりをしている。カイドーがこうなった以上、下手に関わって巻き添えを食うのは絶対に避けたかったからである。当然、御者をやっているのはホーク。ユンは幌の上で、これまた本当に眠っている。
「あの、先生。質問があります。」
「サラ君、どうぞ。」
「あの講義は結構ですが、修行はどのようにしてやれば・・・。」
このあたりのはずだ・・・どこにいる・・
「いいかね、サラ君。物事を極めようと思えば、人には二通りの方法がある。実戦から理論を学ぶ方法と、理論を極めてから実践する方法だ。どちらも間違いではない。ただし、人には個性と言う物があって、君の場合は理論から入った方が上達が早いとわしは考えておる。」
(私は逆なような気がする・・・・。=Byサラ)
「あの、先生。その理論は分かりましたけど、どのくらいやらなきゃなんないんですか?」
「退屈かね?」
「いえいえ、そのような。滅相もない。」
・・・・・いた!・・・見つけた・・・
「この講義はコールレアンの魔法修道士の魔法基礎教養教書と一緒だ。まだまだ始まったばかりじゃヨ。」
「先生。ちなみにですが、その魔法基礎教養教書というのは何ページくらいあるんですか?」
「348ページじゃな。まだ4ページ目に入ったばっかりだ。なーにこの本一冊くらいあっという間だ。サラくん。」
(魔法を使える頃にはおばあちゃんになっている気がする・・・・。=Byサラ)
サラの薄ら笑いが凍り付いていた。
その時。
馬が何かに驚いて、急に立ち止まった。
そして、馬車の行く手に一頭のドラゴンが降り立ち、その背中からよろめきながら憔悴しきったエストロが降り立った。
「エストロさん!!」
( グッドジョブです。 =Byサラ)
***次回予告****
BGM ビバルディ ≪四季 冬≫
廃墟のような建物の中にカメラが入ってゆく。
地下らしき扉の上に<OSHIOKIBEYA>と血みどろの表記がある。
一転して薄暗い部屋の中に白い服を着た少年が立っている。少年の顔にはモザイクがされていて、腕組みをして怒っているようである。
その少年の前に正座したさえない男がいる。男の顔にもモザイクが・・・。
少年 {おい! 分かってんだろうな。ちょっと呼ばれただけでうれしくなっちまうほど出番が少なくなっちまったのはどー言う事なんだ!」
男 「いや。。。そのぅ。。。どういうことかと言われましても・・・・。」
少年 「次は出番があるんだろうな!」
男 「いや。まあ・・次はエストロの話にもどら・・・・」
少年の目が赤く炎を発しているように見える。
男 「いや。あります。あります! かなり調子よさげです!!!」
少年 「自分の罪を・・悔い改めな!」
少年はそう言うと、ブツブツと呪文を唱え始めた。
男 「ひぃぃいいい! お、お助けぇーーーー!!」
男は逃げたが、正座で痺れた足がもつれている。
少年の両手に発生した真っ赤な炎の球が見る間に巨大化していった。
暗 転
爆発音・・そして悲鳴・・・・・・。
この前ネットの記事で、昔の漫画には作者が登場する漫画が結構あったのに今は無くなっちまったね。なんていう話が載っておりました。確かに昔の漫画には作者が時折顔を出すと言うような事はしばしばあったように思います。なにせ神様の手塚治虫氏もけっこう出てましたね。でもほとんどはギャグマンガばかりで、シリアスな漫画では世界観が壊れるために作者が出ると言うのはほぼ皆無でした。ただやっぱり神様はシリアスなドラマの中でも顔を出したりするんですね。そこが神様の神様たる所以なのでしょうか?
さて、話はちょっと派生しちゃいますけど、アルフレッド・ヒッチコックをご存じでしょうか? ヨルシカじゃないですよ。れっきとした映画監督で、映画史上もっとも影響力のあった監督の一人として誰もが認める巨匠です。ヒッチコックは50本以上の長編映画を撮った訳ですが、<カメオ出演>といって、自分が映画のどこかに出演するんですな。絵画におけるサインのような物なのかもしれませんが、自分も遠く巨匠には及びもつきませんが、ちょっと顔を出してみました。
え? この物語はギャグだったのか? ですと? ・・・・・う~む。 完全に否定できない所がつらいところです。




