道永蓮の昼11
軽く挨拶をしてその場をあとにする。最後も原田さんは、手を振って送ってくれた。
「空也さん、本当にみんなと仲良いですね」
「そりゃ、まとめやってっからね。仲良くできるからこんな広いとこ回せるんだよ」
外見二、三十代くらいの若い人がこの場をまとめている。それができている理由がなんとなくわかった気がした。
「あ! ヤッホ! レンくん」
元気な声と共に、少し小柄な男の子が走ってきた。優くんだ。
「やっほ、優くん」
相変わらずの目が惹かれる笑顔だ。揺らぎのない綺麗な太陽を見ているような気分。思わずこちらの顔も緩んでしまう。
初めて会ったとき、僕は彼の顔を歪めてしまった。今になってもなぜあんな顔になったのかはわからないが、一応今は仲良くできている。
優くんは手にりんご飴を持っている。幼い雰囲気にとても似合っている。一応同い年らしいが、全くそう思えない。
「空也さん、レンくんを迎えにいってたんだね」
「うん! 優より遅れて来たからね〜」
どうやらさっきまで一緒に行動していたようだ。僕のために待たせてしまったと思うと申し訳なさが出てくる。お好み焼きを二個頼まなかったのも、このためだったのかな。
「優くんはさっきまで何してたの?」
かなり楽しんでいたように見える。りんご飴だけのお陰ではなさそうだ。
「あっちのほうにあった金魚掬いやってた! 沢山取れたよ! 金魚は貰えなかったけど」
食べ物系ばかりかと思っていたけれど、しっかり娯楽系もあったのか。意外だが、まあ祭りなら当たり前なのか。
三人で歩きながら色々な屋台を見ていく。優くんは時間が経つにつれてわかりやすく不貞腐れていった。
「屋台以外はないのー?」
気だるい声で空也さんに質問をしている。それに対し、空也さんも少し申し訳なさそうにしていた。
「まあ、あることはあるけど、そんなに色々はないかな?」
「そうなんだ〜」
少し落胆したような顔をした。僕より先にこの世界にいたって言っていたし毎日通っているみたいだから、ある程度の屋台は確認しきってしまったのかな。
「これだけだと、退屈しそう」
ぼそっと吐かれたその言葉に、空也さんは「うっ」とダメージを受けていた。少し大袈裟なくらい顔が引きずっている。
「まあ、屋台は毎日内容変わるし、この場所の一番のよさは人と関われるところにあるからな! 祭りにしてはけっこー規模がデカいほうだし」
少し言い訳っぽいことを空也さんは述べていた。まあでも確かに、人と関わることが優先で、屋台は二の次という感じがする。
「他のことしたいなら、最高の場所紹介してやるよ」




