道永蓮の昼12
空也さんは自信満々に笑い、僕たちにその顔を見せつける。そして「ついて来てっ」と言ってどんどん先に走っていった。僕と優くんは、そのあとを少し駆け足で追いかける。
まるでスキップでもしているかの如く、楽しそうに進んでいく。空也さんがそれほどまでに気分を上げるなんて。
「どんなところなんだろうね」
優くんに話しかける。早歩きしながらのため、声を出しただけで息切れしそうになる。
「きっと凄く楽しいところなんだよ! あんなにウキウキしてるんだもん」
「そうだよね」
軽く酸素不足になったのか、返事が適当になった。自分の体力の無さをここで思い知るとは思わなかった。
それにしても空也さん歩くの速いな。明らかに疲れていないし。速く歩こうとしているというよりは、ただ歩いていたら僕たちよりも速くなっているといった感じだ。こっちは息を切らしながら動かないと追い付けないというのに。
「もうすぐだよ!」
空也さんの声に反応して顔を上げる。神社だ。いつもこの世界に来たとき、最初に目に入る大きな建物。
「この神社がどうしたんです?」
「ここね、この世界で一番凄いところなの!」
返事をしながら先程以上にスピードを上げて進んでいってしまう。僕は疲労で一旦立ち止まり、それに続いて優くんも止まった。
「何やってんだ! 早くお〜い〜で」
僕たちの停止に気付いたのか、振り返りって声をかけてくる。そこに気付くなら疲れていることにも気付いてほしい。こんな穏やかなこの世界でここまで苦しいのは初めてだ。
「めっちゃ無邪気だね! あの人」
「ほんとだね。優くん大丈夫? 疲れてない?」
優くんは少し目を大きくする。驚いているのかな。なんでこんなタイミングで?
「……うん! 疲れた!」
全く疲れているようには聞こえない。凄いハキハキした口調だ。
「レンくん動けそう?」
「うん、なんとか。あとこんくらいの距離だしね」
僕らは体制を取り直し、もう一度前を向く。空也さんはかなり先に行っていた。お互いに頷き合い、走って空也さんを追いかける。息が切れかかり、前を向く気力も無くなった辺りでやっと追い着くことができた。
「空也さん、速すぎ……」
「そりゃあね。しっかり鍛えてたから! 体力勝負の仕事してたし」
大工でもしていたのだろうか。大工が足速いイメージはあまりないけれど。
目の前には大きな鳥居が威厳を持ちながら建っている。
「じゃあ行くか!」
そう言って空也さんは軽い足で入っていった。僕と優くんもゆっくりと入っていく。
鳥居を抜けた先に、神主さんのような人が立っていた。清潔感溢れる明るい袴を着ており、髪も綺麗な七三に整えられている。少し肥満気味でシワもあるが、目が輝いており、全身から暖かさが溢れている。「いい歳の取り方したな」という感じだ。
「本当に何回も来るね、君は」
神主さんは呆れたように言った。そこまで言われるほどとは。よほど空也さんはここが好きなのだろう。
「二人とも、大丈夫かい?」
僕たち二人のことを心配してくれた。見た目だけでなく、綺麗さが滲み出ている人のようだ。説得力の無い弱々しい声で、「はい」と返す。優くんは疲れていそうながらも、明るく返事をしていた。




